おためしサテライトオフィスとは
コロナ禍で、オフィスを取り巻く環境はどんどん変わりつつあります。都会を脱出する社会人が多くなるのも当然の成り行きです。仕事はリモートで行い、週末は豊かな自然を満喫するなどという人も増えていると思われます。
コロナ禍前からも、地方創生などと都心集中型から地域分散型へ人口の拡散が叫ばれていましたので、一気に動きは加速したと言えます。
自治体も様々な意向に寄り添おうと施策を出してきています。今回、お世話になったのは福岡県北九州市が行う「お試しサテライトオフィス誘致促進事業」です。
首都圏企業等を対象に、北九州へ本社の移転や支店の開設を促す目的で始められました。お試しにかかる費用をサポートしてくれる上に、移転後の業務がスムーズに進むように地元企業との交流の接点となってくれます。オフィス開設を考えつつ、現地で実際にリモートワーク、ワーケーションを試すことが可能です。
一人当たり羽田⇔北九州空港間の航空券を片道30,000円、往復60,000円まで負担してくれます。また、滞在30日を限度に宿泊費を一泊6,000円までに加え、ワークスペース利用料も一日1,500円まで支援してくれるという有難い制度であり、同一企業内3名まで参加できます。
実際に申し込みを行うとリモートで面談があり、所定の手続きを経て承認が下りる仕組みです。今回の訪問では、希望取材先を伝えると、アポイントの調整が進められました。
北九州に向かう
スターフライヤーのエアバスA320は、離陸後ほどなく富士山のほぼ真上を飛行しますので、残念ながら霊峰を見ることはできません。それに代わり、名古屋、大阪上空を通過することで、大都会のパノラマが視野に入ります。岡山上空では、瀬戸大橋も見え、この路線はかなり眺望のいいことがわかります。
リモートオフィスもある
仕事をする場所は、ホテル室内の時間が長くなります。それでも宿泊地を変える場合などに昼間に仕事できる場所があると便利ですよね。
北九州一の繁華街「小倉」駅前の「ATOMica北九州」は2021年2月に営業開始したばかりのワーキングスペース。オフィスを設けることもできる場所で、フリーで利用できるWi-Fi、電源、ドリンクが用意されています。
受付横のオープンスペースに加え、小倉駅を一望できる会議室など使用目的によって場所を選ぶことができます。個室の仕事ブースもあるので、オープンな場所での会話が気になる人はこちらも選択可能です。
ホテルで仕事
今回の滞在で、3つの宿泊先を体験しました。実際にオフィスを構えることを想定し、思い切って普段過ごす都会とは全く違う環境で仕事してみました。リゾート、温泉、都市型と区分できます。
門司港駅近く「プレミアホテル門司港」は関門海峡が見える部屋で、仕事ができました。最初は船の動きが気になりますが、そのうち気にならなくなってくるのは仕事がはかどっている証拠。対岸の下関市の様子も良く見えています。
仕事の合間には、電動アシストサイクルを借りて和布刈(めかり)近辺を散策してみました。九州と本州を結ぶ、関門橋の九州側であり、風光明媚なことから公園が設けられています。
多くのコンテナ船や自動車運搬船などが行きかいます。客船「にっぽん丸」が航行する様子も見ることができました。
もう一軒は、「かんぽの宿北九州」。門司港から小倉を超え、折尾で下車します。ホテルの送迎で20分北上して玄界灘、岩屋海岸を目指します。温泉に浸かりながら、海岸線を眺めつつ和室の座卓で仕事するのも変化があり、面白いものです。この場所は、遠見が浜や御嵜神社はあるものの、めぼしい観光要素が少ない場所。これがかえって集中して仕事できる環境となっているところが印象的でした。
観光で来る人には、温泉三昧と海の幸の食事の時間が待っています。
3軒目は小倉から徒歩圏の「ホテルクラウンパレス小倉」です。市内を流れる紫川の横に建ち、小倉城にもほど近い場所です。北九州市役所は中の橋を渡るとアクセスできる至便な場所。打合せで訪問するのも便利でした。
北九州の台所と言われる「旦過市場」がすぐ裏手にあり、社会見学もできました。
往来が戻るにはまだ先ですが、地元民に愛されている場所に触れることができました。
ここは、繁華街にも近く東京で仕事しているのとさほど変わることのない便利な環境があります。
体験して
地方創生は行政の目玉政策に挙がります。それゆえに、リモートワークのできる場所は全国多くの自治体で見掛けます。首都圏から移住するのに移住の気持ちの背中を押してくれるのは、仕事ができる施設や環境だけではない気がします。
筆者の体験した上での感想は、北九州市は進取の気性に富む行政を行っていると思います。それは、仕事を進めていく上での行政のサービスが、求めれば一歩踏み込んだところまで近づいて来てくれるからです。
サテライトオフィス事業の運営こそ市が委託した企業が行いますが、アポイント取得や同行なども含め北九州市産業経済局 企業立地支援課の職員が参画してくれます。全く初めて連絡を取る企業もあって、市のお陰で素早く的確な部署に繋いで貰うことができたという実感があります。
官民一体の事業推進の本気度を垣間見ることができました。
また、専門分野の航空行政で言えば、北九州空港は24時間運用を行い、過密化する福岡空港の利用者の受け皿になっているところが素晴らしい。
このフットワークの良さが、実際に進出した後の支援とともに受け入れられやすいプロジェクトになっています。
取材協力:北九州市おためしサテライトオフィス事業
⇒ https://otameshi-kitakyushu-r3.atomica.co.jp/