旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2026年10月14日更新
共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

「どうもすいません」、東京のスイーツ巡りは謝りっぱなしの展開に!?

△「炭火焙煎珈琲.凛 本店」でコーヒーを注ぐ日東計装代表取締役の成英穀さん(大塚圭一郎撮影)zoom
△「炭火焙煎珈琲.凛 本店」でコーヒーを注ぐ日東計装代表取締役の成英穀さん(大塚圭一郎撮影)

 「どうもすいません」は落語家の初代・林家三平さん(故人)の決まり文句だが、趣向を凝らした東京のスイーツ巡りはこの台詞のオンパレードとなった。隣席の女性同士の会話に「なんとタカビーな!」と誤解してしまったこと、一風変わったソフトクリームの味わい方、沖縄県の特産品を使ったデザート、そして予約が始まったクリスマスケーキと、とにかく頭を下げっぱなしの展開が待ち受けていた。そのワケとは―。

△「炭火焙煎珈琲.凛 本店」の「栗のムース」(左)とコーヒー(大塚圭一郎撮影)zoom
△「炭火焙煎珈琲.凛 本店」の「栗のムース」(左)とコーヒー(大塚圭一郎撮影)

 ▽いくら銀座でも!
 「私はエルメスです」「おや、私はクリスチャン・ディオールです」。そんな所持品自慢とおぼしき女性同士の会話が隣の席から聞こえてきたのは、中央区銀座3丁目の銀座グランディアⅡビル10・11階に2026年8月5日移転開業した喫茶店「炭火焙煎珈琲.凛 本店」でコーヒーを味わっていたときだ。
 確かに立地が銀座の超一等地だけに、お高くとまりたい気持ちになるのは理解できる。しかし、そんな高級ブランドの名前を挙げてマウントを取られては、ユニクロのカジュアル衣料を愛用している私の肩身が狭くなるだけではないか(苦笑)。そう憤まんやる方ない気持ちになった。
 「どうもすいません」、これは私の誤解だった。「炭火焙煎珈琲.凛」は約120セットあるカップとソーサーの中から、顧客の雰囲気に合った陶器にコーヒーを注いでくれるのだ。女性同士が話していたのはコーヒーが提供されたカップとソーサーの銘柄だったのだ。その後、一緒に会話すると感じの良い方々で、「タカビー」とは縁遠かったことを付け加えておきたい。
 私のもとに登場したカップとソーサーにも目をむいた。それらはイギリス王室ご用達のブランド「ウェッジウッド」で、私が好きなブランドなのだ。しかも、青い色合いが好みなのも的中した。

△「SNOW SALT」の3階には絵本や文庫本が並ぶ(大塚圭一郎撮影)zoom
△「SNOW SALT」の3階には絵本や文庫本が並ぶ(大塚圭一郎撮影)

 ▽「3たて」を提供
 このように鋭敏な感覚でカップとソーサーを選んでくれたのは、運営する日東計装(千葉市)代表取締役の成英穀さんだ。成さんは狙いを「ただコーヒーを提供するだけではなく、お客様お一人お一人と何かつながりを持ちたいという思いでやっています」と教えてくれた。
 注文したコーヒーもこだわりが半端ない。熟練したスタッフが焙煎(ばいせん)釜を使ってコーヒー豆を炭火でじっくりと焙煎。注文が入るたびに豆を挽(ひ)き、一杯ずつハンドドリップでコーヒーを淹(い)れる「煎りたて・挽きたて・淹れたて」の「3たて」で提供するため香り高く、味わい深い一杯を満喫できるのだ。
 せっかくのコーヒータイムに一層の彩りをもたらしてくれるのが手作りケーキだ。お薦めの「栗のムース」は国産栗や自然卵などの厳選した材料を使っており、ブランデーの香りがほのかに香るほどよい甘さのスイーツだ。コーヒーとのセットは1950円。
 「炭火焙煎珈琲.凛」は移転前には銀座4丁目で約23年間営業し、食べログの「喫茶店 百名店」にも選ばれた名物店だった。しかし、ビルの建て替えに伴って現在地に移転した。
 らせん階段で2フロアをつないだ計約175平方メートルの店舗は木のぬくもりを感じさせる雰囲気で、55席を設置している。定休日はなく、「銀ブラ」の際に立ち寄ってコーヒーとケーキを味わうのにぴったりだ。

