旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2018年5月8日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

ここを訪れないと死ねないと言われる美術館 マウリッツハイス

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マウリッツハイス美術館の全景

日本では絶大な人気を誇るオランダの画家「フェルメール」
生涯に30数点の作品しか残さなかったので、どれも貴重で人気のある絵画です。日本では、特別展が開催されて駆けつけても絵の前に留まることの許されない鑑賞を強いられるフェルメールの絵。

本場の環境の中で見ることが夢と言うファンは多いようです。画家の育った環境の中に身を置いて鑑賞に浸る、贅沢な経験です。その夢の場所が「マウリッツハイス王立美術館」。アムステルダム郊外のデンハーグにあります。スキポール空港から、市街とは逆の方向に鉄道で約30分。

空港で、乗車券を買う時に注意事項を伝えられました。どうやら、直通の鉄道が故障で経由便になると言うのです。ロッテルダムを経由してデンハーグに向かうチケットを渡してくれました。欧州一の港湾を持つここの駅を見て行くのも悪くないと受け取ります。

地図を見ていると、フェルメールが残した現存する風景画二枚のうちの一枚「デルフトの眺望」の舞台となるデルフト駅も通ります。車内から街の様子が解かるかも知れません。

デンハーグ・セントラル駅は、オランダ第三の規模の街の駅とは思えない静かなたたずまいでした。世界的な美術館のある場所なので、大きな看板でもあろうかと想像したのですが、予測は外れて何も表示はありません。

駅前から徒歩15分程度の場所ですが、迷ってしまいました。正面玄関に着きましたが、できれば美術館裏手の堀のある方向からアクセスしたほうが、美しい建物を見ることができて感動も大きいと思います。

堀の角に建つのが美術館 周囲の風景に馴染んでいますzoom
堀の角に建つのが美術館 周囲の風景に馴染んでいます

2年の歳月を掛けて改修。2014年に再オープンし、重厚感が増したと言います。階下で受付を済ませ、はやる気持ちを抑えつつ階段をゆっくり昇ります。階段から展示室に至る天井にも絵画があり、心が浮き立ちます。
絵が中心なのは当然の事として、階段の手すりや、窓にかかるカーテンなども絵を引き立たせる小道具として、色彩を合わせて主張せず佇んでおり、その落ち着きの空間が好ましく思います。

ここでは、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」「デルフトの眺望」という代表作が写真も撮れて少人数の観客の中で鑑賞できます。

「真珠の耳飾りの少女」の作品には木の囲いが設置されているものの、他の作品にはそんな無粋なものはありません。ここで一番彼女が輝く展示が施されているという場所。離れたソファーに腰掛けて遠目に見ても、近付いてじっくり眺めるも自由。 誰にも文句は言われません。

階段を昇ると展示室前にも多くの作品が並びますzoom
階段を昇ると展示室前にも多くの作品が並びます

お堀側の展示室の格子窓から街の様子が映し出されて、この風景があたかも一つの展示物のように心を和ませてくれます。美術館になる前の個人邸宅であった頃は何と贅沢な家なのだろうと思いを馳せます。

窓枠の中の景色もひとつの作品のようzoom
窓枠の中の景色もひとつの作品のよう

マウリッツハイスを出てデンハーグの街を散策してみます。城壁の中の石畳を進んで、裏のお堀を目指してみました。多くのベンチが木枯らしで埋まるその風景の中へ背中を丸めて進みます。お堀端の美術館は、周囲と違和感無く存在しています。

空を見上げれば、飛行機雲が四方八方へ広がっていて、飛行機がどこへ行くのか想像がふくらみます。いい作品を観た満足感で、足も軽く進みます。

周辺の街並みも落ち着く風景ですzoom
周辺の街並みも落ち着く風景です

公園が終わるあたりにトラムが走っており、その先に繁華街らしき場所の広がっているのが見えました。夕闇迫る街並みに、装飾ネオンが寂しく光ります。

身体を暖めようとカフェを探してみました。せっかくなのでいい店に入りたいと、色々探してみました。寒いのにテラスで寛ぐ人のいる店なら大丈夫だろうと、「JAMMY BENNET」に入ります。外からはわかりませんでしたが、店内は広く、お客様でいっぱいです。

上手い具合に入り口近くに空き席が出来て、人心地付きました。
店内の装飾が重厚で、窓は蒸気で曇っているのではっきりとは見えませんが、街のネオンがオレンジ色にまたたく様子が見て取れます。

ふらっと入った店が地元の人でいっぱいで、妙に落ち着いて過ごし易いといい気分です。

カフェとその周辺の街並みzoom
カフェとその周辺の街並み

カプチーノで温まりながら、改めて名画の余韻に浸ってみました。
大規模改修を終えて再展示を始めたマウリッツハイス美術館。
17世紀建築の建物が1822年に美術館としてオープンし196年の気の遠くなる時間を絵と共に過ごしてきました。

4年後の200周年でどういった催しが開催されるのか再訪するのが今から楽しみです。

マウリッツハイス美術館

 https://www.mauritshuis.nl/nl-nl/bezoekinformatie-japans/

 

オランダ政府観光局

⇒ https://www.holland.com/jp/tourism.htm


 

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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