旅の扉

  • 【連載コラム】心を潤すラグジュアリーな旅
  • 2021年6月15日更新
トラベル&ライフスタイル ライター:yukiko

青森の旬の味覚を味わう1泊2日の美食旅(2)

ロビー「森の神話」zoom
ロビー「森の神話」
美食旅第二回は「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」について書きたい。美食旅はレストランで食べることがメインイベントだが、ストレスフルな時代に快適な旅をするために、ホテル選びは重要なポイントになる。

「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」は、青森県の十和田八幡平国立公園内、奥入瀬渓流沿いに唯一建つリゾートホテルだ。奥入瀬渓流は、十和田湖を源流とする奥入瀬川の十和田湖畔・子ノ口から焼山までの約14km続く流れのことをいう。
十和田八幡平国立公園内の奥入瀬渓流を眺めながらアペリティフを楽しめるテラス。詳細はコラム(1)をご覧ください。zoom
十和田八幡平国立公園内の奥入瀬渓流を眺めながらアペリティフを楽しめるテラス。詳細はコラム(1)をご覧ください。
1908年に旅行作家の大町桂月氏が、当時は秘境であった十和田湖と奥入瀬渓流を訪れて雑誌「太陽」に紀行文を発表した。大町桂月氏は「山は富士、湖水は十和田、渓流は奥入瀬」と紀行文に綴っていたという。これをきっかけに十和田湖と奥入瀬渓流の絶景が日本全国に知れ渡ったと言われている。この記事は、大正天皇(当時は皇太子)から青森県知事に問い合わせがあった程の影響力だったそうだ。後に、青森県知事が実際に十和田湖と奥入瀬渓流を視察に行き、奥入瀬渓流の美しい自然を守ろうと、国立公園化に向けて話が進められ、現在は国立公園に指定されている。100年以上の歳月を経ても、奥入瀬渓流の自然の豊かさや人の手を加えていない美観はそのままの状態で保たれている。
1991年に制作された岡本太郎の作品「森の神話」zoom
1991年に制作された岡本太郎の作品「森の神話」
コロナ禍でまず気になるのがホテルのコロナ対策である。星野リゾートのコロナ対策は評価が高く、ホテル内にコロナを持ち込まない、拡散しないをモットーに館内の換気、部屋の湿度管理、各部屋にアルコール消毒液などを常備している。
ホテルのエントランスでは手のアルコール消毒と検温を徹底していた。レストランにはアルコール消毒、マスクケースなど用意されているが、それだけではなく、室内の二酸化炭素濃度の数値を目視できるなど感染症対策は最高水準である。感染するかどうかを必要以上に気にすることなく滞在を楽しめるのはありがたい。

館内に入ると目の前に巨大な暖炉が見える。この暖炉は、芸術家の岡本太郎氏が手がけたもので、奥入瀬の森をイメージして作られた大暖炉「森の神話」である。森に暮らす鳥やきのこ、森の妖精が描かれている。このホテルには岡本太郎氏の大暖炉が2作品ある。もう一つの大暖炉「河神」は、岡本太郎氏の遺作で、ラウンジにある。この作品は、奥入瀬渓流の水しぶきが水の妖精(ニンフ)に変わる様子を表現している。7体の妖精がいる中で、1体だけ女性の妖精がいて、岡本太郎氏の養女であり妻だった岡本敏子氏がこの妖精のモデルだと言われている。星野リゾートの前身であったホテルオーナーが岡本太郎氏と仲が良く、岡本太郎氏に奥入瀬渓流に実際に滞在してもらい、奥入瀬の自然をテーマに創作してもらったのだという。ロビーにある「森の神話」はブロンズ製で、ラウンジにある「河神」はアルミ合金製で、色合いや材質が異なる巨大暖炉は、ひときわ目立つ存在である。実は岡本太郎氏の作品のレプリカ、「太郎カッパ神像」もある。
露天風呂テラス付き客室。客室の泉質は単純泉。源泉は猿倉温泉の混合泉zoom
露天風呂テラス付き客室。客室の泉質は単純泉。源泉は猿倉温泉の混合泉
客室は全187室で、部屋タイプは和テイストの渓流和室、なごみ和室、半露天風呂付客室、露天風呂テラス付客室、特別室と、西洋スタイルのモダンルーム、ツインルーム、ペットルームと8種類ある。今回宿泊した「渓流和室 露天風呂テラス付」は、68㎡のゆったりとした室内に、テラスには露天風呂がある贅沢な造り。ベッドとソファーは入口付近よりも一段高い所にあり、段差があることで空間にメリハリができている。さらに、ソファーのある部分は畳敷きになっていて、まるで家でくつろいでいるような気分になる。ソファーは窓に向かって設置されているので、奥入瀬渓流や大自然を眺めながらコーヒータイムを満喫した。露天風呂のあるテラスでは、渓流のせせらぎをBGMに温泉に浸かることができる。大自然の恵みを全身で感じることで心も身体も癒された。
星野リゾートは、アクティビティが充実している。毎晩20時からスタートする奥入瀬渓流の歴史や奥入瀬渓流に生息する苔について学ぶ「森の学校」では、十和田湖の水域が決壊して奥入瀬渓流ができたことなどをスライドを見ながら解説を聞ける。朝食時間が終わった頃にスタートする「苔玉作り」や「奥入瀬ランプ制作体験」も人気がある。魅力的なプラグラムがいくつもあるので、事前予約をしておきたい。


季節ごとに何度でも訪れたい星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル。渓流のせせらぎや鳥のさえずりを聞きながらテラスでの入浴、苔ウォッチングや渓流沿い散策などでリフレッシュできる。美食旅の締めくくりは摂取カロリーを消費するためにも、渓流散策をオススメしたい。大自然に癒された滞在だった。



「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」

住所:青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231

星野リゾート予約センター:0570ー073ー022

www.oirase-keiryuu.jp/
トラベル&ライフスタイル ライター:yukiko
雑誌の編集を経てフリーランスに。旅&ライフスタイルをテーマに執筆、編集。

上質なもの、歴史があるものに興味あり。

国内外でF1観戦、ファインダイニング巡りが趣味。

webマガジンApollonで執筆中 → https://www.apollonmagazine.com
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