旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2024年8月11日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

「盛岡さんさ踊り2024」 岩手大学生の夏の夜の舞いで最優秀賞を連続獲得

先頭のミスさんさが率いる、踊り開始直後の中央通りの様子 zoom
先頭のミスさんさが率いる、踊り開始直後の中央通りの様子 

盛岡さんさ踊りとは
盛岡さんさ踊りは、東北地方の夏祭りで岩手県を代表するものの一つです。毎年8月1日から4日間にわたり盛岡市で開催され、全国から多くの観光客が訪れます。この祭りは、山車を曳くものとは異なり、踊り手の全身を使った動きが作品となる、人の祭りです。整列した人たちの奏でる太鼓と笛の音で踊り手が一体となり、夏の夜にパレードで練り歩く姿は見応えがあります。音に合わせる「サッコラチョイワヤッセー」という掛け声は「幸呼来~」と言われて幸せを呼びこむもので、とても縁起がいいですね。

岩手大学のパレードの先頭ですzoom
岩手大学のパレードの先頭です

由来と歴史
盛岡さんさ踊りの起源は江戸時代にまで遡ります。当時、盛岡市内にある三ツ石神社で鬼退治が行われた祝いの踊りがその始まりとされています。当神社では、毎年さんさ踊りの安全祈願奉納が執り行われています。長い歴史を持つこの祭りは、地域の伝統として大切に受け継がれてきました。2014年には「和太鼓の同時演奏記録」で過去の記録の世界一を奪還するという偉業を成し遂げ、歴史と規模の大きさは圧倒的です。

開催時期の盛岡駅は、各地から新幹線などで訪れる多くの観光客を迎えます。駅前広場では、昼間から「おもてなしさんさ」として短時間の踊りを披露しています。今年の開催期間は、一時的に雨が降ったものの晴天に恵まれ、昼の披露会場の踊り子さん達の顔から汗が吹き出ていました。

先頭中央の田口さんを中心にパレードが進みますzoom
先頭中央の田口さんを中心にパレードが進みます

岩手大学の学生に聞く
踊り開始前の待機場所にて、岩手大学で和太鼓パートの責任者を務める田口京弥さんに話
を聞くことができました。田口さんは、大学に入り盛岡さんさ踊りを始め、毎年参加してい
る学生の一人です。

岩手大学 4 年生・和太鼓パート責任者 田口京弥(きょうや)さん

―田口さんの役割は何ですか
盛岡さんさ踊りは、僕にとって特別な祭りです。和太鼓のリズムに合わせて踊り手がまとま
り、その感覚は言葉では表せません。太鼓パートのリード役として責任者の立場にいますの
で、僕の太鼓に合わせて皆がテンポを合わせます。

―田口さんのさんさ踊りの経歴を教えてください
僕は秋田出身で岩手大学に入ってからさんさ踊りを始めました。経験は3年強になります。

―和太鼓の魅力は何ですか
和太鼓の魅力は、その迫力とリズムのハーモニーです。大きな太鼓の音が体全体に響き渡り、
心地よいリズムが踊り手と観客を一つにします。また、和太鼓の演奏には技術と体力が必要
で、練習を重ねることで一体感が生まれます。

―今年の意気込みを教えてください
2023 年は各日の参加者の中から選ばれる最優秀賞を受賞しましたので、2024 年の今年も狙
っています。練習をたくさんこなしてきましたので、普段通りにできれば可能性はあると思
っています。沿道の皆さんと一丸となって盛り上がれるように頑張ります。(田口さん)

岩手大学の皆さんzoom
岩手大学の皆さん

盛岡さんさ踊りの魅力
盛岡さんさ踊りの魅力は、そのダイナミックなパフォーマンスだけではありません。職場から町内会、有志による集団など様々な団体が参加しており、祭りを通じて地域社会が一つになる姿は崇高であり、その雰囲気に触れることで、観客も参加者も一体感を感じることができます。参加者のまとう浴衣のカラーやデザインを見て楽しむこともできます。

きれいな体形で進む岩手大学の皆さんzoom
きれいな体形で進む岩手大学の皆さん

踊りを見る
パレードスタート前の岩手県公会堂前は踊り手が整列し、凛とした静寂の中で合図を待っています。18時のスタートとともに太鼓が打ち鳴らされ「ミスさんさ踊り」を先頭に、踊りの輪が進んでいきます。

一斉に奏される和太鼓と笛のリズムが参加者の足を軽やかにしてくれているようです。今年は202と参加団体数が多く、毎日演者が入れ替わる中で、この日は「MCL盛岡外語観光&ブライダル専門学校」が集団の先頭を行進します。太鼓パートを先頭に笛と踊りの集団が続きます。職場や学校、自衛隊の集団にまざり「つばめ幼稚園」は園児が一生懸命に列を保ちながら健気で可愛い姿を見せてくれました。北日本銀行は、きたぎんと書かれた花車を仕立てて、演台で踊りを披露しています。

最後の第6集団で、岩手大学のメンバーがパレードをスタートします。田口京弥さんは横七列に並ぶ先頭中央で集団を率いていきます。隊列は一糸乱れず、身体を左右に揺らせる踊りの場面でも動きに統一性があり、最後の一人まで動きが揃っています。近くで聞くと、太鼓の小気味よいリズムが迫ってきます。岩手大学は太鼓のパートが列の前後に配されていることから、聴衆に与えるリズムが力強く、列の最後まで迫力が続くのだと思いました。

期間通しての優秀花車賞受賞の北日本銀行zoom
期間通しての優秀花車賞受賞の北日本銀行

終わりに
盛岡さんさ踊りは、地域の伝統を守り続けながらも、新しい挑戦を続ける祭りです。陸上自衛隊の隊列の後にZEALバトントワリングが続くなど、伝統に加えて新しさも見えます。

岩手大学の田口京弥さんをはじめ、多くの参加者が情熱を持って取り組んでいる姿に感動を覚えます。2024年の岩手大学は「最優秀賞」と新設された「統一さんさ踊り大賞」を手に入れて、校舎の歴史に新しいページが組み込まれました。この祭りを通じて感じた熱気や感動を、少しでも多くの方に伝えることができればうれしく思うと同時に、来年以降も震災復興が落ち着き、踊りの輪が続くように願います。

取材協力:
盛岡さんさ踊り実行委員会   ⇒ https://www.sansaodori.jp/
岩手大学さんさ踊り実行委員会 ⇒ instagram(@gandai_sansa)、 twitter(@gandai_sansa)

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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