旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2026年8月27日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

名湯で過ごす、温泉旅の新しいかたち。『界 草津』で2泊3日のおひとりステイ  【後編】

草津温泉名物の湯畑は、木樋を伝って大量のお湯が流れ込むさまが圧巻! 周辺にはお土産物屋や飲食店が軒を連ねます。zoom
草津温泉名物の湯畑は、木樋を伝って大量のお湯が流れ込むさまが圧巻! 周辺にはお土産物屋や飲食店が軒を連ねます。
群馬県・草津温泉は、標高1,200mの高原に位置する涼しい温泉リゾート。真夏でも平均気温は20℃前後。最高気温が30℃を超えることはほとんどなく、「軽井沢より涼しい」といわれています。今年6月7日に開業したばかりの『界 草津』があるのは、さらに数十メートルほどの高台。木立に囲まれた敷地内を心地よい風が吹き抜けます。
【前編】に続き、【後編】では星野リゾートの温泉旅館『界』滞在のお楽しみのひとつ「ご当地楽」と、スタッフおすすめの街歩きをご紹介します。

本物の繭から絹糸を挽く「シルクを紡ぐ上州座繰り」
日本各地に展開する星野リゾートの温泉旅館『界』を巡る大きな楽しみが、その土地ならではの歴史や文化、手仕事などに触れられる「ご当地楽」。『界 草津』がある群馬県は、古くから養蚕・製糸・織物の絹産業で栄えた地であることにちなみ、江戸時代から続く上州座繰りを体験する「シルクを紡ぐ上州座繰り」のプログラムが用意されています。
世界文化遺産・富岡製糸場を想起させるご当地楽棟。展示されている織物の美しさにも見入ってしまいます。zoom
世界文化遺産・富岡製糸場を想起させるご当地楽棟。展示されている織物の美しさにも見入ってしまいます。
群馬県の織物文化の歴史を物語る富岡製糸場は、明治5(1872)年に西洋の最新技術を導入し、日本初の官営製糸場として設立されました。その内部を思わせる「ご当地楽棟」に並ぶのは、木製の座繰り機。本物の繭から絹糸を挽く様子を間近で見る機会は多くありませんが、ここではさらにその工程を実際に体験できます。
体験内容は、お湯に浸した繭から稗の穂を束ねた器具で糸を挽き出し、巻き取っていくというもの。1匹の蚕がつくりあげた繭から、目に見えないほど細い糸が挽き出されていくのは、どこか神秘的な光景です。束ねた糸の真珠色の輝きと、繊細でありながらその力強さにも魅了されます。体験時間は約30分。現在、1日数回無料で実施されていて、どの回もほぼ満席になる人気ぶりなのだそうです。もっと時間をかけて糸を挽いてみたい! そのために再訪したいと思うほど、夢中になれた時間でした。
かつての富岡製糸場を再現した空間で、繭から絹糸を挽く体験ができるご当地楽「シルクを紡ぐ上州座繰り」。挽いた糸は草木染めの絹糸と合わせてタッセルを作り、旅の記念に持ち帰れます。zoom
かつての富岡製糸場を再現した空間で、繭から絹糸を挽く体験ができるご当地楽「シルクを紡ぐ上州座繰り」。挽いた糸は草木染めの絹糸と合わせてタッセルを作り、旅の記念に持ち帰れます。
「界 草津まちめぐりセット」を持って温泉街散策へ
草津を訪れたからには、温泉街散策も楽しみたいもの。スタッフおすすめのスポットを紹介するマップ付きの冊子「草津めぐりのすすめ。」と、3カ所の有名な外湯めぐりができる「三湯めぐり手形」がセットになった「界 草津まちめぐりセット」を携え、温泉街へ出かけることにしました。

まずは、草津温泉のシンボルでもある湯畑へ。自然湧出量日本一、毎分32,300リットル、ドラム缶に換算すると1日に約23万本もの温泉が湧き出ていて、木樋を伝ったお湯がエメラルドブルーのプールに流れ落ちる光景は圧巻のひとことです。周囲には無料で使える足湯や手洗い湯が何カ所もあることも、豊富な湯量の証です。
湯畑の目の前にある「熱乃湯」では、「湯もみと踊り」を鑑賞しました。おなじみの民謡「草津節」と「湯もみ唄」に合わせ披露される湯もみはのんびりしたものかと思いきや、クライマックスにお湯のしぶきが2階席近くまで舞い上がる光景は迫力満点! ショーは1日6回、開演の30分前からチケットが販売されます。
●熱乃湯
https://www.kusatsu-onsen.ne.jp/netsunoyu/
上/「湯もみショー」と、昔ながらの温泉街の賑わいを見せる湯畑周辺。下/坂道をぶらぶら歩くのが楽しく、裏草津と呼ばれるエリアにある「地蔵の湯まえ足湯」の近くに顔湯発見!zoom
上/「湯もみショー」と、昔ながらの温泉街の賑わいを見せる湯畑周辺。下/坂道をぶらぶら歩くのが楽しく、裏草津と呼ばれるエリアにある「地蔵の湯まえ足湯」の近くに顔湯発見!
「三湯めぐり手形」で草津を代表する外湯を“はしご湯”
草津温泉にはいくつかの外湯があり、「三湯めぐり手形」を利用すれば「草津三湯」と呼ばれる代表的な3湯を1回ずつ利用できます。私の一番のお気に入りは、草津に古くから伝わる合わせ湯がある「大滝乃湯」。内湯と露天風呂のほか、一番湯から四番湯まで順番に湯温が高くなっていく4つの浴槽があり、ぬるい湯から体を慣らしていきます。一番湯はちょうどいい感じ、二番湯はちょっと熱め、三番湯も何とかクリアして、四番湯になると足だけ浸かったり、かけ湯でギブアップする人が半分以上。みごと肩まで浸かると注目の的になり、見知らぬお客さんから喝さいを浴びます。いつの間にかコミュニケーションが生まれるのも、共同浴場ならではの楽しさです。湯畑から少し離れますが、近くにジェラートの店や湯めぐりセットの割引券を使えるカフェもあるので、湯上りの楽しみにも事欠きません。
いっぽう、湯畑の目の前にあるのが「御座乃湯」。湯畑源泉と万代源泉の2種類のお湯があり、2階大広間の休憩所からは湯畑の全景を見下ろせます。

