旅の扉

  • 【連載コラム】旅行が大好きやか!
  • 2019年1月28日更新
亜細亜大学 経営学部 ホスピタリティ・マネジメント学科:小倉ゼミ生

オーロラ求めて北極圏!大学生アラスカひとり旅日記! 第二章「ポーテージ・アラスカ鉄道編」

ガードウッドの枯れ木。いよいよ旅の始まり。氷河を目指します!zoom
ガードウッドの枯れ木。いよいよ旅の始まり。氷河を目指します!
正午、マリオットホテルアンカレッジ一階旅行会社カウンター。前回必死にアンカレッジの街を駆け回って見つけた「氷河ツアー」、ついにその出発の時がやってきました。行先は一番最初に名前を聞いたポーテ―ジ氷河。この氷河はポーテージというアンカレッジから90分ほど行くと現れる小さな町にある氷河です。ワクワクしながらバスに乗りこむと、運転手が何やら冗談交じりで話し始めていますが、英語がわからない私はただ茫然と聞き流していました。

ひとつわかったのは、アメリカのバスツアーはガイドが添乗しておらず、運転手がマイクを顔につけて運転しながら話すのだということでした。そうこうしているとバスは走り出します。アラスカ最大の街であるアンカレッジ、しかし町の規模は小さくすぐに市街地を抜けて海が見えてきます。この海は「ターナゲン入江」と言って日本でいうリアス海岸よりさらに大きい北欧で有名なフィヨルドのような形の海で、潮の満ち引きが激しく、満ちてくるときに巨大な波を引き起こすことからサーフィンの名所と言われています。

こんな北の果てにもサーフィン文化が存在することに驚きながらも、絶景を楽しんでいると運転手が突然「This is beluga point.」と大きい声を出します。かろうじて聞き取れたベルーガという単語を持っていた「地球の歩き方」で調べるとまさかの「シロイルカ」。あの水族館で人気者のシロイルカが野生に、しかも大量に海を泳いでいるのが見えます。街を出て30分ほどしかたっていないのに野生のシロイルカが泳いでいる光景はまさに最後の辺境、バスの中で一人感動に包まれました。

だんだんと山が迫ってきて海がやせ細っていくとガードウッドという場所に到着します。ガードウッド周辺は枯れた木々が立ち並ぶ森が続き、湿原のような風景を見せてくれます。この木々は昔、ここで起こった巨大地震により地盤が沈下して森が埋まり、木が立ったまま枯れて生まれたものです。アラスカ南部は地震が起こりやすく、私の帰国後も大きな地震に見舞われて甚大な被害が起こりました。この地震により被災された方のご冥福をお祈りします。
ポーテージ氷河。アラスカに広がる氷河は絶景!zoom
ポーテージ氷河。アラスカに広がる氷河は絶景!
ガードウッドを抜けるとバスはここまで走っていたスワードハイウェイに別れを告げ、ポーテージに向かうポーテージ渓谷を進みます。すでにいくつもの氷河がお目見えしていることにテンションが上がりながら、バスを降りる準備をします。いよいよ待ちに待ったポーテージ氷河とのご対面です。

バスを降りると目の前にはポーテージ湖という氷河によって作り出された湖が広がっています。しかし、肝心の氷河が見当たりません。するとバスの運転手からガイドを引き継いだポーテージ湖の管理人らしき人が「Are you ready?」と言っています。目の前には船が止まっており、言っていることは分からないけれどおそらく船に乗り込めと言っているのだろうと推測します。

案の定呪文のような説明が終わるとみんな船へと乗り込みました。とりあえず私も言われるがまま船に乗り込みます。まわりがひときわうるさくなると同時に船も進みだしました。出港です。正面にたたずむ山から流れ出る滝の説明や、その向かいにある小さな氷河の説明を終えるとついに巨大な氷河が顔を出します。ポーテージ氷河です。駐車場からは山の陰になって見えなかった氷河は船に乗り込み進むと雄大な風景を見せてくれました。

氷河に近づいていくにつれ山から吹き下ろす冷たい風が強くなり、湖には崩れた氷河がぷかぷかと浮き出します。気温は5度前後、私たち日本人にとっては寒い気温でもアラスカの山間部では立派な夏終わりの気温。そんな気温の中でもこの巨大な氷の塊が氷のまま存在していることにやはり驚きます。雪国出身の私でもこんなに分厚い氷の壁は生まれて初めて見ます。私たちが訪れている間に氷河の大きな崩落は見られず、小さな崩落しか見られませんでしたが、そんな小さな崩落でもとてつもない爆音が鳴り、自然の偉大さを再認識します。

約1時間の氷河クルーズを終えると、次に向かうのはアラスカ野生動物保護センター(以下、AWCC)。AWCCは野性でけがをしてしまった動物などを保護している場所でオオカミやクマなど数多くの動物が見られます。AWCCで見学をするのですが、時差ぼけのおかげで寝てしまい、集合時間を完全に聞き逃してしまった私はバスを降ろされてから気が気ではありませんでした。

日本では見られない貴重なオオカミやジャコウウシなどの動物と同時に同じツアーの人を見失わないように人間を観察する始末。周りの人に集合時間を聞くも超早口で、さらに集合場所は降ろされた場所と別の場所だという事実を知らされますますパニック。
アンカレッジ湾の夕日。明日への思いを馳せた夕日!zoom
アンカレッジ湾の夕日。明日への思いを馳せた夕日!
完全に英語の聞き取れない自分の英語力に腹立たしくなりながらも私はあきらめて動物観察と人間観察を同時に行うことにしました。動物を見ること以上に人間を集中してみていたおかげでなんとか無事バスを見つけ、乗り込むことに成功。バス近くにあった売店でレモネードを買いバスの中で一人安堵に乾杯します。ツアーの全日程が終了し、バスはアンカレッジへと走り出しました。周りのツアー参加者も疲れたのか、寝ている人が多くなりバスにはエンジン音だけが響きます。1時間ほどすると再び街の喧騒が戻ってきてマリオットホテルに到着です。時刻は19時過ぎ、アラスカではちょうど夕方という雰囲気です。私は朝、訪れたオーシャンビューの公園へといきアラスカ湾に沈む夕日を眺めました。

この日はアラスカでやりたいことの一つ「氷河を見ること」を達成することができました。明日からは二つ目の目標である「地球上で一番美しいといわれるデナリ国立公園の紅葉を見ること」を達成するべくアンカレッジを離れ北上をします。この後の旅の無事と目的達成の成功を夕日に誓いホステルへと戻りました。

翌朝、6時。今日はアンカレッジから世界一の紅葉が見られるアラスカ中部のデナリ国立公園へと向かいます。デナリ国立公園まではアンカレッジのダウンタウンにあるアンカレッジ駅からデナリ国立公園駅までを8時間半程で結ぶ「デナリスター」という列車に乗るか、安価で速いバスに乗るかの二択があります。私は、鉄道旅が大好きなので迷わずデナリスターに乗ることを選びました。

昨日、氷河ツアーを探しながらちゃっかりとデナリスターの予約を駅でしていたので問題なく列車へと入ることができました。このデナリスターは日本の鉄道とは異なりとても車体が大きく速度も遅いです。日本だとバスより鉄道のほうが速くて高価ですが、ここアラスカでは鉄道はとても遅い乗り物で、列車内には食堂車や展望車などが設けられとても豪華な仕様になっています。それだけ値段も高くアンカレッジからデナリ国立公園までの380kmほど(日本だと東京駅から名古屋駅ほど)で17,000円程度です。アラスカでは急ぐ人、お金の厳しい人はバス、時間やお金に余裕のある大人(年配の人)は鉄道という考え方がポピュラーなようです。
アラスカ鉄道からの車窓。とても車窓とは思えないほどの絶景zoom
アラスカ鉄道からの車窓。とても車窓とは思えないほどの絶景
学生の私も今日は大人の仲間入りで鉄道に乗り込みます。一応座席は決められていますが、空いているおかげもあり各々が座席を自由に動きます。私も展望車へと乗り込み景色を楽しみます。昨日はアンカレッジから南に進み海を走りましたが、今日は北に進み山を眺めます。しばらくすると列車はタルキートナという街に到着します。

