旅の扉
- 【連載コラム】地球に優しい旅しよう!
- 2015年12月1日更新
- 自然と動物好きなトラベルジャーナリストの旅コラム
travel journalist:平野 美紀
コーヒー党なら見逃せない!本場バリ島で一服。魅惑のルアック・コーヒー
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- 本物のルアックが寝そべるルアック・コーヒー専門店。(タナロットのコーヒー・ショップ)
- そのコーヒーは、独特の薫りがあり、生産量が少なく、希少価値が高いため、長い間 “幻のコーヒー” と呼ばれてきました。
日本のとあるホテルでは、1杯5千円以上!という、超高級コーヒー「ルアック・コーヒー」。
その生まれ故郷は、インドネシア。現地では、「コピ・ルアック」と呼ばれています。
※「コピ」は、インドネシア語で「コーヒー」のこと。
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- 薫り高いコーヒーはハンドドリップで。(ウブドのコーヒー・ショップ)
- ■コーヒー豆は隠れたバリの名産品
インドネシアは、オランダ植民地時代にコーヒーのプランテーションが盛んに行われてきたことから、アジア圏有数のコーヒー産地となっています。
近年では、バリ島の山岳地帯でも、冷涼な気候と火山灰土壌を活かしたコーヒー豆の生産が盛んになってきており、「ルアック・コーヒー」を生産する農園も増えています(注)。
その場でルアック・コーヒーを飲ませてくれるカフェもでき、日本では1杯数千円もするという高級コーヒーが、たったの数百円で飲めちゃうのです!
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- 世界一高級なコーヒー「ルアック・コーヒー Kopi Luwak」
- ■糞からコーヒー?苦肉の策が生みだした究極のコーヒー
オランダ植民地時代、コーヒー生産を強いられた現地の農家の人々は、植民地政府の役人から生産したコーヒー豆を自分達で利用することや飲むことを禁止されていました。
しかし、なんとかしてコーヒーを飲みたいと考えた農家の人々は、思わぬところからコーヒー豆の入手に成功したのです!
それはなんと、ルアック(ジャコウネコ)という野生動物の糞!!
コーヒーの実を好んで食べるルアックは、コーヒーの実の果肉部分だけを消化し、種は未消化のまま、糞として排出します。
この種こそが、コーヒー豆となる部分!
このことに気づいた農家の人々は、ルアックの糞を集め、コーヒー豆だけをとりだして、役人に隠れてこっそり飲んでいたのだそうです。
このことを知ったオランダ植民地政府の役人が、試しにルアック・コーヒーを飲んでみたところ、通常のコーヒーにはない独特の薫りにたちまち魅了され、世界へと知れ渡ることとなりました。
ルアック・コーヒーは、植民地時代の厳しい規制をかいくぐった農家の人々の苦肉の策が生み出した、まさに“幻のコーヒー”だったのです。
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- コーヒーの実が大好きなルアック=ジャコウネコ
- ■映画の中にも登場する、薫り高いルアック・コーヒー
ほのぼのとした作風で人気となった映画「かもめ食堂」では、主人公がコーヒーを入れる時のおまじないとして「コピ・ルアック」が登場します。
また、映画「最高の人生の見つけ方」でも、物語の重要なキーワード“世界最高のコーヒー”として登場。この2本の映画を観て、ルアック・コーヒーを知ったという人も多いのではないでしょうか?
幻のコーヒー”と呼ばれ、映画の中で使われていたように、どこか不思議で謎めいたところもこのルアック・コーヒーの魅力のひとつになっています。
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- 店先で寝ていたルアックがいきなり起き上がった!
- また、実際に呑んでみると、味わい深いというよりは、思ったよりもスッキリした飲み口で、妙な酸味や苦みがありません。しかし、カップを口に運ぶときにふわんと鼻に届く薫りがなんともいえず良いのです。
普通のコーヒーとは明らかに違う香しさ。
その秘密は、ルアックの体内分泌物にありました。
ルアックは、日本ではジャコウネコと呼ばれますが、この名前は、香料の「麝香(じゃこう)」=香水としてもお馴染みの「ムスク」に由来しており、ルアックの分泌物も「霊猫香」として香料として使われています。
その香りが糞として排出されるコーヒー豆に移るために、あの独特の薫りが生まれるのだそうです。
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- 最初はホットで、何もいれずにストレートで飲むのがおすすめ。
- ■バリ島で気軽に飲める、おすすめコーヒー・ショップ
バリ島の観光地で、ルアック・コーヒーが飲めるおすすめコーヒー・ショップ2ヶ所をご紹介します。
・ウブドの市場2階にあるコーヒー・ショップ Kopi Coffee
・夕陽名所タナロット寺院参道脇のコーヒー・ショップ Bali Luwak Coffee
どちらも(現在のレートで)1杯300円以下と、超お手頃!
また、ルアック・コーヒーを飲むなら、普段ミルクや砂糖を入れている人もぜひストレートで。ミルクなどを入れてしまうと、せっかくの薫りが半減してしまいます。
一口飲んだら、その香しさに魅了されてしまうこと間違いなしの「ルアック・コーヒー」。
飲んでみたいけど、あんまり高いのは…とためらっている人は、わずか数百円で気軽に飲めるバリ島で試してみるのがおすすめです♪
(注)近年、ルアック・コーヒーの希少価値が高まり、需要が増えているため、フィリピンなどでもルアック・コーヒーを生産しており、ルアックを狭い檻に閉じ込めて生産する悪質な業者が増加。こうした行為は動物虐待に繋がることから、動物愛護団体から反対する声が挙がっているという現実もあります。こうしたことも踏まえ、きちんとした生産者のルアック・コーヒを飲みたいもの。ご紹介した2店はどちらも大丈夫です。