旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2019年4月8日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

沖縄離島観光の新しい時代を予感させるジェットスター「みやこ下地島」路線

みやこ下地島空港を離陸する折り返しの成田行き初便zoom
みやこ下地島空港を離陸する折り返しの成田行き初便

新規路線就航へ
沖縄離島観光の目玉となる、みやこ下地島空港に24年振りとなる定期航空路線ができました。訪日外国人の増加により、沖縄離島観光も人気の一途をたどり、空港の受け入れ許容量を超えようとしています。2016年に橋で結ばれた宮古島市の宮古空港とは20kmしか離れておらず、観光振興に期待のかかる新空港です。下地島空港が首都圏と結ばれるのは初めて。初就航に名乗りを上げたのは、ジェットスター・ジャパン。宮古島で幼少時代を過ごし、この就航初便を操縦した黒瀬機長の機内アナウンスによる「40年前のうわさ」が実現した瞬間です。

機長の回想
黒瀬少年の幼少期は宮古島とともにあります。宮古島市立平良第一小学校に通い、自宅から近い宮古空港で飛行機を眺めて過ごしました。パイロットの訓練を国内で実現したいとエアラインが国に進言してできた訓練専用の下地島空港が開港したのは1979年です。黒瀬少年は、「下地島空港から東京に路線ができるぞ」という話を聞きつけますが、年月と共にそのうわさはいつしか立ち消えました。そしてこの3月、長い年月を経て、その話は実現しました。まっ先に、会社に対しこの就航初便への乗務を申し出たのは言うまでもありません。

成田空港から就航初便の操縦桿を握る黒瀬機長には、万感の思いがあったことでしょう。機長の思いは、通常よりも長い機内アナウンスに込められていました。

みやこ下地島空港に向かう
3月30日、成田空港第三ターミナル163番スポットで横断幕を掲げてもらい出発していったのは、3日前に受領したばかりのエアバスA320-232のJA25JJ機。搭乗口では、就航初便記念品が配られました。機内販売のどらやきは、成田に本社を置く米屋が製造しています。今回は、初便限定の宮古島の雪塩を使ったどら焼きが搭乗客に配られていました。他にもロゴの入ったサングラス、今回のために作ったみやこ下地島空港の滑走路方位R/W17と書いたノートとステッカーが入っています。専用のクリアファイルなどとともに、記憶に残る土産となりました。

黒瀬機長(中央左)、花城副操縦士(中央右)と客室乗務員の皆さんzoom
黒瀬機長(中央左)、花城副操縦士(中央右)と客室乗務員の皆さん

機長の想い
機長のアナウンスは、生い立ちの紹介に加えて、環境問題も含まれます。ごみは持ち帰るなどして沖縄離島の手つかずの自然を次の世代に残していってほしいと出身者ならではの気持ちがこもります。

機長考案のファーストフライトレコードカードが希望者に配られ、飛行速度、高度や使用滑走路などの飛行緒元をアナウンスの内容から搭乗者自身が書き入れるスタイルが取られていました。往復でカードの写真が違うといった凝った作りであることが紹介され、搭乗旅客を喜ばせます。

初便就航記念品とフライトレコードカードを配る客室乗務員zoom
初便就航記念品とフライトレコードカードを配る客室乗務員

乗務するキャビンクルー
客室責任者となるキャビンサービスマネージャーのケイコさんに話を聞くことができました。ANAとJALを経て、ジェットスターに入社。安心して働くことのできる環境を安全への取り組みだと言います。安全運航で名だたるカンタス航空の出資会社でもあり、社内体制も整っています。一般の航空会社では年に一回のエマージェンシートレーニングが、ジェットスターグループでは二回行われます。
新規路線開設の多い同社でも、みやこ下地島路線は純粋なリゾート路線であり、かつ単独就航なので社内でも注目度が高かったとのこと。その就航初便のキャビン責任者として乗務できた喜びを表情ににじませていました。

客室責任者のKEIKOさん(左写真)、EMIKOさん(右写真左)とMITSUKIさんzoom
客室責任者のKEIKOさん(左写真)、EMIKOさん(右写真左)とMITSUKIさん

宮古島にビジネス開拓へ
搭乗旅客にも話を聞いてみました。伊豆でリゾートホテルを経営する守屋さん。新たなビジネスチャンスを求めて、石垣、宮古島エリアでグランピングのできる土地を探しに来ました。たまたまインターネットで航空券を予約しようと見ていたら、最後の2席が空いており、呼ばれたような気持がして予約完了。成田空港に来てみると、就航初便であることがわかりました。この運を使って、沖縄離島の観光振興に役立ちたいと笑顔で話します。まさに、沖縄離島で観光バブルが沸騰しそうな勢いが感じられる実話です。

機内でカフェを楽しむ
珈琲を注文して、塩どらやきを食べてみました。甘さは控えめで、南国の潮の香りがするような上品な味です。3時間40分の飛行ののち、機体は運用規定ぎりぎりの追い風が吹く滑走路17へ着陸しました。みやこ下地島空港の景観は、海の碧さと飛行機への近さからこの17エンドで表現されることが多く、アイコンとなる場所です。歓迎の放水を受けて、初就航便のフライトは終わりました。

リゾート空港そのもの
みやこ下地島空港はハワイのコナをモデルとしたとされる、三菱地所が開発したリゾート空港。機体を後にして、到着口に向かう前に、緑の生い茂る中庭を通ります。こんなに爽やかな空港は見たことがありません。

ここが空港なのは管制塔でしかわかりませんzoom
ここが空港なのは管制塔でしかわかりません

出発に際しての施設の充実はこれからの就航便を見越したものと思われ、保安検査場を抜けた制限区域は「ここが空港?」とおどろくことになります。両側に人工池があり、奥にコーラルポートラウンジと呼ばれる休憩スペースが設けられています。爽やかな風が吹き抜ける構造になっているのも考え抜かれています。ランプエリアとの間や池の中にもフォトスポットがあり、出発前のひと時、リゾートでの想い出を胸に出発までの時間を有意義に過ごすことができます。

みやこ下地島空港で成田行き出発便を見送るスタッフの皆さんzoom
みやこ下地島空港で成田行き出発便を見送るスタッフの皆さん

折り返し便を迎えた新ターミナルビルでは、成田空港以上の盛大なセレモニーが行われます。準備が整い、みやこ下地島空港発成田空港行の初便が出発して行きました。風の向きは変わらず、機体は17とは逆の滑走路35を駆け上がって行きました。

協力:ジェットスター・ジャパン
https://www.jetstar.com/jp/ja/home

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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