旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2021年1月26日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

オペラ初心者もぜひ! オーディオシステムとイタリアンのコラボで楽しむバレンタイン・ディナー

東京駅前の夜景を一望できる『リストランテ・ヒロ チェントロ丸の内』に設営されたオーディオシステム。イタリア製は、インテリアとしても映えるデザイン性の高さが魅力。zoom
東京駅前の夜景を一望できる『リストランテ・ヒロ チェントロ丸の内』に設営されたオーディオシステム。イタリア製は、インテリアとしても映えるデザイン性の高さが魅力。
演劇やコンサート会場では、幕間の休憩時間を利用してバーラウンジで軽い食事とワインを味わうのも楽しみのひとつ。前半の余韻に浸ったり、後半の展開を想像する時間は、その日のプログラムをより印象深いものにしてくれます。けれど大勢が集まるイベントや、会場での飲食が制限されている昨今、劇場のバーラウンジが休業していたり、メニューを制限しているところが多いのが現状。先日、鑑賞したお芝居でも、ペットボトルの飲み物しか提供していなくて、がっかりしてしまいました。

そんな状況に物足りなさを感じていた私を大いに楽しませてくれたのが、オーディオ輸入商社『タイムロード(TIMELORD)』と『リストランテ・ヒロ チェントロ丸の内』のコラボレーションで実現した『TIMELORD 美音と美食の夕べ』です。

イタリアを代表するオーディオシステムと、イタリアンの名店のコラボレーション
『タイムロード』は、「高品質な音楽環境があるライフスタイル」をコーディネートするオーディオ輸入商社。高度な再生技術とスタイリッシュなデザインにこだわり、イタリア産のハンドメイド製品のなかでも、希少性の高いものを厳選して扱っています。
今回のイベントを企画した『タイムロード』のオーナー・平野至洋さんいわく、
「好みの車や装飾品を選ぶように、オーディオシステムを楽しむライフスタイルを日本にもっと浸透させていきたい。インテリアの一部にもなるデザイン性の高さと、コンパクトなラインナップが充実するイタリアのものなら、日本の住環境にぴったりのものが見つかります」。
その平野さんがオーディオシステムをアレンジし、コンサート空間として選んだのが、東京駅・丸の内口前の丸ビル35階にある『リストランテ・ヒロ チェントロ丸の内』。この夜は、バレンタインに向けて企画されたディナーイベントを、ひと足お先に体験してきました。
“オペラ界の貴公子”と呼ばれる樋口達哉さんが登壇。最新CDアルバムに耳を傾けながら、ディナーを楽しみます。zoom
“オペラ界の貴公子”と呼ばれる樋口達哉さんが登壇。最新CDアルバムに耳を傾けながら、ディナーを楽しみます。
オペラハウスさながらの臨場感と、イタリアンのコースにうっとり!
今回のイベントのために採用されたのは、特にボーカルが美しく再生されるスピーカー『チャリオ』と、アンプには『パトス』。レストラン全体をオペラハウスさながらの臨場感がある空間に創りあげ、そのなかで美食と音楽を楽しむという嗜好です。そして、オーディオシステムのスペックを最大限に引き出すための音源に、オペラ歌手・樋口達哉さんのアルバムが選ばれました。日本を代表するテノールであり、“イタリアの太陽を思わせる輝きがある声と華をもつ”と賞されている樋口さん。楽曲再生に先立ち、なんとご本人の登壇です。
「オペラと聞くと敷居が高いと思われる方が多いようですが、映画化でおなじみの物語や、どなたでも耳にしたことがある楽曲も多いのですよ。まずは今日のように食事とともに観賞したり、家庭でリラックスしながら楽しんでみてから、実際の劇場に足を運ばれてみてはいかがでしょうか」と樋口さん。この日は樋口さんの最新アルバム『あこがれ』から、オペラの代表曲『ある晴れた日に(蝶々夫人から)』、フィギュアスケートの演技曲としてもよく知られている『トゥーランドット~誰も寝てはならぬ』など、バレンタインに合わせて男女の愛を歌った名曲の数々が紹介されました。
前菜の『真鱈白子の熱々フラン』の仕上げには、トリュフをたっぷり削って。zoom
前菜の『真鱈白子の熱々フラン』の仕上げには、トリュフをたっぷり削って。
樋口さんの歌声とともに楽しむメニューは、『リストランテ・ヒロ チェントロ丸の内』の料理長・柴田拓さんが楽曲からインスピレーションを得たバレンタインコース。真鱈の白子、北海道産タラバ蟹など旬の魚介を中心に、トリュフ、フォアグラ、フランス産鴨肉といった贅沢な食材を組み合わせた全6皿です。
食事のスタートに合わせCDの再生が始まると、目の前に運ばれてきた前菜に目を奪われながらも、耳は樋口さんの歌声にグイグイと引き込まれていきます。繊細な高音、ずしりと響く重厚な低音は、劇場にいるかのような臨場感。その音に包まれながら、目と舌では特別な夜のために作られたコース料理を楽しむという贅沢な時間に、久しぶりに再会した同席の友人とおしゃべりするのも忘れて酔いしれました。
鮮魚のペッシュクルード、フォアグラのロースト、パスタに続き、フランス産鴨胸肉のロースト、イチゴのパンナコッタを。zoom
鮮魚のペッシュクルード、フォアグラのロースト、パスタに続き、フランス産鴨胸肉のロースト、イチゴのパンナコッタを。
ニューノーマルの時代にふさわしい、新たなエンターテインメントの予感
大勢が集まるイベントやコンサート会場に出掛けにくい状況は、まだしばらくは続くでしょう。けれど、モバイルオーディオアイテムとストリーミングの進化によって、場所や時間に縛られず音楽も演劇も楽しめる時代。今回のような高品質のオーディオシステムとレストランとのコラボレーションは、新しい形のエンターテインメントとして、これからもっとニーズが高まりそう。第1弾のバレンタインコースに続く、第2弾の開催を楽しみにしています。
期間中は、コース料理に合わせたグラスワインを1,200円から提供しています。zoom
期間中は、コース料理に合わせたグラスワインを1,200円から提供しています。
最後に、私の生オペラ鑑賞デビューのちょっと残念な経験を白状します。14~15年前、場所はオペラ誕生の地、イタリア・フィレンツェ歌劇場、プログラムは音楽史上最長といわれているワーグナー作『ニーベルンゲンの指輪』という、初心者には贅沢すぎるシチュエーション。このプログラムは全4部作・総上演時間15時間にも及び、通常は4日間連続で上演されるものなのだそうですが、このとき観賞したのは全幕を一晩で演じ切る、いわゆるダイジェスト編。とはいえ4時間を超える長編で、前半はただひたすら眠く、後半はひたすらお腹が空いた…という記憶ばかりが残っています。今回のような催しを体験した後だったら、もっと楽しめたかもしれません。

