夏休みも後半。暑すぎて、海岸にもプールにも人が少ないと聞きます。
昆虫採集をしたくても、熱中症が心配で戸外に出られない子供もいるかもしれません。
でも、ものは考え様。日焼けを心配することなく、エアコンの効いた館内でじっくり昆虫研究に一日過ごしてはいかがでしょうか。
国立科学博物館では、特別展「昆虫 MANIAC」が好評開催中です。
地球上で報告されている生物種の半数以上となる約100万種を占める最大の多様性をもつ生物、昆虫。100万というのは人間が名前を付けた昆虫の数で、実はまだまだ私たちが知らない昆虫が500万種も存在するそう。
同展覧会は、国立科学博物館の研究者によるマニアックな視点と、研究者セレクトのマニアックな昆虫標本でさまざまな昆虫をマニアックに深堀りするという趣向。最新の昆虫研究まで織り交ぜて、普段はなかなか注目することが少ないけれど、多様性あふれる昆虫とムシたちの世界に迫ります。
会場を簡単にご紹介しましょう。
展示は3つのゾーンで構成されています。
ゾーン1「昆虫とムシ」:昆虫とムシについての基本的な情報をおさらい。
ゾーン2「トンボの扉」「ハチの扉」「チョウの扉」「クモの扉」「カブトムシの扉」:
5人のムシ博士が各専門ジャンルをマニアックに紹介。
ゾーン3「ムシと人」:人の暮らしと共にある身の回りのムシの世界を覗く。
昆虫とムシの違いは?
昆虫は基本的に六脚類です。ムシに学術的な定義はないそうですが、本展では陸生の節足動物をムシとして扱っています。鋏角類のクモやダニ、多足類のムカデやヤスデ、甲殻類のダンゴムシなどがいます。
カブトムシやクワガタムシなどの昆虫に加えて、クモやムカデなどの「ムシ」たちの多様性の世界を紹介しています。
展覧会のタイトルになっている「マニアック」って、どんな意味?
英語を直訳すると、「非常に凝っている」ということですね。私は展覧会を監修した研究者の方々のムシに対するリアルな興味と理解しています。何しろ科博の研究者の皆さんがその研究について語る時のうれしそうな顔は、まるで子どものように純真です。
「見る」「聴く」「触る」「嗅ぐ」などさまざまな体験ができる展示は、ムシ好きの研究者の方々の興味そのもの。そんな研究成果を見て、大人も子供もムシの新たな世界を発見できることでしょう。
ところで、このコラムを読んでくださる方は、多分、昆虫が好きな方だと思います。
同展では昆虫やムシの驚くほどの多様性を知ることができます。またトンボ、ハチ、チョウ、クモ、カブトムシなどに特化したゾーンがあり、それぞれの研究者ご自慢のマニアックな研究成果がズラリと並んでいます。標本だけでなく、コラムもぜひ読んでください。「へぇ!」と感心することだらけです。
研究成果と書くと堅いですが、例えば、ハチのゾーンをご紹介するとこんな感じです。
私は現在、ミツバチを飼っています。「どうしたら美味しいハチミツが採れるかなぁ」というのが、一番の興味なのですが、ハチ類の総合監修をされた井手竜也さんにお話を伺いました。
研究者の井手さんは、「ハチミツが採れるかどうかは、私の興味とは異なりますが」と、まずは前置きされました。井手さんはタマバチに植物に寄生することによってできる「虫こぶ」に興味があり、タマバチからハチの研究を始めたそう。(やはり、マニアックな方かも(笑)。)
展覧会では、『シタバチを引き寄せる<におい>』について紹介しています。
シタバチは中南米のみに生息するミツバチの一種で、その雄のシタバチが集める香りについての話です。
これまたマニアックですが面白い!私のにわか知識で知る限り、一般的なミツバチは雄のハチは女王蜂と交尾をする以外、働きバチ(働きバチは雌です)のように一生懸命仕事をすることもなく、いわば日々だらだらと過ごしている印象があります。しかし、このシタハチに限っては、雄が良い香りを発する物質を飛んで探して集め、後脚部分に貯めて、その香りを空気中に拡散させて、雌とのコミュニケーションに使うのだそうです。
「香りのする物質を採って、丸めて、抱えられるように体のつくりがなっているのですよね」と、感心しながら笑顔で話す井手さん。
また、ミツバチの生態は、一般的に知られているように、社会性があり、1匹の女王蜂の下で、たくさんの働きバチが1つの巣で暮らし、幼虫の世話をするなど役割分担が決まっていると思っていましたが、「ハチ目」全体から見ると、こうした生態は実は珍しく、他の昆虫同様に、生まれた後は一匹オオカミ的で暮らすほうが多いのだとか。
「ハチは名前がついているだけでも世界に15万種ぐらいはいます。世界最小の昆虫はハチの仲間で、大きさは0,139ミリ。そのサイズで変種を探せば、まだまだいるでしょう。死ぬまでやっても研究することは終わらないくらいあります」と話す井手さんは、本当に虫好きなのだなぁと、ほほえましい気持ちになりました。
体長1cmにも満たない小さな生物が多い昆虫たち。体のつくりや行動、能力にいたるまで、驚くこどばかりです。
秋まで開催しているこの展覧会。夏休みの研究だけでなく、何度となく訪れてムシの魅力にはまってください。
【展覧会情報】
特別展「昆虫 MANIAC」
◇会 場:国立科学博物館[東京・上野公園]
(〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20)
◇会 期:2024年7月13日(土)~10月14日(月・祝)
◇開館時間:9時~17時 (入場は16時30分まで)
◇休 館 日:7月16日(火)、9月2日(月)、9日(月)、17日(火)、24日(火)、30日(月)
◇入場料(税込):一般・大学生 2,100円、小・中・高校生 600円
※未就学児は無料。
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料。
※学生証、各種証明書をお持ちの方は、入場の際に提示。
◇問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)、03-5814-9898(FAX)
◇公式サイト:https://www.konchuten.jp
◇公式X(旧Twitter):@Konchu_MANIAC