世界でトップスリーに入るエアラインの本拠地はどうなっているのか気になりませんか。
航空会社の規模の指針で有償旅客キロの世界3位まではアメリカのエアラインで占められています。
その一角を成し、日本への乗り入れ便数が3社の中で一番多いデルタ航空の本拠地はハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港にあります。
この空港の北側にデルタ航空はワールド・ヘッドクオーターと呼ばれる本社機能を有しており、敷地内にはエアラインの展示施設としては世界最大規模を誇るデルタ・フライト・ミュージアムがあります。本社や整備工場の一角に展示施設を設けているエアラインは多くありますが、入場料(12.5ドル)を払ってでも見たくなる独立した施設はそうありません。
今回の社会科見学は、世界一の規模がごろごろしているこの施設を巡ります。
ミュージアム入り口脇の屋外には、ボーイング757-232型機とダグラスDC-9-51型機の実機が来場者を迎えてくれます。敷地が広いので、将来展示機がもっと増える可能性があります。
広い駐車場を越えて建物に向かうとボーイング757の前輪が三脚あって目に付きます。脚を柱に見立てて屋根を支える構図は、発想が柔軟でいいですね。更に、前庭には翼とエンジンを付けたBMWミニが駐車しています。翼が小さく作られていますので、その愛らしさは抜群です。この二つの展示物だけでミュージアムへの期待感が高まる工夫がされています。
外観から建物が二棟であることが解るのですが、それぞれプロペラ機時代とジェット機時代に分けて展示しています。
入場後の最初に目に入るのは、ダグラスDC-3です。デルタの初期時代1940年代に活躍した機体です。この場所には、デルタ航空黎初期の歴史が綴られていて、国際線の航空旅行が始まった頃の優雅な旅が記録されています。
ジェット機時代に入るには、タイムトンネルを通って行きます。
トンネルの奥には、ジェットエンジンのカウリングがデザインされており、時代の流れを視覚で見せてくれます。
ジェット時代に入ると、まずはボーイング767-232号機が機首を手前に向けて展示されています。 ちょうど、格納庫に入って来たというイメージです。機首には、金文字で誇らしげに「The Spilit of DELTA」と描かれています。1982年に経営難となった会社を救おうと立ち上がった従業員とOBの募金で購入されたデルタ航空を象徴する機体です。2階からボーディングブリッジを使って搭乗する形で機内に誘導されます。
コックピットもそのままに、機内前方はファーストクラスと続くエコノミークラスが3列ずつ残され、実際に座ってみると往時の旅行を体感できます。
特にファーストクラスのものは、クッションの柔らかさが感じられます。
続く機内後部にかけては、同社の歴代客室乗務員の制服とともに模型や写真を配して視覚的に上手く見せています。
その他、ミュージアムの中にはトライスター機の胴体半分を会議室として設置したり、コンベア880型機のコックピットを展示したりと、同社のエポックメイキングとなる機材への愛着が解ります。
ミュージアム内施設の利用料金としては破格の値段となる1時間425ドルのフライトシミュレーターですが、実際にボーイング737-200型パイロットの訓練に使われていたフルモーション付きのものですので、体験する価値は高いと思います。
この施設は、博物館として利用されるだけではなく、各種イベント用に貸し出されており、最大1200人までの結婚式、披露宴や各種集会などホテルの宴会場のような利用もあるようです。このあたりは、生きた博物館の使われ方で、工夫されています。
今回の訪問目的も、そのイベントの中の一つで、エアライナーズ・インターナショナル2015というエアライン・コンベンションへの参加でした。
ボーイング767の機体を取り巻くように設置された200以上ものテーブルに、世界中から趣味を同じくする人々がSELL、BUY、TRADEの航空グッズを求めて集います。
このミュージアムの中に深いライバル関係にあるユナイテッド航空もOBを派遣してテーブルを出していたのを見るのは呉越同舟でいいものです。
多くのデルタロゴの前に、UAの過去のタームテーブルを展示するミスマッチが、企業の遊び心と余裕を感じます。サウスウェスト航空に吸収されましたが、
エアトランもアトランタを拠点としていました。同社OB社員も、パーカーや、帽子、文具等のグッズを出品しています。
競合会社も全て受け入れる、度量の大きさを見せて貰いました。
本社地区は空港にあるので多くの車輌が走っていますが、その車体にスローガンが描かれています。
デルタ航空は1929年の創業時からスローガンを設けており、現在のものは22代目で「KEEP CLIMBING=上昇し続けよう」です。本社入り口前で見たトレーラーの車体にも大きく描かれています。
「燃料を大事にする文化」や、「デルタはアトランタの会社です」といったフレーズを見掛けました。
社会科見学第二弾は、ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港の内部に入って行きます。
この空港は、旅客数で世界一を記録しており、2014年データで9600万人以上が利用しています。滑走路は、平行に5本もあります。
面積は1、907ヘクタールで、日本一となる羽田空港の1.25倍の規模です。面積では、思ったほど大きくはないです。
ターミナルビルは国際と国内の二箇所です。その二つの建物を挟むように駐機場の機能を持つコンコースが7つも設けられていて、それぞれ独立した島のようになっています。その距離の故に、移動は地下を走るピープル・ムーバーが担っています。国際と一つのコンコースは同じ棟ですので、一見するとターミナルビルが8つもある空港のようにも見えてしまいます。まさに航空大国アメリカを象徴する規模を誇っています。
空港管理者のアトランタ市の協力で、ランプツアーに参加しました。
空港南側の貨物地区から見学用に用意されたバスが場内の制限区域に入ります。普段、関係者以外決して立ち入る事の出来ない場所です。
空港監視レーダーの近くで、バスを下車して撮影が出来ました。
メインの管制塔以外にも、複数のコンコースにグランドコントロールと呼ばれる小さな管制塔も見えます。
空港機能としては閑散なはずの平日午後の時間でありながら平行滑走路から同時に二機が離着陸する場面を何度も目にする事ができました。世界一の空港の全体を俯瞰するように見下ろす光景には感動します
加えて、航空機を地上の目線で見る機会はなかなかありませんので、貴重な経験でした。グランド・ハンドリングと呼ばれる航空機廻りの仕事にも女性の進出が進んでいます。ボーイング757の出発に際し、航空機を押すトーイングカーの運転と、航空機を繋ぐトーバーの脱着に女性ペアが活躍する様子を見て、頼もしさを感じました。女性のみで航空機を送り出す光景は日本ではなかなかお目にかかりません。
デルタ航空の一施設と空港を見ただけですが、その限りある中で得られるのは、大規模なことが鈍重になっていない感じを受けたことです。
大き過ぎる空港ですが、旅客の動線は国内・国際の別のみで、その後各コンコースに誘導されるすっきりしたものですし、デルタ航空も大会社ながらファミリーとも呼べるような愛されるエアライン作りができているという事です。
ミュージアムの展示や、スローガンが徹底されている有形なものだけでなく、本社地区に足を踏み入れると解る外部の人間への挨拶から始まる社員の動きなど無形なものまで含めて洗練されています。
会社が社員に優しければ、社員は顧客にも優しくできるという好循環を生み出しているように思えます。世界で成功する大会社には学ぶべき部分があります。