旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年2月7日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

島旅・五島 #2 日本最西端のワイナリーがある小さな王国

敷地全体にどこか海外の雰囲気が漂う「五島ワイナリー」。zoom
敷地全体にどこか海外の雰囲気が漂う「五島ワイナリー」。
長崎県・五島列島最大の島が、五島の政治・経済の中心である五島市の福江島。美しい海岸線とともに、島のシンボル的存在が標高315メートルの鬼岳(おにだけ)です。いかつい名前ですが、なだらかな流線形をした臼状の火山で、全山が緑の芝生に覆われた美しい山。そのふもとに、日本で最も西に位置するワイナリー、「五島ワイナリー」があります。

日本でも数少ない、離島のワイナリー

2014年創業の「五島ワイナリー」は、日本で数少ない離島のワイナリーのひとつ。ここでは五島で収穫されたブドウを中心に、長崎県内で採れたブドウも使って年間約2万本のワインを醸造しています。
ワイナリーがあるのは、広大なリゾート施設の敷地内。和洋の絶妙なミックス感も五島ならではかも?zoom
ワイナリーがあるのは、広大なリゾート施設の敷地内。和洋の絶妙なミックス感も五島ならではかも?
醸造責任者を務めるのが、ニュージーランド出身のアーロン・ヘイズさん。オーストラリアのアデレードでワインの研究に従事したのち来日したというアーロンさんに、醸造所内を案内していただきました。
ワイナリーで醸造責任者を務めるアーロンさん。「日本はブドウの種類が多いから、楽しいね」と語る。zoom
ワイナリーで醸造責任者を務めるアーロンさん。「日本はブドウの種類が多いから、楽しいね」と語る。
「五島は日照時間が長く、水はけのいい火山灰の土壌が特徴。潮風の影響もあり、ミネラル感のあるブドウが採れ、それがワインのテイストにもよく表れています」とアーロンさん。
現在、白・赤・スパークリングなど8種類を醸造するなか、そのミネラルを最も感じられるのが白ワイン。フレッシュな味わいは、新鮮な魚介やお出汁がきいた和食との相性がいいといいます。
白・赤・スパークリングなど、年間約2万本のワインを醸造。zoom
白・赤・スパークリングなど、年間約2万本のワインを醸造。
五島らしい1本を選ぶなら、五島産のブドウ100%と、島に自生する椿から採取された「五島つばき酵母」を使ったスパークリングワイン「キャンベル・アーリー」がおすすめ。2021年に開催された国内のワインコンペティションでゴールドメダルを獲得した実績を誇ります。ロゼよりわずかに濃いオレンジに近い色味が美しく、イチゴやチェリーのような果実味が感じられました。心地よい泡の飲み口も、女性にぴったりです。

甘く華やか香りが女性に人気という、スパークリングワインの「ナイアガラ」と、フレンチオークで熟成した赤ワインの「マスカット・ベリーA」も試飲させていただきました。私が気に入ったのは、後者の赤ワイン。ほど良いタンニンとシナモンにも似たスパイスの風味があり、肉料理にも合いそうです。
ワイナリーでは試飲もOK(有料)。一番左が、五島産ブドウと「五島つばき酵母」で造る「キャンベル・アーリー」。zoom
ワイナリーでは試飲もOK(有料)。一番左が、五島産ブドウと「五島つばき酵母」で造る「キャンベル・アーリー」。
コテージタイプのホテル、温泉&レストランもあるコンカナ王国

ワイナリーがある「五島コンカナ王国ワイナリー&リゾート」は、敷地内にホテルとレストラン、温泉施設もあるリゾート。コテージタイプのホテルに滞在し、朝夕敷地内を散歩していると一瞬、海外のリゾートを訪れた気分になりました。その名前の通り、ここはまさに小さな王国。
池のほとりに立つ、マーライオンはご愛敬。鬼岳のトレッキングコースや中腹にある「鬼岳天文台」までも歩いていける距離にあり、福江島の旅の拠点にぴったりのロケーションです。
敷地内にはさまざまな国をイメージしたオブジェが立つ。コテージタイプのホテル、日帰り利用できる温泉施設やレストランもある。zoom
敷地内にはさまざまな国をイメージしたオブジェが立つ。コテージタイプのホテル、日帰り利用できる温泉施設やレストランもある。
五島市がある福江島は、長崎空港、福岡空港からさらに飛行機を乗り継ぐ場所にありますが、時間にすれば東京からわずか3~4時間。その便利さと離島ならではの自然景観、独特のカルチャーにひかれ、年間200人近くの移住者があるのだそう。漁業や農業を希望する人だけでなく、最近では情報通信やPR系のスキルがある人、さらに外国人も増えていて、ワーケーションスポットとしても人気が高まっているといいます。昨年、島に越してきたばかりの女性は、「海岸でぼんやり海を眺めていたら、ここで暮らしたくなって移住を決めたの」と話してくれました。今回は2泊3日の短い滞在でしたが、なんとなくその理由がわかりました。私は…といえば、移住は難しいけれど、次回はもっとゆっくりと、時間を気にせず過ごす旅で訪れてみたいと思っています。

■五島ワイナリー
☏0959-74-5277
長崎県五島市上大津町2413 五島コンカナ王国内
https://www.goto-winery.net
※2022年2月現在、ワイナリーツアーは休止中

■五島コンカナ王国ワイナリー&リゾート
TEL 0959-72-1348
https://conkana.jp/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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