旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2019年5月10日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

【オリーブオイルの故郷・チュニジアの旅】 Vo.2 収穫からボトリングまで、チュニジアの工場見学へ

チュニジアを代表するオリーブオイルメーカー『CHO(チョー)社』の工場へ。zoom
チュニジアを代表するオリーブオイルメーカー『CHO(チョー)社』の工場へ。
オリーブの花の開花時期は北半球の場合、5月~6月下旬。昨年、収穫期の10月末に訪れた北アフリカ、チュニジアの農園でもそろそろ小さな花をつけているころでしょう。『オリーブオイルの故郷・チュニジアの旅』第2回は、チュニジアを代表するオリーブオイルメーカー・CHO(チョー)社の最新設備を誇る工場のご紹介です。"工場見学"と聞くと、じっとしていられない私。しかも、初めて訪れたチュニジアでの見学体験に、わくわくして出かけました。
チュニジア第2の都市・スファックス郊外にある工場。直営農園のオリーブの実は、収穫したその日のうちに運び込まれます。zoom
チュニジア第2の都市・スファックス郊外にある工場。直営農園のオリーブの実は、収穫したその日のうちに運び込まれます。
オリーブ栽培からボトリングまで、全工程を自社管理
工場見学に先立ち、CHO社の本社で概要とその取り組みについてレクチャーを受けました。意外に知られていませんが、チュニジアはオーガニック大国。1984年から国を挙げて取り組んでいて、CHO社はそれを牽引する存在。フランス、イタリア、米国、カナダなど24カ国のオリーブオイル輸出先に合わせ、エコサート、JASエコサート、USDAオーガニックなど、世界で最も取得が難しいとされる16の認証を取得しているそうです。
石や葉を取り除き洗浄されたオリーブの実は、プレス機に。zoom
石や葉を取り除き洗浄されたオリーブの実は、プレス機に。
オリーブ農園と工場があるのは、チュニジア第2の都市スファックス。近郊の農園で収穫されたオリーブの実はその日のうちにトラックに積み込まれ、工場に届けられます。入り口ではどこの農園の実を積載したものか、1台1台のトラックがチェックを受け、さらに荷台に積れたすべてのコンテナから少しずつ実をサンプリング。こうして農園から製品化されるまで、すべての工程が厳格に管理されたトレーサビリティのシルテムが確立されています。

収穫から24時間以内に製品化されるオリーブオイル
工場に運び込まれたオリーブの実は、石や葉が取り除かれ洗浄を経て、粉砕、圧搾し、オイルが絞られます。化学的な処理は一切行わず、20~27℃で抽出するコールドプレス製法のオイルは、オリーブ果実のフレッシュジュースといっていいでしょう。
20~27℃の温度管理のもと、コールドプレス製法でオイルを搾ります。zoom
20~27℃の温度管理のもと、コールドプレス製法でオイルを搾ります。
搾ったままのオイルには、不純物を取り除くため、ほんの少しの水が加えられます。こうして沈殿物を取り除いた上澄みの部分だけが厳重な温度管理のもとタンクに移され、ボトリングの工程へ。収穫からここまで24時間以内と聞き、そのスピードに驚かされました。

CHO社のブランドである『TERRA DELYSSA(テラ・デリッサ)』のオイルは、一番搾りのエキストラバージンのみ。二番搾り、三番絞りは化粧品やせっけんなどの加工品に、さらに搾りかすも堆肥化され農園の肥料として使われます。オイルのクオリティはもちろんのこと、トレーサビリティとともにサティスナブルな循環型農業への取り組みも、DHO社が誇りとするところだそうです。
左がオリーブを粉砕し搾った直後のもの、右は不純物を沈殿させフィルターでろ過したオイル。zoom
左がオリーブを粉砕し搾った直後のもの、右は不純物を沈殿させフィルターでろ過したオイル。
ポリフェノールは欧州産に比べ10倍以上!
ところで、オリーブオイルには辛みと苦みの違いから「マイルド」「ミディアム」「ストロング」の3タイプがあることをご存知でしょうか? マイルドなオイルには淡白な食材が、強くなるにつれて旨みやクセの強い食材が合うといわれます。
チュニジア産オリーブオイルの特徴は、さらりとしてクセが少なく、マイルドな味わいであること。そのためどんな料理にも合わせやすく、パンにつけたりサラダやスープにかけたり、魚料理との相性も申し分ありません。また、今回現地でお世話になったCHO社の女性たちは、そのまま飲んだり、肌や髪の毛に美容液代わりに使うこともあると言っていました。チュニジア女性にとってオリーブオイルは食生活とともに、ボディケアにも欠かせないものなのです。
CHO社のブランド『TERRA DELYSSA(テラ・デリッサ)』。日本ではコストで取り扱いがあります。zoom
CHO社のブランド『TERRA DELYSSA(テラ・デリッサ)』。日本ではコストで取り扱いがあります。
さらにすごいのは、イタリア、スペインといった欧州産のオリーブオイルに比べ、ポリフェノールの含有量が10倍以上もあること。チュニジア美人の秘訣は、ひょっとしたらオリーブオイルにあるのかもしれません。

CHO社のオリーブオイルは、チュニジア産オイルの80%を占め、輸出額では55%のシェアを誇ります。主要ブランドである『TERRA DELYSSA』の名称は3000年以上前、チュニジアの地にオリーブの木をもたらしたとされる王女の名前から、馬のロゴは紀元前、首都チュニス周辺に栄えた古代都市・カルタゴのコインにある馬の刻印をモチーフにしたもの。そんなところからも、国の基幹産業であるオリーブオイル産業を担うCHO社の誇りが見てとれました。

『TERRA DELYSSA』のオリーブオイルは世界中のコストコ、フランスのオーガニックスーパーでNo.1のセールスを誇っているのだとか。日本でもコストコのほか、ネット販売で手に入れることができます。

●Special thanks to:
TERRA DELYSSA(テラ・デリッサ)
www.terradelyssa.com

Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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