zoom JALグループのLCCであるスプリング・ジャパンが、2026年春に開設した新規路線は、同社の“再飛躍”を占う試金石といえます。筆者はGW期間中、成田―函館線のIJ857/IJ858便を同日で往復する、いわゆる“タッチ”搭乗を行い、その現場から同社の現在地と戦略を体感しました。
新路線初期便で感じた“変化”と現場の空気
今回搭乗したのは、4月23日に新規開設されたばかりの路線。同日、中部国際空港から新千歳線も開設が重なりました。今後は、金~日の週末を中心に運航され、夏休み期間は増便が発表されました。この路線は、過去にANAグループのバニラエアがピーチ・アビエーションに統合される前に2年程度運航していたことがあり、今回はLCC路線として再開になります。
まず印象的だったのは機内の雰囲気の変化です。2024年8月から導入された新制服は、鮮やかなグリーンが際立ち、LCCらしいフレッシュさと成熟した安心感を両立させたデザインとなっています。現役客室乗務員が企画段階から参加し、機能性とデザイン性を高めた点も特徴です。
zoom客室乗務員の声にみる“ブランド力”の源泉
機内で客室乗務員の山本来未(くるみ)さんは、「北海道が好きで、この路線に乗務できるのが嬉しいです」と語りつつ、「国内と中国の両方に行ける点が魅力」と同社のネットワーク特性を端的に表現しました。
また、機内体操や機内販売といった“体験型サービス”も同社の特徴であり、機内で空の駅のような千葉県の名産品を揃えた物販は成田をベースにするLCCの地域性を感じさせる工夫といえます。銚子電鉄のぬれ煎餅や武井製茶のほうじ茶・玄米茶、そして瓶入りオリジナル金平糖など、思わず手に取りたくなる商品構成は、単なる移動手段にとどまらない付加価値の創出を意識したものです。
客室乗務員が通路に立っての機内体操は、やってみる価値のある健康維持です。手首や頭、足まで使う運動は一人ではなかなか手につかないもの。皆でやれば、スプリング・ジャパンらしい機内体験が記憶に残ることでしょう。
一方、入社1年目の大城紗彩(さあや)さんは「3か月の訓練を経て感じたのは、先輩の面倒見が良いということです」と語り、組織としての一体感も感じているようでした。LCCにおいては効率性が重視されがちですが、こうした人的サービスの質がブランド力を支えていることがうかがえます。
zoom高効率運航の中にある“体験価値”
成田では雨模様の天気で下界は雲に覆われていましたが、青森県に入って地上が見えてきました。下北半島の西側を飛行している様子を眺めながら、津軽海峡を飛行していきますと半島になった函館山の様子がはっきりと見えてきました。
空の上からは、展望台の眺望以上の眺めを堪能し、ぐるっと右旋回で空港西側から滑走路12へ着陸しました。函館空港では折り返し45分というタイトな運用ながら、早着により展望デッキでの機体撮影や1階では一番東端のチェックインカウンターの確認することも可能でした。
zoom函館路線に込められた戦略
では、この函館路線の戦略的意義はどこにあるのでしょうか。広報担当者の説明から見えてきたのは、「攻め」ではなく「選択と集中」による堅実な成長戦略です。
zoom “小さく始めて確実に回収する”再成長モデル
総じて、今回の函館路線は「小さく始めて確実に回収する」モデルケースといえます。LCCとしての低コスト構造を維持しつつ、競争環境・需要構造・運航効率を緻密に組み合わせることで、着実な収益確保を狙う戦略です。
zoom実際に搭乗して感じたのは、同社が単なる価格競争に依存するLCCではなく、“選ばれる理由”を積み上げているという点です。制服刷新によるブランド強化、機内サービスの工夫、そして市場選定の巧みさ。これらが噛み合ったとき、スプリング・ジャパンは再び成長軌道に乗る可能性を秘めています。
函館空港ターミナルビル2階で購入したチーズオムレットやラッキーピエロのレトルトカレーを手に、短時間の滞在ながらも地域の魅力を感じられた今回のフライト。その体験自体が、同社の狙う「移動+付加価値」の象徴だったのかもしれません。
