旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2018年5月1日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

シドニー国際空港内の無料博物館は「カンタス・ヘリテージ・コレクション」

博物館は駐機場に面しています この眺めも飽きないzoom
博物館は駐機場に面しています この眺めも飽きない

国内線ターミナルビル3へ
航空ファンだけでなくシドニー国際空港を利用する多くの人に見て貰いたい場所があります。「カンタス・ヘリテージ・コレクション」は、世界に二番目に古い創業と言われるカンタス航空の歴史を紹介している企業博物館です。場所はシドニー国際空港国内線ターミナルビル3の制限区域内ですが、国際線利用者でも大丈夫。出発前だとこの国内線ターミナルビルの国際線接続カウンターでチェックインができます。保安検査を済ませて進むとゲート13番付近は円形建物になっており、その一角に赤い壁が現れて、階段で中二階に案内されるようになっています。

いざ見学へ
出発ゲートの喧噪と隔絶された、カンパニーカラーの赤を多用しながらも落ち着いた雰囲気。案内カウンターの横にはボーイング787-9のモデルが展示されています。奥は駐機場が見渡せ、航空機の離発着する様子が目の前に展開します。1千㎡の規模で展示ホールが二つ。過去に就航していた機体とともに歴史を紹介する場所。もう一か所は客室乗務員の制服を年代別に展示し、振り返るというもの。

入口付近はカウンターがあり、奥は空港の駐機場が眺められますzoom
入口付近はカウンターがあり、奥は空港の駐機場が眺められます

歴史を語る展示
カンタス航空の歴史は第一次世界大戦後の1920年に始まります。2名のパイロットが興したもので、エアタクシーサービスが起源です。アブロ504KとBE2eという複葉機が最初の機体。90馬力のV8空冷エンジンも展示されています。南半球の航空会社は、北半球の主要都市に向かうのにどうしても長距離国際線を運航せざるを得ない。機体メーカーにも要望し、性能の向上を求めて行った経緯があります。そんな苦労が、カンタス航空を強くしました。長距離便の多い同社の整備陣の機体メンテナンス技術が向上した理由です。そんなカンタスの歴史を大きなタペストリーにして展示しています。初期の頃の就航路線や制服の様子も描かれ、優れた絵巻物です。

歴史タペストリーを説明する キュレーターのDavidさんzoom
歴史タペストリーを説明する キュレーターのDavidさん

最初のジェット機
最初に導入したジェット機として日本にも飛来していたボーイング707は、ターボファンエンジンを装備し、V-Jetと呼ばれました。当時の機内サービスで使われた食器や、航空バッグ。配布されたトランプ、靴磨き、歯ブラシなど興味深いものが多く展示されています。

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ジェットエイジが始まった頃のモデルや機用品など

ジャンボジェット
カンタス航空では、輸送力の増大で1967年に4機のジャンボジェットを発注し、1971年に導入しました。1974年には、台風被害を受けた人々を救出する為に、このジャンボジェットが使われ673人の搭乗記録を作ったものです。1989年には、長距離飛行というもうひとつの世界記録を樹立。ロンドンからシドニーまでボーイング747-400型初号機VH-OJAで18,000キロ余りを20時間9分で飛行しています。カンタス航空にとって、大量輸送と長距離飛行の両方を兼ね備える機体として、今でも活躍しています。このボーイング747-400シリーズには、創立の地であるクイーンズランド州ロングリーチに敬意を表し「Longreach」と名付けられています。

ジャンボジェットのコックピット窓とタイヤzoom
ジャンボジェットのコックピット窓とタイヤ

制服コレクション
制服は、1948年から使われたものを年代別に展示しており、現在までで9代の変遷があります。当初のものは、ロッキードC121スーパーコンステレーションに乗務していた時のもの。夏服は白衣で看護婦のよう。
1974年からの制服は、原色が使われていてジャンボジェットに乗務していた時。大量輸送時代が始まって、明るい気持ちを持って海外に出掛けていた世相を反映して興味深いものがあります。長時間フライトでも機能的に業務出来るように作られているという視点で見ると興味深いものがあります。

見学した日は、まさにカンタス航空最長路線パース⇔ロンドン線開設の日。また一つこのコレクションに歴史が加わりました。

9代にわたる制服コレクションを展示するセクションzoom
9代にわたる制服コレクションを展示するセクション

国際線へ移動し搭乗機へ
関西空港行きの搭乗時間が迫る中、国際線ターミナルビル1へ移動です。国内線ターミナルビルのゲート15にはバスサービス案内があります。地上階へ降りるとそこは、駐機場。出発準備に忙しい機体が多く見えます。バスのガラス越しですが、10分ほどの移動時間は機体の様子を興味深く見ることができました。こちらは動く博物館です。

フランクフルト空港などでは有償で駐機場をバスで見学するツアーを販売しています。シドニー空港でのターミナル間移動バスはまさにそれと同じ。日本に戻る場合でも普通に国際線で出発してしまわずに、国内線ターミナルビルでチェックインを試みて博物館と移動バスの二つのイベントを体験してみましょう。内容の濃い観光スポットと言える場所です。

次に訪れるといい場所は、カンタス・ファウンダーズ・ミュージアム。創業の地となるクイーンズランド州ロングリーチにあります。また、オーストラリアに行く目的ができました。

協力:カンタス航空 ⇒ https://www.qantas.com/jp/ja.html

カンタス・ヘリテージ・コレクション ⇒ 
https://www.qantas.com/travel/airlines/heritage-collection/jp/ja

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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