そんな思いもあり先日、樋口達哉さんが出演された新春オペラ『サムソンとデリラ』のリアル舞台鑑賞に出掛けて行きました。オーケストラバックの臨場感、舞台から伝わってくる熱量は、やはり劇場に足を運ばなければ味わえないもの。その入門編としてオーディオシステムを利用し、これまであまりなじみがなかった演劇やコンサートの世界に触れてみるのもいいですね。
また自由に海外に行ける日常が戻ってきたら、再びフィレンツェに出掛け、15年前のリベンジを果たしたいと思っています。
サムソンを熱演する樋口達哉さん(東京二期会サン=サーンス『サムソンとデリラ』より)。2021年1月5日 Bunkamuraオーチャードホール「写真提供:公益財団法人東京二期会」zoom
サムソンを熱演する樋口達哉さん(東京二期会サン=サーンス『サムソンとデリラ』より)。2021年1月5日 Bunkamuraオーチャードホール「写真提供:公益財団法人東京二期会」
『TIMELORD 美音と美食の夕べ ~オペラとともにイタリアン・バレンタイン』
【バレンタインコース】一人15,000円(サービス料10%・消費税別途)
 提供期間 : 2月11日(木)~14日(日) 18:00~21:00(L.O.) *注
 予約 : リストランテ・ヒロ チェントロ 丸の内(電話またはオンラインで)
 https://www.r-hiro.com/centro/
※注:本イベントは、緊急事態宣言の延長に伴い延期となっています。新たな開催日程は、直接店舗にお問い合わせください。また、状況や仕入れ都合により、提供時間やメニュー内容が変更になる場合があります。


樋口達哉さん
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了後、ミラノに留学。海外でのキャリアが多く、国際声楽コンクール最優秀賞等、受賞歴多数。日本を代表するオペラ歌手が一堂に集まる『NHKニューイヤー・オペラコンサート』など、メディア出演も多い。二期会会員。
https://www.higuchi-tatsuya.com/
◎樋口達哉のオペラ『道化師』
http://www.nikikai21.net/concert/20201010.html
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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