星の王子様の作者サン=テグジュペリの本、『人間の土地』のことをずっと考えています。夏の思い出ががまだ日に灼けた肌に残るうちにどうか目に映る光景が消えませんようにと。
作者は、1962年にフランス航空会社のテストパイロットとして、のちに郵便機のパイロットとしてToulousーSaharaとを飛行していました。不時着した砂漠での経験をもとに、サハラ砂漠の奴隷について考える箇所があります。老いた奴隷はこれ以上働くことができなくなると主の元を去ります。カラカラに乾いて力尽き砂漠の真ん中で死んでいくのを待つことが当時の奴隷の宿命でした。子供達がまだ生きているかどうか面白がて見に行くという、ではー死んでいく奴隷の脳裏に何が浮かぶのかという問いがかけられています。
きみが、きみのバラの花をとても大切におもっているのは、きみがその花のために時間を無駄にしたからなんだよ、心にしんと響く一節は星の王子様より。人間は誰か大切な人と共有することができる思い出があることと、人や社会に自分の役割の責任を見出すことで生きている意味を見出すのではないでしょうか。でも仕事で何かを成し遂げたことよりもきっと、その人の人生が短くても長くても、宝物の記憶を共有する大切な人と築いた時間ほど大切なものはないように改めて思う夏の旅でした。
Nothing can match the treasure of common memories, of trials endured together, of quarrels and reconciliations and generous emotions. It is idle, having planted an acorn in the morning, to expect that afternoon to sit in the shade of the oak.
日本ではもうすぐお盆休みで、京都にいた時には15日の五山の送り火が終わるともう夏も終わりねと言ったものです。なぜかお盆を過ぎるとクラゲが出るから海に入れないとか、私たちの国には趣深い習慣があるものです。Amsterdamに帰ってきて、シェフの友人宅でお酒と冷しゃぶ&深川めしで夏を味わいました。デザートにガトーショコラとコーヒーを淹れてくれる友人は、残暑を一緒に過ごす口福なおともだち。そして今年も楽しみにしていた星空の下で見る映画Pluk de Nacht。ニュースになるほど寒かった夜、もうすぐ帰国してしまう友人と、間に合って仕事の後に来てくれた彼と毛布にくるまって見た映画は、Fukushima mon amourという、桃井かおりさん演じる芸妓の女性とドイツ人の女性が福島の震災地で交流する映画です。もちろん福島の悲しみを背負いながら、でも笑ってしまう日本の女性の礼儀作法のこと。冷えた夜空の下に映し出された白黒の映像を3人で見ていました。日本特有の、幽霊が人を違う世界によぶ、という考え方や塩を盛る習慣。ああそうだったな、お盆の季節ってと思うのでした。今年死んでしまった彼の犬が無事にうちに帰ってこられますように。それから、なかなかお墓まいりに行かれないわたしのぶんもどうぞよろしく弟よ、です。旅に出る前に買ったリュックサック楽しみすぎてでもおしゃれでいたいとこだわって、また旅の後にお世話になったエキストラ効く虫刺されのお薬の写真は夏の思い出の一枚です。