△「アグー豚のアーリスタ」を取り分けるイタリア料理店「Convivio」のオーナーシェフ、辻大輔氏(大塚圭一郎撮影)zoom
△「アグー豚のアーリスタ」を取り分けるイタリア料理店「Convivio」のオーナーシェフ、辻大輔氏(大塚圭一郎撮影)

 ▽「何で追い塩!?」と思ったものの…
 「大人のためのソフトクリームカフェ&バー」と銘打った飲食店「SNOW SALT」が9月5日、台東区東上野にオープンした。運営するのは札幌市・ススキノや東京都内にジンギスカン専門店「成吉思汗だるま」を展開する「DARUMA Company」で、1階と3階に9席ある店舗だ。
 看板商品は、岩瀬牧場(北海道砂川市)の生乳を使った塩ソフトクリーム「SNOW SALT」(480円)。生乳本来のすっきりしたコクに、雪塩を加えることで牛乳の自然な甘みを引き立てているという触れ込みだ。店内には塩の容器が置かれており、店員に「この塩をかければ、甘さがより際立つようになりますよ」と薦められた。
 しかし、「何で追い塩!?」と首をひねった。ソフトクリームには雪塩を加えているだけに、ソフトクリームへの「追い塩」は適量を通り越してしまい、生乳からこだわった本来の持ち味が失われるのではないかと危惧した。
 ただ、せっかくの好意的なアドバイスを聞き入れない頑固で偏屈な来店客になってしまっては、帰るときに余りある塩をまかれかねない(苦笑)。
 だまされたと思ってソフトクリームの上に塩の容器を一振りしたところ、「どうもすいません」と頭を下げたくなった。確かにぱらぱらとちりばめた塩に引き立てられ、塩だけに甘さひとしおだ!
 「SNOW SALT」ではオリジナルの塩生キャラメルも1粒180円で販売しており、ソフトクリームとのマリアージュは絶妙だ。3階は絵本や文庫本が並んでおり、書籍をめくりながらスイーツを堪能できるのもうれしい。

△「Convivio」の沖縄アグー豚フェアのスペシャルフルコースでドルチェに提供される「紅芋のティラミス黒糖クッキー」(大塚圭一郎撮影)zoom
△「Convivio」の沖縄アグー豚フェアのスペシャルフルコースでドルチェに提供される「紅芋のティラミス黒糖クッキー」(大塚圭一郎撮影)

