新年2025年は早くも1か月以上過ぎました。皆様どんなスタートになりましたか?
皇居東御苑内の三の丸尚蔵館で正月から開催されている展覧会「瑞祥のかたち」は、2月4日から後期の展示が始まっています。伊藤若冲の豪華絢爛な代表作のひとつである国宝「動植綵絵 老松白鳳図」などが見られます。
外国人の人気も高いこの美術館。新しい年の到来を喜び、人生の節目に幸福を願う気持ちは、古今東西、誰も同じ気持ちでしょう。
展覧会「瑞祥のかたち」の英語のタイトルは、
「Inviting Fortune :Auspicious Symbols in Japanese Art」。
直訳すると、「福を招き入れる、日本芸術における幸運のシンボル」でしょうか。
会場には、古代中国において不老不死の仙人が住むと考えられた蓬莱山(ほうらいさん)、同じく古代中国で優れた天子が世に現れる兆しとして尊ばれた伝説の鳥である鳳凰(ほうおう)、空想上の霊獣で慶兆のシンボルの麒麟(きりん)、元々シルクロードを超えてもたらされたライオンの造形でしばしば守護神として描かれてきた唐獅子(からじし)、さらに、「松上鶴(しょうじょうのつる)」として知られるおめでたい鶴と松の取り合わせなどを中心に瑞祥の造形が並びます。
瑞祥のかたちの多くは、古来、海を超えてもたらされたものやコンセプトが尊ばれたのですね。それが日本的に洗練されていく姿を見るのも興味深いです。
今回の展覧会は、めでた尽くしの宝船に乗り,数々の瑞祥の造形物を観てまわり、最後に日本の蓬莱山、富士山に着くという「瑞祥のかたちを鑑賞する旅」になっています。
会場を入ってすぐに目を引くのが、べっこう細工の宝船「長崎丸」です。大正5年に大正天皇が福岡県下を行幸の折、長崎県から献上されたもの。農産物や水産加工物など、長崎県の重要な物産27種が積載されています。
日輪に鶴が描かれた帆に風をはらみ、大海原を進む宝船が目指すのは、蓬莱山。
生涯に2千点近い富士山を描いた横山大観が朝陽に輝く霊峰の姿を描いた大作「日出処日本(ひいづるところにほん)」(234.3×448.6)が旅を締めくくります。こちらは、昭和15年に開催された「紀元二千六百年奉祝美術展覧会」に出品された後、昭和天皇に献上されました。
細部にわたり工芸技術の粋を集めた立体的な長崎丸を観ていたら、同館学芸部の五味聖さんが宝船について教えてくださいました。
その昔、宝船は紙に描かれていたそう。時代が下り、江戸時代くらいから造形的な宝船が登場し、船に七福神が乗ったり、米俵や宝物が載せられたり豪華になってきたようです。
また、正月2日や節分の夜に、宝船を描いた紙を枕の下に置いて眠ると良い夢を見られると信じられていて、万が一夢見が悪ければ、その絵を川に流して、幸を願ったという風習もあったとか。
この風習は、日本のどこかでまだ残っているのでしょうか。
ところで今年は巳年ですが、干支のものを飾ると幸運を招くと言われます。
三の丸尚蔵館では特別に紹介されてはいませんでしたが、実は展示されたお宝の中に「2匹」いるのです!
そんな幸運の干支探しも楽しみな「瑞祥のかたち」です。
巳はこちら。
↓
①宝船「長崎丸」の船の側面に十二支の干支がいます。暗くて見えにくいですが、巳を見つけてください。
②大正天皇大婚二十五年に際して大阪市から献上された銀製の<花盛器>の鉢台に、方位を司る四神が鎮座しています。北を司るのは玄武。玄武は亀と蛇の合わさった姿で表現されます。古代中国において、亀は「長寿と不死」の象徴、蛇は「生殖と繁殖」の象徴です。
展覧会概要
※詳細は三の丸尚蔵館HPで確認を
https://pr-shozokan.nich.go.jp/2024inviting-fortune/
「瑞祥(ずいしょう)のかたち」
会期
2025年1月4日(土)~3月2日(日)
後期:2月4日(火)~3月2日(日)
休館日
月曜日(ただし2月24日は開館し、翌火曜日休館)、2月23日(天皇誕生日)
※その他諸事情により臨時に休館する場合があります
開館時間
午前9時30分~午後5時
(入館は午後4時30分まで)
※ただし1月7日(火)は午後1時開館
毎週金曜・土曜は夜間開館。
午後8時まで開館。
(入館は午後7時30分まで)
※ただし2月28日(金)を除く
入館料
一般 1,000円、大学生 500円
高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方は無料。入館の際に年齢のわかるもの(生徒手帳、運転免許証、マイナンバーカードなど)を提示する。
※障がい者手帳をお持ちの方およびその介護者1名は無料。
アクセス
皇居三の丸尚蔵館
〒100-0001 東京都千代田区千代田1-8 皇居東御苑内
※入門にあたり手荷物検査あり。