旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2024年10月5日更新
共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

食べ放題のブッフェ、スイーツならばいくつ味わえる? 京王プラザホテルのフェアで検証

△スイーツを並べたブッフェ台にもコリラックマのぬいぐるみが並ぶ(いずれの写真も2024年10月、東京都新宿区で大塚圭一郎撮影)zoom
△スイーツを並べたブッフェ台にもコリラックマのぬいぐるみが並ぶ(いずれの写真も2024年10月、東京都新宿区で大塚圭一郎撮影)

 食事を好きなだけ食べられるブッフェには何度か足を運んだことがあるが、「ケーキなどの甘い菓子のブッフェだと一体いくつ食べられるのか?」という疑問を抱き続けていた。今年で誕生20年を迎えたキャラクター「コリラックマ」とのコラボレーション(協業)により、私鉄大手、京王電鉄子会社で東京・西新宿にある京王プラザホテルが2024年10月1日に始めたスイーツブッフェでその答えを探った―。

△コリラックマの大きなぬいぐるみを飾ったテーブルzoom
△コリラックマの大きなぬいぐるみを飾ったテーブル

 【コリラックマ】サンエックス(東京)が2004年に導入した白いクマ風のキャラクター。性格はいたずらが大好きな、元気でやんちゃな子だという。03年に登場した着ぐるみのクマのキャラクター「リラックマ」、黄色の鳥「キイロイトリ」と一緒に暮らしているという設定。サンエックスによると、リラックマ関連のライセンス商品やキャンペーンなどを含めた市場規模は年間約340億円に達する。

△京王プラザホテルの「樹林」に飾られたコリラックマ(上)などのぬいぐるみzoom
△京王プラザホテルの「樹林」に飾られたコリラックマ(上)などのぬいぐるみ

 ▽世界観をパティシエが表現
 ホテルの2階にあるレストラン「樹林(じゅりん)」で始まったのはフェア「スイーツブッフェwithコリラックマ~お空のくるりんわたあめ~」。コリラックマの世界観をホテルのパティシエが表現した菓子などを好きなだけ味わうことができる。
 利用できる時間は午後2時半~4時半、午後3~5時のそれぞれ2時間で、通常の大人料金は平日が5500円、土日と休日は6千円となっている。期間は2024年末まで。

△大皿に取ったケーキなどの菓子類zoom
△大皿に取ったケーキなどの菓子類

 ▽最初に選んだ「まさかのメニュー」
 「スイーツブッフェ」と名乗っているだけに、コリラックマなどのぬいぐるみが飾られたブッフェ台にはケーキやプリンといった菓子類だけが並んでいると想像していた。ところが、スタート時間の午後2時半を過ぎてブッフェ台の出だしで見つけたのはまさかのサラダだった。このブッフェは「昼食も兼ねられるように軽食も用意している」(ホテルのスタッフ)というのだ。
 この日昼食を抜いていた私には実に魅惑的で、サラダをさらっと無視するわけにはいかない。その先には小ぶりのハンバーガーも、アジフライバーガーもあり、これらも食欲をそそる。すると、大皿はたちまち料理だけでいっぱいになってしまった。スイーツを何個食べられるのかという試み自体、まるでキイロイトリの羽の色のような黄信号が灯った…。

△スイーツブッフェの出だしに用意されていたのはサラダだったzoom
△スイーツブッフェの出だしに用意されていたのはサラダだった

 ▽大皿にケーキを次々と盛り付け
 とはいえ、スイーツブッフェなのを無視して「ひたすら食事を味わう」という企てはあまりにも失礼だろう。そこで「スイーツは別腹だ」と信じ込み、別の大皿に次々とスイーツを盛り付けた。
 最初に味わった料理は有名ホテルにふさわしい折り紙付きの味で、中でもアジフライバーガーはおかわりをしたいほどの美味だった。
 コリラックマはイチゴが好きだという設定だけに、イチゴをあしらった菓子はいずれも素晴らしい。イチゴのショートケーキ、イチゴのタルト、イチゴのソースをかけて食べるレアチーズケーキをいずれもおいしくいただいた。
 意表を突かれたのは、外見が明らかに普通のクリームブリュレに見えたスイーツだ。スプーンで一口味わうと、何とカボチャの味がするではないか。これはキイロイトリに着想を得たカボチャブリュレだった。

△飲み物はスマートフォンから好きなだけ注文できるzoom
△飲み物はスマートフォンから好きなだけ注文できる

 ▽食べたスイーツの数は…
 今回のテーマである青空をイメージし、ドーナツやモンブランなどは鮮やかな青色に着色していた。目を引くスイーツの写真を撮影できるようにすることで、交流サイト(SNS)などでの「インスタ映え」も狙っているようだ。
 一方、これは個人の意見だが「必ずしもスイーツを着色しなくてもいいのではないか」と受け止めた。イチゴのショートケーキ、イチゴのタルトといったスイーツは見た目こそ奇をてらっていないものの、宴会などでも味わってきた京王プラザホテルが提供する美味で「これこそホテルらしい味だ」と満足感を得られた。
 フェアで提供されたスイーツの名前には、「コリラックマの好きな」などと冠していたが、例えば「コリラックマの好きな京王プラザホテルの味」といった一言を付け足せばホテルで普段提供しているようなスイーツをもっと多く並べることができるのではないだろうか。そうすれば、顧客が求める上質なホテルの味をさらに堪能でき、顧客満足度も高まるのではないか。
 入場してから1時間後、満腹になったのでいくつのスイーツを食したのかを確かめると12個だった。もしもサラダとハンバーガー、アジフライバーガーをスキップし、一意専心でスイーツを平らげた場合には15個に到達できただろう。エスプレッソなどの飲み物もスマートフォンから自由に注文できるため、2時間たっぷり粘れば5500円の元は十分取れそうだ。
 「これはかなりお買い得だ!」。そんな甘口の言葉が口をついて出たのはスイーツをたっぷり味わったためもあるかもしれないが、決して甘言を弄しているわけではない。
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)

共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月、東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月に社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。2024年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を積極的に執筆しており、英語やフランス語で取材する機会も多い。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、旧日本国有鉄道の花形特急用車両485系の完全引退、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載「鉄道なにコレ!?」と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。

本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)、カナダ・バンクーバーに拠点を置くニュースサイト「日加トゥデイ」で毎月第1木曜日掲載の「カナダ“乗り鉄”の旅」(https://www.japancanadatoday.ca/category/column/noritetsu/)も執筆している。

共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。
risvel facebook