タルキートナは北米大陸最高峰の山「デナリ」の麓の街で、デナリ登頂を目指す人のほとんどがここを拠点にします。この日はあいにくの天気でデナリを眺めることはできませんでしたが、この後の楽しみとして神様が取っておいてくれたと前向きに考えることにしました。景色をボーっと眺めているとおなかの虫が鳴きます。この日は朝ご飯を買う暇がなかったため昨日買っていたリンゴを丸かじりしただけだったので食堂車の予約をしてランチにすることにしました。

食堂車はいま日本ではクルーズトレインと言われる何十万円もする超高級列車にしか存在せず、通常の列車では廃止されてしまったもので、私も高校生の頃に一度しか乗ったことのなかったのでテンションが上がります。席に案内されクルーがやってくるとメニューが渡されます。食事のメニューはシンプルで三つほどしかありませんでした。私はアラスカ名物のトナカイ肉を使ったペンネボロネーゼをいただくことにしました。アラスカではトナカイをカリブーと呼んでいますが、料理にアレンジをするとカリブーという名前はレインディアと名前を変えるようで私の注文したボロネーゼもレインディアのボロネーゼという名前でした。

しばらくして私のテーブルを担当しているクルーの人が料理を運んできます。いよいよ人生初めてのトナカイもといレインディアをいただきます。その味はやはりジビエというだけあり若干のクセがあります。日本でも香辛料として使われるナツメグを入れた豚肉のハンバーグのような味で独特の風味がします。お肉は柔らかくすぐに口の中で崩れ落ちます。私自身美食家というわけではないですが、あのトナカイをここまでおいしく料理するのは相当腕のあるコックのいる食堂車だということは分かりました。
レインディアのペンネボロネーゼ。アラスカならではのジビエ料理トナカイ!zoom
レインディアのペンネボロネーゼ。アラスカならではのジビエ料理トナカイ!
レインディアをおいしくいただき、ランチを終えると列車はとうとうデナリ国立公園へと到着します。アンカレッジの駅とは異なりホームが存在しないので階段で列車を降ります。預けていた手荷物を受け取ると、今夜から宿泊するデナリマウンテンホステルの迎えのバスが来ているウィルダネスアクセスセンターへと向かいます。ここはデナリ観光の主体となるバスの全てが出発するバスセンターで私も翌日のバスを予約してホステルの方と合流をして宿へと向かいました。

ホステルはウィルダネスアクセスセンターから20分ほど車を飛ばしたところにあり、ひっそりとした森の中の清らかな川のそばに建てられたログハウスコテージのような作りでいかにもアラスカらしい宿です。

明日からは「地球上で一番美しいといわれるデナリ国立公園の紅葉を見ること。」という第二の目的を達成するため、ここデナリ国立公園に数日滞在します。

ここから旅は急展開を迎えることになります。はたまたそれは良い出来事なのか、それとも悪い出来事なのか、この時の私は知る由もありません。斯くしてこの物語は第三章に続きます。

小倉ゼミ一期生 Yuuri
亜細亜大学 経営学部 ホスピタリティ・マネジメント学科:小倉ゼミ生
亜細亜大学 経営学部 ホスピタリティ・マネジメント学科 小倉通孝ゼミ生による旅のコラム。ゼミの授業を通して訪れた国内外の観光地をフレッシュな学生の視点でレポートします。

亜細亜大学 経営学部 ホスピタリティ・マネジメント学科
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