旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2024年5月29日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

#未来に会いに行く旅 #ダイアログ・ウィズ・タイム(#Dialogue with time)

「対話の森」で開催中の「ダイアログ・ウィズ・タイム」zoom
「対話の森」で開催中の「ダイアログ・ウィズ・タイム」

「未来に会いに行こう。」
そんなキャッチコピーに惹かれて、「ダイアログ・ウィズ・タイム」を体験してきました。
 旅と言っても、アーサー・クラークのSF小説『2001年宇宙の旅』(2010年、2061年もありますね)の世界ではありません。「生き方との対話」をしようという体験型エンターテイメントです。

ダイアログ・ウィズ・タイムのタイムアテンドの皆さんzoom
ダイアログ・ウィズ・タイムのタイムアテンドの皆さん

「生き方との対話」…いまふうに言えば「はて?」
なんだかよくわからない。でも、私自身は、約24万人が体験したという「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を開催している「対話の森」の別プログラムだと知って、それは行ってみなければと思い、出かけたのでした。

 皆さんは、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を経験されましたか?
もしもご存じないという方のために、簡単にご紹介しましょう。

 視覚障害者の案内人に導かれて、完全に光を遮断した”純度100%の暗闇”を探検し、視覚以外の様々な感覚、 コミュニケーションを楽しむという「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。目的は「見えない世界」での体験を通じて、人と人とのかかわり、つながりをどう育み、保っていくのかを体感すること。大げさではなく、この体験を通して、私も自分の五感と人とのつながりを再発見できた気がしました。

ダイアログ・ウィズ・タイムのタイムアテンドは個性派揃いzoom
ダイアログ・ウィズ・タイムのタイムアテンドは個性派揃い

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」「ダイアログ・ウィズ・タイム」を運営するのは一般社団法人ダイアローグ ・ジャパン・ソサエティ。音のない世界で、言葉の壁を越えた対話を楽しむ「ダイアログ・イン・サイレンス」を加えた3事業を通して、たがいを認め、助けあう社会を実現することをミッションとしています。


 さて、「ダイアログ・ウィズ・タイム」で私たちは何を体験するのでしょう。
「歳を重ねることについて考えながら、 生き方について対話する体験型エンターテイメント」と案内には書かれています。ここでの体験を通して、 自らのこれからを考えるきっかけを生み出す。
 
 2012年にイスラエルで開催されて以降、 ドイツ、スイス、フィンランド、台湾、シンガポールでも開催。日本では、2017年にプレ開催、2019年8月に東京・新宿ルミネ0にて開催されました。現代人にとって未曽有の経験となったコロナ後の今回の開催は、「生き方」について、より深い発見がありそうです。

85歳のアテンドのいずみさんが作った指文字単語帳。聞こえない人と話したい、と手話を学んでいるそう。zoom
85歳のアテンドのいずみさんが作った指文字単語帳。聞こえない人と話したい、と手話を学んでいるそう。

 内容を少しご紹介しておきましょう。

あなたが一番良かったと思うのは何歳の時か?
あなたは年齢をごまかしたことがあるか?
高齢者は何歳からか?
あなたは何歳に戻りたいか?

 冒頭、こんな問いかけがありました。
日頃、自分の年齢を考える人も、考えない人もいるでしょう。年齢にもよるでしょうか。
 「未来を見に行く」旅ですが、何度となく自分を振り返らせてくれる時間にも思えました。
 
 
 体験を案内してくれるのは、 現在は70代から80代まで男女11人のタイムアテンドです。戦中生まれから、戦後の激しく時代が変化する中を生き抜いていらした人生の先輩たちです。

 彼らに導かれて、私たちにも早晩訪れる肉体的な変化の体験と、自分が将来なりたい高齢者やコミュニティにおける自分の在り方の自問、アテンドご自身が歩んできた人生経験の共有と対話を行います。

 一緒に旅する参加者ともおしゃべりします。私はたまたま20代、30代の男女と一緒でした。世代を超えて皆で話せるのは新鮮。少しタイムスリップして古き良き昭和の雰囲気を味わう時間もありました。

 そして、ここでは書くことができない驚きの体験も!
これぞ、人生だなぁと思える瞬間に、あなたも遭遇するはずです!

 

タイムアテンドの缶バッチも発売中。元気をもらえそう!zoom
タイムアテンドの缶バッチも発売中。元気をもらえそう!

 それにしても、このエンターテイメントの成否は、参加者と対話をしながら「未来を見せてくれる」というタイムアテンドの手腕によるところが大きいことを感じます。厳しい選抜試験、トレーニングを経てタイムアテンドになった方々ですから、それは皆さん、お元気で前向きで、優秀で魅力的な方ばかりのはず。でも、成功体験を聞きたいわけでもないし、苦労話に同情しに行くのも違う…。

 わがアテンド「セッちゃん」は、3枚の写真を見せながら3分間でご自分の人生81年をさらりと語りました。昭和20年生まれのセッちゃんは、好きな人の子供を産みたいとシングルマザーの道を選んで、仲居さんや着物の着つけ、茶道の先生などで女手ひとつでお嬢さんを育て上げたそう。おしとやかな中にも芯があり、着物のよく似合うご婦人でした。

 他のアテンドの話も聞いて見たくなりました。「ダイアログ・ウィズ・タイム」は、アテンドたちの人生や人となりに触発を受けながら、自分の人生のきっかけを発見する旅ということと理解しました。

 ところで、セッちゃんは一人娘に「お母さん、タイムをやった日はいい顔しているね」と言われるそうです。
 人と人との出会いや対話はもちろん大切ですが、その出会いをいくつになっても楽しめるセッちゃんが素晴らしい。  

 「ダイアログ・ウィズ・タイム」は、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」などと異なり、将来、誰でもアテンドになることができる「可能性」はあります。私もいつの日かアテンドになれるような前向きさをもって、日々、年齢を重ねていきたいと感じました。


ダイアログ・ウィズ・タイムのロゴマークzoom
ダイアログ・ウィズ・タイムのロゴマーク

開催概要
開催期間:2024/4/27(土)~6/30(日) ※一部、休演日あり。
開催場所:東京・竹芝のダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森®」
(東京都港区海岸1丁目10−45 アトレ竹芝 シアター棟 1F)

体験時間:約90分
料金(税込):大人 3,850円 / 学生 2,750円 / 小学生 1,650円

*WEBより事前予約制。チケット購入ほか詳細はhttps://taiwanomori.dialogue.or.jp/

フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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