旅の扉
- 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
- 2022年2月6日更新
- よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子
島旅・五島 #1 海と教会の島で過ごす、癒しの時間
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- 福江島の絶景ビーチ・高浜海岸と、五島のキリシタンの歴史を伝える堂崎教会。
- 島旅好き!です。
この1~2年、私が注目しているのが、長崎県の五島列島。長崎の西、約100kmの海上に浮かぶ大小約150の島々には独特の自然景観と、キリシタンによりもたらされた歴史が紡ぐカルチャーが根付いています。十字架の形をした下五島には何度か訪れたことがあるのですが、今回旅したのは五島市の福江島。五島列島で唯一、航空機の定期便が就航する政治・経済・文化の中心です。空の玄関口「五島つばき空港」までは、長崎空港から約30分、福岡空港からは約40分でアクセスできます。
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- 福江島の「五島つばき空港」へは、プロペラ機で長崎空港から約30分。
- 海に囲まれた教会は、長崎のモン・サン=ミッシェル!?
この島の魅力は、日本有数の美しさを誇るビーチと、世界文化遺産にも登録されている教会群。福江島には13の教会がありますが、「ここは絶対、見ておくべし!」と五島の情報通の友人にすすめられたのが、聖堂内部にキリシタン資料館を併設する「堂崎教会(堂崎天主堂)」です。
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- 1908年に完成した天主堂は、五島初の洋風建造物。
- 1908(明治41)年に建てられたこの教会は、五島で初めての洋風建造物。1873(明治6)年にキリスト教禁教令の高札が撤去され、260年ぶりに日本でもキリスト教信仰が解禁された同じ年、フランス人宣教師のフレノー神父が来島し、この浜辺で五島で初めてのクリスマスミサが捧げられたといいます。そのとき、多くの信者が手漕ぎの小舟でやってきたのだとか。潮の満ち引きによって周囲の景観が変わる様子は、「長崎のモン・サン=ミッシェル」と呼びたくなります。
現在の建物は木造の天主堂から立て替えられたもの。建築にあたり、一部にイタリアから運ばれた資材が使われたそうです。ゴシック調の赤いレンガ造りの天主堂内には、赤い椿をモチーフにしたステンドグラスが施され、内部の資料館に展示されているのが、潜伏キリシタン時代や島の人々と西洋文化交流の歴史を物語る資料や写真類。それを見ると、長崎の西の果てに浮かぶこの島が、早くからヨーロッパの文化に目覚めていたことがよくわかります。
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- 庭の椿に囲まれてひっそりと立つマリア像の姿にも癒される。
- 海を見渡せる庭園にあるのが1566年、初めて五島にキリスト教が伝えられたときの様子を表した「アルメイダの宣教碑」、禁教の弾圧に堪え殉死した五島生まれの青年を讃える「聖ヨハネ五島殉教像」、再び信教自由の日が訪れ、260年ぶりに宣教師と対面する日の感激を形にした「復活の夜明け」の像など。また、庭の奥にヤブツバキに囲まれて立つ、白いマリア像の優しげなまなざしにも心ひかれます。
教会の周りで見つけたかわいいカフェ&自動販売機
堂崎教会へは、数十メートル手前にある駐車場から入り江沿いの道を歩いてアクセスするのですが、この通りがとても気持ちいいのです。道の右側には海、左側には可愛らしいカフェがポツン、ポツンと並び、海を眺めながらのんびりと散策していると、ずっとこのまま歩き続けていたくなります。
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- 堂崎教会の近くで見つけたカフェと、マドレーヌの自動販売機。カフェは開店時間前だったのが残念!
- 残念ながらカフェはいずれもオープン前だったのですが、近くに見つけたのが「堂崎マドレーヌ」の自動販売機。営業時間外でも買えるように設置されたものとのことで、さっそく購入し、教会からの帰りに防波堤に腰かけて食べてみました。五島の椿油と自然塩を加えているらしく、しっとり優しい食感と上品な甘さ。島ドライブの途中のおやつタイムにも、お土産にもぴったりです。
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- 堂崎教会が立つ小さな入り江。かつて信者たちは手漕ぎの舟で礼拝に訪れたのだそう。
- 小さな教会を囲む海を眺めながら過ごす穏やかな時間。訪れた朝は、ちょうど大潮の干潮時。教会の周りも砂浜が見えていたのに、20~30分もすると潮が満ちて、さっきまで歩いて渡れそうだった小島もみるみる海水に囲まれていきます。ずっと昔から繰り返されてきたであろう自然の営みを見ているうちに、先ほど資料館で目にしたキリシタンと殉教者たちの歴史が、時々蘇ってきます。江戸時代の潜伏キリシタンや、教会再建に力を尽くした宣教師たちも、同じ景色を見ていたのでしょうか。激動の時代を過ごした人たちの想いは想像することしかできませんが、こうして平和な時代に生きていることの幸せをかみしめたひとときでした。
■堂崎教会(堂崎天主堂 キリシタン資料館)
長崎県五島市奥浦町2019
TEL 0959-73-0705
9:00~17:00
※11/11~3/20は16:00閉館、夏休み期間中は18:00まで(ただし、8/13~15は17:00まで)
無休(12/30~1/3のみ閉館)
拝観料:大人300円・中高生150円・小学生以下100円