旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2017年11月27日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

わくわくが止まらない! 初めてのドバイ(4)オールド・ドバイへタイムトリップ

ドバイの歴史的建造物と街並みを保存するアル・ファヒディ歴史地区。zoom
ドバイの歴史的建造物と街並みを保存するアル・ファヒディ歴史地区。
近代的な高層ビルが立ち並ぶドバイですが、昔ながらの街並みとアラブの文化を感じられるエリアにもぜひ足を運んでみたいもの。ドバイの旅コラム第4回は、『Al Fahidi Historical District(アル・ファヒディ歴史地区)』と、かつて交易で栄えた時代の風情を感じられるエリアのご紹介です。

アル・ファヒディ歴史地区でアラブの文化を体験

歴史的建造物を保護する『アル・ファヒディ歴史地区』で訪ねたのが『シェイク・モハメッド文化センター(SMCCU)』です。ここはツーリスト向けにアラブやイスラムの文化をわかりやすく紹介し体験できる施設。昔の民家を保存した建物内でアラブ伝統料理を食べながら生活習慣や衣装についての文化を学ぶツアーが人気と聞き、出かけて行きました。
アラブ料理のランチタイム。靴を脱いで座るため、ゆったりした長めのスカートか、パンツスタイルで。zoom
アラブ料理のランチタイム。靴を脱いで座るため、ゆったりした長めのスカートか、パンツスタイルで。
参加したのはランチ付きのツアー。まず『ガッファ』と呼ばれるアラビアン・コーヒーと、デーツ(ナツメヤシのお菓子)でもてなしを受けます。この時、イスラムの国では小さなお茶碗のようなコーヒーカップを右手で受け取るのがマナー。ツーリストの場合、厳密なものではありませんが、覚えておくといいでしょう。

車座になって味わうアラブ料理のランチメニューは、野菜や鶏肉をカレー風味で味付けしたスパイス煮と、羊肉を串焼きにしたケバブが中心。酸味、辛みがはっきりしていて、とてもヘルシーな内容です。たこ焼き風に見えるのは、モチモチとした揚げドーナツのようなお菓子で、デーツのシロップをかけて食べるデザートです。

民族衣装に興味津々。コスプレタイムで大盛り上がり!

初めての中東の地で気になるのは、なんといってもイスラム特有の民族衣装。男性が着用するのは『ディシュダーシャ(またはカンドゥーラ)』、女性のものは『アバヤ』と呼ばれます。
民族衣装の『アバヤ』を体験。黒、青、柄物などがあるなか、いちばん人気はやはり黒。zoom
民族衣装の『アバヤ』を体験。黒、青、柄物などがあるなか、いちばん人気はやはり黒。
男性が頭にのせるターバン状の布は『グトラ』、それを止める黒い輪っかは『アガル』と呼び、ラクダを繋いでおく時に使うものと同じヤギの毛でできています。これは、遊牧民時代の名残りのことでした。また、襟元に垂らした紐状の『ダルブーシュ』は、女性から男性に贈ることもあり、長ければ長いほど愛情が深いことを表すといいます。

イスラム教で家族以外の男性に肌や髪の毛を見せることを禁じられている女性の場合、アバヤを着用し、髪の毛を隠すため『シェイラ』というカバーをします。実際の民族衣装を着用できる「コスプレタイム」では、初めて体験するアラビア風衣装にみんな大興奮! 食事のときには遠慮気味だった各国からの参加者たちも、国境を越えて記念写真を撮り合ったりして楽しんできました。日本でも浅草や京都で着物を着てはしゃいでいる海外からのツーリストを見かけますが、その気持ちがよくわかりますね。
●シェイク・モハメッド文化センター(SMCCU)  ※ツアーは要予約
www.cultures.ae


古い建物のなかに、おしゃれカフェやブティックホテルを発見

アル・ファヒディ歴史地区は、舗装路地が昔の建物をリノベートしたカフェやショップ、ブティックホテル街になっています。迷路のようになっているのが面白く、ホテルの一角がギャラリーなっていたり、小さな入口の奥に中庭を囲むゆったりしたスペースがあったり。昼間の暑さを避けて休憩を取る人が多いためか、カフェがたくさんあることも特徴です。
建物のなかにはブティックホテルやカフェ、ギャラリーも。zoom
建物のなかにはブティックホテルやカフェ、ギャラリーも。
オールド・ドバイを体験するために、ぜひ乗ってみたいのが木製の渡し船のタクシー『Abra(アブラ)』です。歴史地区があるバール・ドバイと、スーク(市場)がある対岸を行き来し、現在でも地元の人の重要な交通手段のひとつとなっています。約20人乗りの船に時刻表はなく、乗客が集まると出発。料金は片道1ディルハム(約30円)、所要10分ほどです。朝5時~深夜までと、24時間運航する2つのルートがあり、手軽なナイトクルーズにもオススメ。1時間100ディルハム(約3000円)でチャーターもできます。
※1AED(ディルハム)=約30.5円 2017年11月現在
●Dubai Abra Information(アブラ・インフォメーション)
http://www.dubai-abra.com/
アラブの伝統船が今も行き来するドバイ・クリークは、渡し船のタクシー『アブラ』で渡れます。zoom
アラブの伝統船が今も行き来するドバイ・クリークは、渡し船のタクシー『アブラ』で渡れます。
活気あふれるドバイのスーク(市場)を歩く

アブラで渡った対岸にあるのが、通りの両側に小さな店舗がぎっしり立ち並ぶ『Souq(スーク)』と呼ばれる市場街。そのなかで観光名所にもなっている三大スークが、スパイス、ゴールド、テキスタイル(布地)の市場です。
スパイス・スークではサフランやセージ、ローズマリー、デーツなどが安く手に入り、金製品を扱うゴールド・スークは、まぶしいほどの金色に目も眩むほど。眺めるだけでも、一見の価値があります。日本人とわかると時々、「オカチマチ、オカチマチ!」と声を掛けられることがあります。
「日本のアメ横のことかしら……」とガイドさんに尋ねたら、ドバイでは「いいものがある」「品質がいい」という意味なのだとか。思いがけず耳にした日本語には、意外な意味が隠されていました。アル・ファヒディ歴史地区と、スーク街がある対岸はアブラで行き来すれば至近距離。1日かけてのんびりとオールド・ドバイの面影を訪ねてみてはいかがでしょうか。
通りにスパイスやゴールドの市場が並び、混とんとした雰囲気を味わえるスーク(市場)。zoom
通りにスパイスやゴールドの市場が並び、混とんとした雰囲気を味わえるスーク(市場)。
ドバイの街はとても清潔で、トイレでも不快な思いをすることはほとんどありませんでした。治安の面でも「東京より安全」といわれています。ただし、スークの人混みではまれにスリが出没することもあるとか。
また、イスラムの国では金・土曜日が日本や欧米の土・日曜日にあたります。官庁や銀行、一部の個人商店などはお休みになるので注意しましょう。

【取材協力】
●ドバイ政府観光・商務局
https://www.visitdubai.com/ja
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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