旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2026年5月18日更新
共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

1尾丸ごとのうなぎ、ひつまぶし風の親子丼、“親鶏”の料理も 東京に個性豊かな飲食店開業

△「焼鳥とお野菜 一等星」で、鶏肉を炭火で焼く様子(大塚圭一郎撮影)zoom
△「焼鳥とお野菜 一等星」で、鶏肉を炭火で焼く様子(大塚圭一郎撮影)

 グルメ本「ミシュランガイド」の2026年版で星を獲得したレストランが158軒と、世界最多なのが東京だ。この美食都市にはミシュランガイドに掲載されていなくても、コスパが優れたレストランがひしめいている。1尾のうなぎを丸ごと蒲焼きにしてくれる料理店、焼き鳥をまるで「ひつまぶし」のように味わえる店舗、そして産卵を終えた“親鶏”を提供する居酒屋という個性豊かな新規開業の店舗に足を運んだ。

△うなぎ四代目菊川赤坂溜池山王店でウナギを焼き上げる様子(大塚圭一郎撮影。プライバシー保護のため、画像を一部加工しています)zoom
△うなぎ四代目菊川赤坂溜池山王店でウナギを焼き上げる様子(大塚圭一郎撮影。プライバシー保護のため、画像を一部加工しています)

 ▽関東風の有名店の土地に、関西風で攻勢

 森トラストが東京・赤坂に設けた大規模複合施設「東京ワールドゲート」の中核となる超高層ビル「赤坂トラストタワー」の2階に3月30日、パッションギークス(名古屋市)のうなぎ料理店「うなぎ四代目菊川」の赤坂溜池山王店がオープンした。

 赤坂には、うなぎの背中側から包丁を入れて開く調理法「背開き」を売りとする関東風の有名店が立地する。そんな土地に、「うなぎ四代目菊川」は腹側から包丁を入れて開く関西風の「腹開き」の調理法を携えて乗り込んだ。

 カウンター席からガラス越しに調理場を見渡せる「ライブキッチン方式」を採用。職人が備長炭でうなぎを焼く様子を眺められるのは興味深く、トランスパレンシー(透明性)という時代のニーズにも応えている。

△「うなぎ四代目菊川」の「うなぎ一本重」(大塚圭一郎撮影)zoom
△「うなぎ四代目菊川」の「うなぎ一本重」(大塚圭一郎撮影)

 ▽「パリッ・ふわっ・ジュワッ」のハーモニー

 目玉となるのは、1尾を丸ごと使った「蒲焼き一本重」(5880円)だ。1932年に創業したうなぎの卸問屋が手がけるだけに、阿部翔吾代表は「脂の多い肉厚のウナギを厳選し、強い火力で地焼きしている」と説明。うなぎが好物の私も味わったところ、秘伝のたれで焼き上げたうなぎは皮がパリッとしているのに、中身はふわっとした口当たりで、ジューシーな脂がジュワッと広がる「パリッ・ふわっ・ジュワッ」のハーモニーを堪能できる。

 焼いた後に190グラム程度のうなぎを入れているのは美濃焼などの特注の容器で、保温性も優れているのも持ち味だ。本社を置く名古屋市の名物で、1尾丸ごとの蒲焼きと薬味などをセットにした「一本ひつまぶし」(6000円)も用意。阿部代表は「味変を楽しみたいというニーズがある韓国などからのインバウンド(訪日客)らに受け入れられている」と説明する。

 店舗数は2026年4月末時点で国内外に計45店あり、阿部代表は「6月には拠点の名古屋市にも出店が決まっており、関東と関西、中国地方にも進出する計画が進んでいる」とさらなる拡大に意欲を示す。

△「焼鳥とお野菜 一等星」の「親子丼御膳」(大塚圭一郎撮影)zoom
△「焼鳥とお野菜 一等星」の「親子丼御膳」(大塚圭一郎撮影)

 ▽親子丼なのに「ひつまぶしをオマージュ」

 一方、Numbers(東京)が東京・下北沢に2026年5月13日にグランドオープンした飲食店「焼鳥とお野菜 一等星」は、鶏肉と卵を使いながらも「うなぎのひつまぶしをオマージュしたニュースタイルの親子丼」(達川京平社長)を7月からランチ用に提供する。

