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  • 2025年6月20日更新
リスヴェル編集部トピックス
Editor:リスヴェル編集部

「ドンナフガータのワインで出会う、シチリアの大地と物語」コラム②

ドンナフガータのワイン造り×土地×文化の三位一体的な哲学 ©️ Donnafugatazoom
ドンナフガータのワイン造り×土地×文化の三位一体的な哲学 ©️ Donnafugata
ワインが誘う、シチリアという名の物語

南イタリア、地中海に浮かぶ島シチリア。この土地で旅人の心と舌を魅了するワインを生み出しているのが「Donnafugata〈ドンナフガータ〉」です。ワインのエチケット(ラベル)に描かれた自由奔放な女性に惹かれ、ボトルを手に取ったことがある方もいるかもしれません。

実はこのワイナリー、ひとつの場所にあるのではなく、シチリア各地に点在する5つの拠点から成っています。海を望む畑から丘陵地帯、山岳地帯まで、それぞれ異なる風土と気候に根ざした畑で育まれるワインには、豊かな個性と物語が息づいています。今回はその中でも、訪れることのできるワイナリーを中心に紹介します。グラスの向こうに広がる風景を、実際に歩いて体験できる「ワインの旅」へと出発しましょう。
六世代にわたり、シチリアワインのスタイルを世界的に再構築した情熱的なファミリー ©️ Donnafugatazoom
六世代にわたり、シチリアワインのスタイルを世界的に再構築した情熱的なファミリー ©️ Donnafugata
ドンナフガータについて

ドンナフガータは、1983年にシチリアで誕生。創業者は170年以上にわたってワイン造りの伝統を守り続けてきた名門ラッロ家の4代目、ジャコモ・ラッロ氏。そしてその妻であり、シチリアにおける上質なブドウ栽培のパイオニアでもあるガブリエッラ氏です。

現在は5代目となるアントニオ氏とジョゼ氏がその情熱を受け継ぎ、卓越したワインを生み出すチームを率いています。そして近年、6代目であるガブリエッラ・ファヴァーラ氏も加わり、新たな世代の息吹とともに、ブランドの未来を切り拓いています。
コンテッサ・エンテリーナでは、各地区の特徴を引き立たせてる個性の強いワイン造りを目指す ©️ Donnafugatazoom
コンテッサ・エンテリーナでは、各地区の特徴を引き立たせてる個性の強いワイン造りを目指す ©️ Donnafugata
西シチリア・コンテッサ・エンテリーナで始まる物語

ドンナフガータの旅の出発点は、西シチリアの丘陵地帯コンテッサ・エンテリーナ。ここは創業者ラッロ夫妻の夢が形になったブランド発祥の地でもあります。広大なブドウ畑に囲まれたこの地では、代表的な赤ワイン「ミッレ エ ウナ ノッテ(Mille e Una Notte)」や、女性の名を冠した白ワイン「ヴィニャ ディ ガブリ(Vigna di Gabri)」が生まれています。まさにここには、古典小説『山猫』の舞台となる風景と、その「逃げた女性」の物語が息づいています。

この地域では、芸術、歴史、文学が数世紀にわたり深く結びついてきました。ドンナフガータという名前は象徴的です。それは、小説『山猫』の主人公サリーナ侯爵ドン・ファブリツィオの領地名に由来しています。この物語の舞台はシチリア南西部の「山猫の土地」と呼ばれる地域で、ドンナフガータの原点となるテヌータ・ディ・コンテッサ・エンテリーナがここにあります。創業者のジャコモとガブリエッラは、この土地に敬意を込めて「ドンナフガータ」という名を選んだのです。

敷地内には、創業者ガブリエッラが愛した「ガブリエッラの庭」があります。地中海の植物に囲まれながら、ワインと自然の美しさに浸るひとときは、まさに五感で楽しむ体験です。ワインのラベルに込められたストーリーを知り、土地の香りを胸いっぱいに吸い込む。そんな時間は、まるで小さな文学散歩のようです。
パンテッレリア ー 唯一無二の琥珀色のデザートワイン「ベン リエ(Ben Ryé)」©️ Donnafugatazoom
パンテッレリア ー 唯一無二の琥珀色のデザートワイン「ベン リエ(Ben Ryé)」©️ Donnafugata
パンテッレリア島 ─ 火山の島が育てる甘美な一杯

