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トラベルコラム
世界自然遺産の西表島でエコツーリズム体験 ②島のアイドル、イリオモテヤマネコの痕跡を探せ!
旅の扉
【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
2025年9月16日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子
世界自然遺産の西表島でエコツーリズム体験 ②島のアイドル、イリオモテヤマネコの痕跡を探せ!
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イリオモテヤマネコの銅像は、島内に2カ所。これは、上原港に近い西側にあるもの。果たして今回は、ホンモノに会えるでしょうか?
世界でも沖縄県八重山諸島の西表島にだけ生息するイリオモテヤマネコは、国指定特別天然記念物。現在、島内に約100頭が生息し、その数は年々減少傾向にあるのだそう。環境省レッドリストに登録され、現存種のなかで最も絶滅の恐れが高い「絶滅危惧ⅠA」に指定されている、とても希少な生き物です。
ネコ好きにたまらない、マニアックなツアー
自他ともに認めるネコ好きの私としては、西表島を訪れたらイリオモテヤマネコに会いたいと思うのは当然のこと。しかし、島に長く暮らしている人でも、その姿をはっきりと見たことがある人は多くないといいます。「なんとか、島のアイドルネコちゃんの気配だけでも感じたい!」。そこで、「西表島ホテル by 星野リゾート」が「イリオモテヤマネコの保護活動」のひとつとして実施している、イリオモテヤマネコの痕跡を探すツアーに参加してみることに。もちろん、「ひょっとしたら、ホンモノに遭遇できるかも・・・」という期待と下心もあったのですが、“痕跡を探す”というのが、なんだかマニアックで楽しそうです。
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ヒョウ柄と額の縦縞、丸い耳と長いしっぽが特徴。精悍な顔つきは、ベンガルネコに似ています。
ツアー前日の夜には、ホテルのロビーで無料開催されている「イリオモテヤマネコの学校」を受講し、“予習”もしっかりと。彼らの主な生息地は山麓から海岸にかけての低地部分。人々が日常生活に利用する道路や歩道、田んぼに出没することもあるため、車道に飛び出してきて車に轢かれる事故が起こることも。島の生息環境を守るだけでなく、「ロードキル防止」は、欠かせない保護活動のひとつなのだそうです。
“イリオモテヤマネコ博士”の案内で痕跡を探す
「イリオモテヤマネコ痕跡ツアー」のガイド・中山健さんは、イリオモテヤマネコをこよなく愛するナチュラリスト。道路付近で行動している個体の状況を把握し、その知識とフィールド活動で培った経験を活かし、痕跡が出やすいスポットを巡るツアーを行っています。今回、訪れたのは、稲刈りが終わったばかりの田んぼや、小川のほとり、側溝など。昆虫、カエルやヘビ、テナガエビなど、彼らの食料となる生物が多くいる場所です。世界中の野生小型ネコがネズミ、ヘビなどの小動物を食料としているのに対して、様々な生き物を捕食するのはイリオモテヤマネコだけ。水辺で足跡や食事の残骸が見つかることは多く、フンも重要な痕跡のひとつ。乾燥具合を見れば、どのくらい前にその場所にいたのかわかるのだそうです。
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ガイドの中山健さん。農地などの土地所有者の方から許可を得て自動カメラを設置し、道路に出てくる可能性がある個体の状況を把握することも、保護活動のひとつ。水辺ではカエルやテナガエビなどを捕食した痕跡が見つかります。
中山さんはガイドツアーの傍ら、監視カメラを設置してイリオモテヤマネコの生息場所を特定したり、車や農業機器との衝突を防ぐために、生息場所に近い路肩や農道の草刈りをしたりといった活動を行っています。夜のパトロールも欠かさず、特に母ネコの出産時期や、子猫が母ネコから離れて別行動をとる時期には、車道近くで彼らの姿を見かけると、車を怖がるようにジャングルの中に追い返すのだそう。かわいそうなようですが、不幸なロードキルを防ぐためには大切なことなのだとか。その地道な活動に、深いイリオモテヤマネコ愛を感じずにはいられません。
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イリオモテヤマネコの足跡。田んぼや畑のそば、水辺で見つかることが多いのだとか。
しばらく晴天が続いたこともあり、今回のツアーで見つかったのは、数日前のものと思われる白く干からびたフンだけ。しかし、痕跡を探しながらフィールドを歩くツアーは宝探しにも似たワクワク感があります。中山さんの解説に耳を傾けながら、これまでに撮りためた画像や写真を眺め、この場所にいた(かもしれない)イリオモテヤマネコの姿を想像するのも楽しく、ネコストーカー気分を満喫しました。
創設30周年を迎えた「西表野生生物保護センター」
ツアーの最後に訪れたのが今年、創設30周年を迎えた「西表野生生物保護センター」。イリオモテヤマネコの保護活動の拠点として設立され、島内に生息する野生生物の普及啓発活動や、保護・研究を行っています。動植物の展示や解説を見ていると、この島の自然がどれだけ多彩なものであるのかと同時に、自然環境のバランスがわずかに崩れただけで生態系が大きく変わってしまい、イリオモテヤマネコをはじめとした希少な生物の命を脅かすであろうことがよく分かります。
アフリカのサファリのホテルやロッジでは、ホテルの敷地のすぐ近くまでキリンやライオンがやってくる姿が見られるといいます。この西表島でも、ホテルの庭にイリオモテヤマネコがひょっこり遊びに来る姿が見られる、そんな日がいつか訪れることを願いながら、施設を後にしました。
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「西表野生生物保護センター」に展示されているはく製。大きさは、一般的な飼い猫とほぼ同じくらい。
【世界自然遺産の西表島でエコツーリズム体験】第3回 は、ジャングルをのんびり歩くスローハイキングと滝つぼダイブを楽しむアクティビティをご紹介します。
◎イリオモテヤマネコ痕跡ツアー
期間 : 通年
定員 : 2名~6名
時間 : 所要約3時間 ※開催時間は、季節により変動。
料金 : 1名7,000円
申し込み : 「西表島ホテル」公式サイトより、前日18:00までに要予約
◆西表島ホテル by 星野リゾート
沖縄県八重山郡竹富町上原2-2
TEL 050-3134-8094(星野リゾート予約センター)
料金:2泊24,000円~(2名1室利用時の1名分、税・サービス料込み、食事別)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/iriomote/