3つ目の外湯が、男女合わせて500㎡と日本有数の広さを誇る「西の河原露天風呂」。森に囲まれた広大な露天風呂は野趣満点。こちらは、ほぼ貸切状態で入浴できる早朝のオープン直後に訪れるのがおすすめです。清々しい空気のなか、鳥の声や風の音を聞きながら露天風呂に浸かる気分は何とも言えません。私はチェックアウトする3日目、朝食前の散歩を兼ねて出かけました。
上/湯畑の幻想的な夜のライトアップ。下/最終日は、朝の散歩を兼ねて西の河原公園と、公園の最奥部にある露天風呂へ出かけ、「三湯めぐり手形」の3カ所をクリア(写真は無料の足湯)。「草津めぐりのすすめ。」を持参すればタオル付きで利用できます。zoom
上/湯畑の幻想的な夜のライトアップ。下/最終日は、朝の散歩を兼ねて西の河原公園と、公園の最奥部にある露天風呂へ出かけ、「三湯めぐり手形」の3カ所をクリア(写真は無料の足湯)。「草津めぐりのすすめ。」を持参すればタオル付きで利用できます。
湯めぐりの合間にはカフェに立ち寄ったり、熱々の温泉まんじゅうで小腹を満たしたり、新旧の店が軒を連ねる温泉街をぶらぶらと歩くだけでも楽しいもの。客室に備え付けの作務衣を着て出かけると入浴前後の着替えがスムーズですが、温泉街は坂道が多いので足元は雪駄より歩きやすいスニーカーなどがおすすめです。

2泊3日の『界 草津』滞在では、ゆったりした時間を過ごしながら伝統文化に触れ、温泉街では圧巻の湯畑や伝統の湯もみショーを楽しみ、歴史ある名湯の風情に触れることができました。ふたつの異なる世界を行き来して満喫するには1泊2日では少々あわただしくなってしまいます。ちょっと贅沢すぎるかなぁ、、、と思いましたが、2連泊して大正解でした。

◎『界 草津』とは、こんなお宿。【前編】は、こちらから。

https://www.risvel.com/column.php?col=1494&mode=preview

◆界 草津
群馬県吾妻郡草津町大字草津字白根464番地690
TEL 050-3134-8092
全94室(露天風呂付き18室)
1泊夕・朝食付き46,000円~(2名1室利用時1名当たりの料金、税・サービス料込み)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikusatsu/

「温泉文化」のユネスコ無形文化遺産登録を目指す新プロジェクトが始動
星野リゾートが全国に展開する温泉旅館『界』では、温泉入浴の楽しみだけにどどまらない「王道だけど、あたらしい。」温泉旅を提案しています。大きな特徴は、それぞれの地域ならではの温泉文化とともに、歴史や継承、食、芸能や手仕事などに触れ、知的好奇心が大いに刺激されること。「ご当地楽」では、案内役のスタッフが専門家や地元の人たちと交流して練り上げたプログラムが用意され、街歩きは自ら足で歩いて収集した情報がベースになっているので、うわべの観光ではない、本物の体験をできることが魅力です。
『界』の新プロジェクト「30の温泉宿、30の温泉文化」では2030年までに30施設開業を目指しています。zoom
『界』の新プロジェクト「30の温泉宿、30の温泉文化」では2030年までに30施設開業を目指しています。
2030年には、日本が古くから築いてきた「温泉文化」を、ユネスコ無形文化遺産登録する動きがあります。これを見据えた新プロジェクトが、「30の温泉宿、30の温泉文化」。2026年は『界 草津』に続き、『界 宮島』(広島・7月23日開業)、『界 松本』(長野・8月4日リニューアルオープン)、『界 蔵王』(山形・10月15日開業予定)が続々と開業し、2030年までに30施設のラインナップがそろうとのこと。『界』を拠点に全国の温泉めぐりをすれば、地域の歴史や文化にも精通した本物の“温泉通”になれるに違いありません。
◎『界』の最新開業情報
https://hoshinoresorts.com/ja/brands/kai/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
risvel facebook