もし「地の果てにある楽園」が存在するとしたら、それはパンテッレリア島かもしれません。アフリカとの境に浮かぶ火山島にドンナフガータのもうひとつの拠点があります。この地で造られているのは、黄金色に輝くデザート(甘口)ワイン「ベン リエ(Ben Ryé)」。乾燥した気候と火山性の土壌という過酷な環境のなか、ジビッボ種のブドウを手作業で丁寧に育て、太陽の下で干して造るという特別な製法。

テイスティングルームの先には、「パンテッレリア庭園」と呼ばれる小さなオアシスもあり、FAI(イタリア環境基金)に寄贈されたこの庭には、何百年も生きるオレンジの木が静かに佇んでいます。また、数百年の歴史を持つオリーブの木、地中海性の低木のケッパーの間を蛇行する「カミーノ・ディ・カムマ(カムマの道)」があり、自然と農業の完璧な調和を体現しています。自然と向き合い、手間を惜しまない ─ それがドンナフガータの哲学です。
家族経営のワイナリーの1ページ目がここに ©️ Donnafugatazoom
家族経営のワイナリーの1ページ目がここに ©️ Donnafugata
マルサラ ─ 歴史ある家族経営のセラー

歴史ある街マルサラには、1851年に設立された歴史ある家族経営のワイナリーがあり、ドンナフガータの原点と言えます。ワイナリーは、シチリアの伝統的な「バギオ」(中庭を備えた建物)の典型的なレイアウトを維持し、柑橘類とオリーブの木が点在しています。地下に広がるバリックセラーは、まるでアートギャラリーのような静謐な空間が広がり、熟成中のワインが静かに時を重ねています。

2023年秋から、海と塩田に隣接するこの独特な立地では、FAI(イタリア環境基金)がテンプルの谷で保護しているイタリアの宝物、極めて希少なコリムベトラ柑橘類の品種コレクションが展示されます。ドンナフガータは、この古代柑橘樹の景観の美しさを称え、シチリアの農業生物多様性をさらに促進する取り組みの一環として、このプロジェクトに貢献しています。
エトナ ー ワイン造りの芸術性と、ヴィットリア ー ワイン作りの革新性 ©️ Donnafugatazoom
エトナ ー ワイン造りの芸術性と、ヴィットリア ー ワイン作りの革新性 ©️ Donnafugata
エトナ、ヴィットリア ─ 多彩な顔を持つワイナリーへ

一方、東のエトナ火山麓に広がるエステートでは、標高の高さと溶岩土壌を活かした赤ワインが造られており、訪れる人に雄大な自然とワイン造りの奥深さを感じさせてくれます。

そしてヴィットリアでは、新しい世代による挑戦が息づく最新鋭の設備の中で、伝統と革新が融合する、まだ若いエステート(生産者)です。

どの拠点でもガイド付きツアーやテイスティング、ガーデン散策、地元料理とのペアリング体験が楽しめ、言葉のいらない“ワインとの対話”を体験できます。

ドンナフガータのワイナリーでは、テイスティングを楽しみながら、各ワイナリーのスタンプを5つ収集すると、ドンナフガータのブランドアンバサダーになることができ、好みのドンナフガータのテイスティングが無料になります。

ドンナフガータが教えてくれたこと ─ 旅とワインの幸せな関係

旅とワインには、不思議とよく似たところがあります。どちらも、その時の感情や出会いによって印象が変わり、人生に深く残る記憶をつくってくれるもの。ドンナフガータのワインを味わうとき、そこにはいつも“誰かの想い”と“その土地の物語”が寄り添っています。持続可能な農業、芸術との対話、そして家族の絆──そのすべてがグラスの中にそっと閉じ込められているのです。

「いつか本場を訪れてみたい」そんな気持ちを抱いたら、きっとその時が“旅の始まり”。これからの旅行の地図に、シチリアとドンナフガータの名前をそっと加えてみませんか?

Donnafugata公式サイト
https://www.donnafugata.it/en/


取材協力:Donnafugata
Editor:リスヴェル編集部
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