 ▽沖縄県の特産品のハーモニー
 オーナーシェフの辻大輔氏がイタリア各地の郷土料理をベースに、旬の食材を取り入れた料理を提供する渋谷区千駄ケ谷のイタリア料理店「Convivio(コンヴィヴィオ)」は10月1~31日に「沖縄アグー豚フェア」を開催中だ。沖縄県の特産品である沖縄アグー豚の販路拡大に向けた沖縄県産豚肉消費活性化事業の一環で、沖縄アグー豚を一部料理に生かしたスペシャルフルコースを提供している。
 沖縄アグー豚は「霜降りで非常に旨味があり、脂肪の融点が低く、口の中に入れると溶け出すような旨味が出てくる」(沖縄県農林水産部畜産課畜産政策班の恩田寛班長)という食通をうならせるブランド豚肉だ。そんな抜群の食材を、腕が折り紙付きの辻氏が調理するのだから味は間違いないと確信した。
 試食した「アグー豚のアーリスタ(ローストポーク)」は、辻氏が「素材のうまみを存分に引き出した」と豪語するだけに抜群の味わいだ。素材の良さが直球勝負で伝わってくる文句の付け所がない一皿だった。
 試食前は「沖縄アグー豚をとんかつにしたらおいしいだろうな」と邪推していた私は、心の中で「どうもすいません」とわびた。もちろんとんかつにしてもおいしいのだろうが、「おいしい豚肉がたくさん出ている中でも、群を抜いておいしい」(辻氏)という沖縄アグー豚の持ち味をストレートに味わえる調理法がアグー豚のアーリスタだったのだ。
 ここまで読んで「これはスイーツの記事ではないのか」と思われるかもしれない。「どうもすいません」、話には続きがある。
 絶品の沖縄アグー豚の料理に感激したにもかかわらず、ドルチェ(デザート)にも驚かされた。それは沖縄県の特産品の紅芋を使い、黒糖クッキーをまぶした「紅芋のティラミス黒糖クッキー」で、瑞泉酒造(那覇市)の沖縄泡盛「瑞泉」をかけて仕上げている。一見するとばらばらに映る沖縄県の特産品が、見事な味覚のハーモニーを奏でているのだ。
 沖縄アグー豚を一部料理に生かし、ドルチェに「紅芋のティラミス黒糖クッキー」を提供するスペシャルフルコースは2人から予約できる。1人当たり1万9800円(サービス料別)。

△京王プラザホテルが予約を受け付けているクリスマスケーキ「ラ・ポスト・デュ・ラ・フォレ」(大塚圭一郎撮影)zoom
△京王プラザホテルが予約を受け付けているクリスマスケーキ「ラ・ポスト・デュ・ラ・フォレ」(大塚圭一郎撮影)

 ▽ポストの投函口、待ち受けているのは手紙と思いきや!
 京王プラザホテル(新宿区西新宿)は、新作3種を含めた7種のクリスマスケーキの予約受付を10月1日に始めた。予約期間は12月17日までで、12月19~25日に引き渡す。
 他に伝統焼き菓子3種も11月1日~12月25日に販売する。
 新作ケーキの中でも目玉となるのが、「森の奥の小さな郵便屋さん」をテーマにした10台限定の「ラ・ポスト・デュ・ラ・フォレ」(5万5000円)だ。幅35センチ、奥行き17センチ、高さ約18センチで、ポストの上にフクロウがとまっているデザインだ。パティシエ特製の手紙も添えられている。
 担当した山崎光行パティシエは見本を示しながら「森の小さな郵便屋さんがお手紙をお客様に渡すというイメージで作らせていただきました」と紹介。それを眺めて「そうか、ポストの投函口に手紙を入れるのですね」と言うと、それは早合点だった。
 ポストの中にはショートケーキ、フランボワーズショコラ、シトロンフロマージュ、抹茶オペラ、プラリネメゾンの5種の小型ケーキが二つずつ入っているという。このため手紙を強引に押し込むと、せっかくの小型ケーキがつぶれてしまうというのだ。
 購入者は投函口の付いたケーキ上部を開け、中の小型ケーキを食べるか、取り出さないといけない。中を空にした状態でケーキ上部を戻し、投函口から手紙を入れるのが手順だという。もったいない気もするが、フクロウも、手紙も、どんぐりも、赤すぐりも全て食べられる。
 もちろん、私は実際に投函口から手紙を差し込んだわけではないのでセーフだ。だが、せっかくのクリスマスケーキを台無しにしかねない食べ方をいったん伝授してしまったので、おわびして訂正したい。
 「どうもすいません」!
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)

共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月、東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月に社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。2024年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を積極的に執筆しており、英語やフランス語で取材する機会も多い。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、旧日本国有鉄道の花形特急用車両485系の完全引退、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載「鉄道なにコレ!?」と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。

本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)、カナダ・バンクーバーに拠点を置くニュースサイト「日加トゥデイ」で毎月第1木曜日掲載の「カナダ“乗り鉄”の旅」(https://www.japancanadatoday.ca/category/column/noritetsu/)も執筆している。

共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。
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