旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2019年3月28日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

人生を楽しもう!~カナダ・ケベック州へ~ケベックシティ氷点下編 ①

冬の晴れ間にたなびくケベック州の旗zoom
冬の晴れ間にたなびくケベック州の旗

カナダ東部に行くなら紅葉の秋だと決め込んではいませんか?

でも、その魅力は四季折々。

2018年6月からは東京(成田)-モントリオール間にエア・カナダの直行便が就航。一年を通して多彩な魅力を体験しやすくなりました。夏期は毎日、冬期は週3便運航。ボーイング787-8型機で約12時間の快適なフライトです。

モントリオールを最大都市とするケベック州に行くと、「Joie de vivre(人生を楽しもう!)」という言葉があちこちで聞かれます。
 札幌より北に位置するケベックは、東京で桜が咲く4月もまだ冬の気配が残っています。特に2019年の冬、10年に一度という厳しい寒さに見舞われました。
 なんとマイナス20度!!フード付きのダウンコートや手袋の暖かさが心からうれしい。
でも、「Joie de vivre!」 ケべコア(ケベックの人たち)は、戸外に出て、こんな寒さだって楽しんでしまうのです。

 モントリオールから古都ケベックシティに足を延ばし、氷点下の2都市の魅力をお伝えしましょう。

セントローレンス川を旧市街からのぞむzoom
セントローレンス川を旧市街からのぞむ

~可愛すぎる古都ケベックシティ~

 旧市街がユネスコの世界遺産に登録されたロマンチックな城郭都市ケベックシティ。
北米でもっとも歴史ある町のひとつで、通りの表示はフランス語、歩いていてもフランス語が聞こえてきます。

ケベック州は英仏二か国語が公用語のカナダにあって、唯一フランス語が公用語という土地柄。
その理由は歴史と深くかかわっています。

まずは、簡単に歴史のおさらいから。

かつて先住民族との毛皮の交易により町は発展しましたzoom
かつて先住民族との毛皮の交易により町は発展しました

 カナダの地図を見ると、向かって右側、大西洋側の国土がグイっと大きくえぐれたような形になっています。
このえぐれた部分をセントローレンス湾というのですが、ヨーロッパから見ると、16世紀のカナダはまだ未開の土地でした。
 
 1534年、フランス国王フランソワ1世に派遣された探検家ジャック・カルティエがこのセントローレンス湾周辺を探検し、この地を「ヌーベルフランス」と名付け、フランス王による領有を宣言します。
 ここには先住民族が暮らしていましたが、その後、フランスは毛皮取引の占有権を手に入れ、カナダに植民地を建てます。ビーバーの毛皮は高級な山高帽を作るのに欠かせないものとして、ヨーロッパ貴族の間で大大人気。そのせいで、当時、ビーバーは絶滅寸前まで減ったと言われています。

ケベックシティの基礎を作ったシャンプランの像zoom
ケベックシティの基礎を作ったシャンプランの像

 植民地で起きるさまざまな問題の解決に取り組んだというシャンプラン。
後に「ヌーベル・フランスの父」と呼ばれるようになりました。

 毛皮の交易で町が発展し、入植者が増える一方で、キリスト教の布教が行われ、17世紀半ば、人口の4分の1は聖職者だったそうです。旧市街には、海を渡り、ケベックの信仰とヘルスケアシステムの担い手となった修道女たちが暮らした修道院の建物が、博物館兼ホテルとして開放されるなど、当時の様子を知ることもできます。(Monastère des Augustine https://monastere.ca/en)

当時はフランスだけでなくイギリスも北米の入植に力を入れており、フランスとイギリスが北米での覇権争いを続けていました。そんななか勃発したのが18世紀の「フレンチ・インディアン戦争(七年戦争)」。
ケベックは敗れ、講和条約で英領となりました。
しかし、フランス系住民のためにフランス民法やローマカトリックの存続が認められ、フランス色が残ることになります。

ケベックシティのランドマーク。ル・シャトー・フロントナックzoom
ケベックシティのランドマーク。ル・シャトー・フロントナック

そんなフランス愛にあふれるケベック州。
歴史を知ってからロマンチックなケベックシティの街並みを散歩したら、いっそう感慨深くなることでしょう。

 フランスの影響を存分に受けたグルメも存分に楽しみましょう。

 ホテルはセントローレンス川の流れが見える部屋がおすゝめです。
川を悠然と流れる流氷を眺めれば、幻想的な美しさに、寒さを忘れてただ見とれてしまうことでしょう。

取材協力:ケベック州観光局(https://www.quebecoriginal.com/en

フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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