旅の扉

  • 【連載コラム】ヘルシー目線でアジアの旅をスナップ!
  • 2020年2月5日更新
Asian Wellness Journey アジアン・ウェルネス・ジャーニー
ライター・エディター:河辺さや香

東京から2時間の猪苗代に、伝説のロッジが大人の宿として復活

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福島、山形、新潟の三県がまたがる場所に、磐梯朝日国立公園という広大な自然の宝庫があります。そして、この園内にある猪苗代町の沼尻高原に、かつて登山家の田部井淳子さんが愛したロッジがありました。その名も「沼尻高原ロッジ」。時を経て同じ名前で再オープンした宿は、大人が癒やされる場所であると同時に、田部井淳子さんのアーカイブにもなっています。
館内には、田部井淳子さんが実際に登山の時に履いた靴や、思い出の品々が飾られています。©yOUzoom
館内には、田部井淳子さんが実際に登山の時に履いた靴や、思い出の品々が飾られています。©yOU
洗練と癒やしのバランスがとれた、大人のためのロッジ

2019年11月に再オープンした「沼尻高原ロッジ」は、もともと田部井淳子さんが世界中から日本を訪れた登山家たちと交流する場でした。田部井淳子さんといえば、女性で世界初のエベレスト登頂に成功し、七大陸の最高峰登頂という偉業を成し遂げた伝説の登山家。福島県出身である彼女は、晩年、東北の復興に重きを置いていました。その遺志を受け継ごうと、かつての名前をそのまま残したのだそうです。

このような理由で「ロッジ」という名称が使われていますが、いわゆる山小屋のイメージを想像して訪れると、そのギャップに驚くかもしれません。そこは洗練と癒やしのバランスがちょうどよく、まさに大人が隠れ家にしたい空間。北欧好きや、旅慣れた人々をも魅了する、センスの良い宿です。
「ヒラリー卿の部屋」。朝は日の光で目覚めて欲しいとの願いから、全室で遮光カーテンは使用されていません。©Numajiri Kogen Lodgezoom
「ヒラリー卿の部屋」。朝は日の光で目覚めて欲しいとの願いから、全室で遮光カーテンは使用されていません。©Numajiri Kogen Lodge
からだが緩み、心が和む、居心地の良い客室

デザインされた客室は、スタイリッシュでありながらロッジという名にふさわしい、ぬくもりある雰囲気。全12室という小さな宿ですが、半露天風呂付きのスイートルーム(メイン画像)をはじめ、お部屋のタイプは6つあります。かつて人類初のエベレスト登頂者・ヒラリー卿が宿泊したという部屋は、「ヒラリー卿の部屋」として復活。他のお部屋に比べて、よりロッジのイメージに近いインテリアです。山好きの方は、こちらで思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
冬は雪景色を見ながら名湯に浸かる幸せを。このにごり湯は、肌ケアや疲労回復に良いそうです。©yOUzoom
冬は雪景色を見ながら名湯に浸かる幸せを。このにごり湯は、肌ケアや疲労回復に良いそうです。©yOU
日本一の湧出量を誇る名湯を、源泉かけ流しで

また、沼尻には230年の歴史を誇る「沼尻温泉」があります。なんと、単一の源泉としては日本一の湧出量。しかも硫黄泉は強酸性の薬湯という、知る人ぞ知る名湯です。室内及び露天のお風呂では、肌触りの良いにごり湯を100%源泉かけ流しで楽しむことができます。大自然に囲まれた贅沢な環境の中で湯けむりをまとい、したたる水の音だけに耳を傾けていたら、心身ともに整ったような気がしました。
会津地鶏の炙りと旬菜。紫のソースは、オーガニックの黒人参をベースにしたもの ©yOUzoom
会津地鶏の炙りと旬菜。紫のソースは、オーガニックの黒人参をベースにしたもの ©yOU
身土不二とオーガニックを実現した、繊細な和食コース

この宿でしか食べられない特別な和食コースは、「沼尻高原ロッジ」最大の魅力の1つと言っても過言ではありません。料理長は、「沼尻高原ロッジ」の母体でもある会津芦ノ牧温泉の老舗旅館「大川荘」で、長きに渡って腕をふるっている一流シェフ。何が特別なのかという理由は、お料理のコンセプトにあります。
食養生の考え方に「身土不二」という用語があります。これは、「体と土は一つである」という捉え方で、人間が自分の足で歩ける範囲で採れたものを食べるのが体にいいとされているもの。その具体的な範囲は四里(約16km)四方と言い伝えられています。なんとこの宿では、ごく一部を除き、沼尻から四里以内のオーガニック食材のみを使っているのです。これは食材に恵まれた土地だからできることであり、決して容易なことではありません。

お料理は見た目だけでなく味も繊細で、食材が持つ個性を上手く生かしています。会津の食文化についてお話を聞きながらいただくと、より一層、ありがたみを感じられるでしょう。
ロッジの隣にベーカリーとアクティビティレンタルスペースを建設中。春にオープン予定 ©Numajiri Kogen Lodgezoom
ロッジの隣にベーカリーとアクティビティレンタルスペースを建設中。春にオープン予定 ©Numajiri Kogen Lodge
四季折々の自然を楽しめる環境は、アクティビティにも最適

「沼尻高原ロッジ」の目の前には、沼尻スキー場のゲレンデが広がっています。これだけでも十分好立地なのですが、周辺には、大人が参加したいアクティビティや名所が揃っているのです。ロッジの周りには、福島県出身の田部井淳子さんも幾度となく登った「安達太良山」「磐梯山」「西吾妻山」という百名山が3つも!登山好きにはたまらない環境でしょう。また、「ふくしまの水三十選」に選定されている名瀑「滝沢不動滝」は歩いていける距離。滝元には不動尊が祀られており、パワースポットとしても知られています。そして、東北No.1のコースとも称される「ボナリ高原ゴルフクラブ」もすぐ近くです。

宿までは東京から約2時間半、JR磐越西線の猪苗代駅から車で20分というアクセスの良さも同じく魅力的。駅からロッジまでは送迎サービスもあるので、車がなくても心配不要です。

何もしない贅沢を謳歌するのもよし、少年時代や少女時代にかえって大自然と戯れながらアクティビティに挑戦してみるのもよし。落ち着いた大人のためのロッジには、様々な気持ちを叶えられる要素が詰まっています。


沼尻高原ロッジ(https://www.numajiri-lodge.com/

ライター・エディター:河辺さや香
出版社勤務、北京・上海・シンガポールでの生活を経て、現在は東京を拠点にフリーランスとして活動中。アジア女性ならではのヘルシー&ビューティーなライフスタイルに関心を持ち、漢方養生指導士(漢方スタイリスト)や養生薬膳アドバイザー、他にジュニア野菜ソムリエの資格も持つ。各媒体に旅、食、料理、健康にまつわるトピックスを執筆中。“アジアを旅するライターユニット”Tom☆Yam(http://www.team-tomyam.com/)のメンバー。
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