 メニュー名は「親子丼御膳」で、好きな飲み物が付いて価格は1880円から。「ひつまぶしをオマージュした」というだけに、鶏肉と卵をご飯の上にかけるだけではなく、だしや薬味を加えて味わうこともできるのが特色だ。

 達川社長は「親子丼は基本的には3要素で構成されており、どんな鶏肉を使うのか、何の卵でとじるか、そしてどのような米で召し上がるかだ」と指摘。その答えとして、新鮮な国内鶏のもも肉を炭火焼きし、半熟でとろとろの卵を出すために火入れの数秒にもこだわり、一人分ずつの銅羽釜で米を炊きあげる。

△「焼鳥とお野菜 一等星」の前に立つNumbersの達川京平社長(大塚圭一郎撮影)zoom
△「焼鳥とお野菜 一等星」の前に立つNumbersの達川京平社長(大塚圭一郎撮影)

 ▽カスタマイズも可能

 親子丼御膳は基本メニューとして、青森県産の阿部鶏、達川社長の出身地である京都府・丹波地方の赤卵とコシヒカリを提供する。ただし、追加料金を出せば鶏を徳島県産の阿波尾鶏や、群馬県産の赤城の名月卵、季節の炊き込みご飯などに変えてカスタマイズできる。

 私も基本メニューの親子丼御膳を試食したところ、炭火焼きをした阿部鶏ととろみのある卵が、炊きたてのしっかりとした食感の米と見事にマッチした。

 達川社長は「あえてボリュームがあるように設計しており、ご飯を残した場合にはおにぎりにし、お土産で召し上がれるようにした」と話したが、いつの間にか間食していた。席数は53席あり、調理場を囲むように設けた15席のカウンターでは初対面の方と会話しながら食事を楽しむことができた。

△「炭火酒場 おやどりや」の「もも炭火焼(黒)」(大塚圭一郎撮影)zoom
△「炭火酒場 おやどりや」の「もも炭火焼(黒)」(大塚圭一郎撮影)

 ▽あえて“親鶏”に着目したワケは

 居酒屋「塚田農場」などを展開するエー・ピーホールディングス(東京)は、産卵を終えた“親鶏”を提供する居酒屋「炭火酒場 おやどりや」を東京・中野に2026年4月28日開業した。食用として通常使われる若鶏は生後40日程度で出荷されるのに対し、産卵期間を含めて550~700日間飼育された“親鶏”は「肉質が硬くなって扱いにくくなることもあってまだまだ市場価値が低く、挽き肉やスープ、ヒアルロン酸に使われることが多い」(エー・ピーホールディングスの高平学マーケティング本部長)のが実情だ。

 一方でうまみが凝縮されているという持ち味もあることから、「炭火酒場 おやどりや」は「“親鶏”の出口を作る居酒屋」というコンセプトを標榜。“親鶏”の味わいを引き出すメニューと焼き方によって価値を高めることで、「採卵と流通、加工の業者のさらなる価値を付けることで収入を増やし、加工業者の技術向上や、採卵業者が価値を出していけるようにしたい」と好循環に期待する。

 看板メニューは、“親鶏”のもも肉を炭火焼きした「もも炭火焼」(1298円)だ。塩でうまみを引き出した「黒」と、自家製のピリ辛のたれで味付けした「赤」を用意。私は炭火焼きをした香ばしさがあり、素材の滋味が口いっぱいに広がる「黒」が特に気に入った。

 “親鶏”の脂で作る締めのメニューも用意されており、中でも「赤」の味に合わせた「赤専用〆(しめ)ビビンバ」(495円)はくせになりそうなこくのある味わいだ。席数は80席あり、最大で12人が利用できる個室もある。

 それぞれ厳選した素材を独自の視点からメニューにし、調理を工夫した三つの新店舗。高評価の飲食店がひしめき、大激戦を繰り広げる美食都市・東京にあっても個性を生かした切り口と確かな味が注目を浴びそうだ。
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)

共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月、東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月に社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。2024年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を積極的に執筆しており、英語やフランス語で取材する機会も多い。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、旧日本国有鉄道の花形特急用車両485系の完全引退、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載「鉄道なにコレ!?」と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。

本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)、カナダ・バンクーバーに拠点を置くニュースサイト「日加トゥデイ」で毎月第1木曜日掲載の「カナダ“乗り鉄”の旅」(https://www.japancanadatoday.ca/category/column/noritetsu/)も執筆している。

共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。
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