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- 北陸の名湯・山代温泉「界 加賀」で伝統工芸と美食体験 ~伝統文化に触れる石川の旅②
旅の扉
- 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
- 2024年11月10日更新
- よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子
北陸の名湯・山代温泉「界 加賀」で伝統工芸と美食体験 ~伝統文化に触れる石川の旅②
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- 温泉街でひときわ目を引く紅殻色の外観は、酸化鉄を含む紅殻(べにがら)という顔料が使われたもの。
- 伝統文化に触れる石川の旅①で、念願の「金継ぎ」を体験した「界 加賀」は、北陸の名湯・山代温泉にある星野リゾートの温泉旅館。山代温泉の象徴である共同浴場「古総湯(こそうゆ)」の正面に位置します。前身である「白銀屋(しろがねや)」は1624年創業で、加賀藩主や北大路魯山人をはじめとした文化人を迎えてきた老舗旅館です。水引のアートが迎えてくれるフロントホール、2階に「べんがらラウンジ」がある伝統建築棟、さらに中庭の茶室など、建物の外観とともに館内にも歴史を感じる見どころに事欠きません。
くつろぎながら伝統工芸の世界に浸れる客室「加賀伝統工芸の間」
全国に23カ所ある「界」のテーマは、「王道なのに、あたらしい。」。伝統工芸の宝庫といわれる石川県にあり、ここでは「九谷焼」「山中漆」「水引」「加賀友禅」といった代表的な伝統工芸が館内の随所に取り入れられています。
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- ご当地部屋「加賀伝統工芸の間」は、全48室のうち18室が好きな時間に温泉入浴を楽しめる露天風呂付き。
- 鮮やかな紅殻色の外壁に囲まれ、格子窓が風情を醸す伝統建築棟は、加賀地方の伝統的な建築様式で国の登録有形文化財。太い大黒柱と大きな梁が歴史を感じるフロントホールでは、天井から吊された水引の美しさに目を奪われます。その様子は、上空から降り注ぐボタン雪のようにも見えます。
また滞在中、自由に使えるトラベルライブラリーには、北大路魯山人が酔った勢いで書いたとされる「いろは屏風」はじめ、ゆかりの品々が展示されています。部屋番号の表示や部屋の鍵のキーホルダーは九谷焼。客室の障子や床の間に加賀友禅や水引が取り入れられ、茶器も地元作家がこの施設のために手掛けたオリジナル。私が滞在した部屋にはヘッドボードに水引があしらわれ、眺めているだけで優雅な気持ちになれました。
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- 寝室のヘッドボードにあしらわれた水引。繊細でやさしい装飾になごまされる。
- 春・夏・秋・冬、九谷焼のアートパネルに見とれる温泉大浴場
約1300年前に高僧・行基が発見したと伝わる山代温泉は、弱アルカリ性で、わずかにとろりとした泉質の“美人の湯”。そのお湯が満たされた大浴場には、男湯女湯合わせて8人の九谷焼作家が自由な発想でデザインしたアートパネルが施されています。さらに、内風呂と露天風呂の間のガラスには、金箔で描かれた名峰・白山のシルエットが。夜、ほの暗い灯りに映し出されたパネルの幻想的な美しさとともに、朝の光が浴室内を照らす早朝の入浴もまた気持ちいいものです。
客室の露天風呂に好きな時間に浸かるのもいいですが、広々とした大浴場で手足を伸ばしてくつろぐ心地よさは温泉旅館ならでは。湯上り処で催される「温泉いろは」、朝の「おはよさーん体操」を体験すると、いっそう温泉効果を実感できます。
国の有形登録文化財に登録されている茶室「思惟庵(しいあん)」、九谷焼のあでやかなタイルが広がる中庭、温泉街を眺めながら好みの器を選んでカクテルタイムを楽しめる「べんがらラウンジ」など、居ながらにして伝統工芸に触れられるスポットも楽しみです。
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- 九谷焼のタイルが壁面を飾る大浴場。金箔で描かれているのは北陸の名峰・白山。温泉に浸かりながら伝統文化を感じられる。
- アワビ、ノドグロ、活蟹…、旬の食材をふんだんに盛り込んだ夕食の会席料理
北陸の旬の味を満喫できる夕食は、この宿ゆかりの魯山人が唱えた「器は料理の着物」の言葉に習い、「器と料理のマリアージュ」をテーマにしています。九谷焼や山中漆の器に北陸の旬の食材が盛り込まれた内容で、器と料理がそれぞれを引き立て合い、目と舌を楽しませてくれました。
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- 特別会席の料理の一部。〆はノドグロの炊き込みごはん。これからの季節はタグ付きの蟹も登場! ※内容は季節によって変わります。
- 11月から登場している冬の季節のお楽しみが、名物料理「活蟹のしめ縄蒸し」。生きた蟹を海水に浸したしめ縄で結わえて蒸した料理には、蟹の旨みがギュギュっと凝縮されています。うれしいのは、“おひとり”でも味わえる「ひとり蟹会席」のコースがあること。誰にも気兼ねなく、存分に味わってみたいですね。
食後のくつろぎタイムも伝統工芸とともに
食事の後も、伝統工芸と触れ合う時間は続きます。毎夜、トラベルライブラリーで披露されるのが、勇壮な加賀獅子舞です。「加賀獅子」は金沢市の無形民俗文化財に指定されているもの。ここでは地元の工芸作家や伝統芸能チームの協力のもと、独自にアレンジした獅子舞を上演しています。獅子が口を開閉するときの“カクッ、カクッ”という音には、邪気を払う力があるとされています。その迫力ある音も楽しみながら、鑑賞してみてください。
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- 毎晩、スタッフにより披露される勇壮な「加賀獅子舞」。終了後には、写真撮影タイムも。
- “伝統工芸”と聞くと少々、敷居が高いイメージがありますが、ここでは客室、温泉、食事など、すべての場面にさりげなく取り入れられていて、くつろぎながらその世界に触れられるのがいいところです。
第3回では、「開湯1300年の歴史ある山代温泉街をぶらり散策」をご紹介します。
●界 加賀
石川県加賀市山代温泉18-47
TEL 050-3134-8092(界予約センター)
1泊3万1,000円から
※2名1室利用時の1名料金、夕朝食付き、税・サービス料込み
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikaga/