旅の扉

  • 【連載コラム】こだわり×オタク心
  • 2024年4月30日更新
arT'vel -annex-
コラムニスト:Tomoko Nishio

クラシック音楽を通して世界を旅する。ラ・フォル・ジュルネ TOKYO開催

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ゴールデンウイークの東京の風物詩、音楽の祭典「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」が今年も2024年5月3日~5日に開催される。今回のテーマは「ORIGINES (オリジン) ――すべてはここからはじまった」。音楽の原点(オリジン)という視点から、古楽から現代音楽に至るまで、クラシックのみならずジャズや和太鼓、民族楽器など多様な音楽を取り上げる。1公演は45~60分前後、価格も1500~3000円と、気軽に楽しめるほか、会場となる有楽町国際フォーラムや丸の内エリアでは無料コンサートも開催される。通りすがりにふらっと立ち寄り、キッチンカーのワインを傾けながら音楽に耳を傾ける――そんな楽しみ方も、この公演の魅力の一つだ。
アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタン氏 ⒸteamMiurazoom
アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタン氏 ⒸteamMiura
■TOKYOに根を下ろしたナント生まれの音楽祭

ラ・フォル・ジュルネ(LFJ)は1995年、フランス西部の港町ナントで誕生したクラシック音楽祭だ。毎年「ベートーヴェン」「モーツァルト」あるいは「民族」「自然」など、テーマを設定し、市内のコンベンションセンターで5日間にわたり約300公演が開催される。しかも出演者はアーティスティック・ディレクターのルネ・マルタン氏がその慧眼をもって世界中から選りすぐった一流、あるいはのちに一流の仲間入りをして引く手あまたとなっているアーティストばかり。本物のクオリティに手軽な価格で触れることのできるとあって、現地では来場者の6割がクラシックコンサート初体験の者が占めるという。クラシック入門公演として、そしてナントの風物詩としても定着している。
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LFJはポルトガルのリスボン、スペインのビルバオ、ポーランドのワルシャワなど世界にも「輸出」され、2005年には「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」として東京に上陸する。マルタン氏をもって「世界で最も成功した地域」といわれるように、2007年には来場者数100万人を超えた。普段の公演では入場できない0歳児を連れて家族で音楽を楽しむことのできる「0歳からのクラシック」を世界に先駆けて開始したのも東京公演でのことだ。2018年には公演名を「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」へと変更。コロナ禍による中断・縮小を挟みつつも、2023年までに延べ884万人の来場者数を記録し、ゴールデンウイークの官庁街丸の内に賑わいをもたらした。
0歳からのコンサート ⒸteamMiurazoom
0歳からのコンサート ⒸteamMiura
■古楽から現代音楽まで。シルクロードやアメリカなど、音楽で世界を旅する

2024年のテーマ「オリジン(起源/ルーツ)」は世界のあらゆる国々の作曲家たちにインスピレーションを与えた古楽、バロック、そして民族音楽から自国音楽文化を発展させたロシアやハンガリー、チェコや北欧やスペインといった「国民楽派」、クラシックからさらに派生したジャズやミュージカル音楽などを取り上げる。12世紀のトゥルバドールの音楽、ヴィヴァルディの《四季》、バッハやハイドン、グリーク《ペール・ギュント》、ストラヴィンスキーの《春の祭典》、バーンスタインの《ウエスト・サイド物語》など、興味深いラインナップが目白押しなので、ぜひ下記リンクからプログラムをチェックしていただきたい。
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音楽の様式ばかりではなく楽器にも目を向ける。2000年前にバビロニアで生まれ、アラブやペルシア音楽には欠かせない「ウード」、アルメニアの伝統的な木管楽器「ドゥドゥク」を用いた音楽といったレアな民族音楽に触れられるのも興味深い。シルクロードの音色、デキシーランド・ジャズ、さらには林永哲による日本の和太鼓を取り上げるのもLFJならではだ。

音楽は生まれたちの魂やDNAを呼吸し、世界へと広がっていく。音楽を通した「世界の旅」も、実に楽しいものだ。
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ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024
■日程:2024年5月3日(金・祝)・4日(土・祝)・5日(日・祝)
■会場:東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、八重洲、日比谷


プログラムは以下の公式サイトを参照
https://www.lfj.jp/lfj_2024/
コラムニスト:Tomoko Nishio
旅行業界・旅&芸術文化ライター、動物好き。旅行業界誌記者・編集者を経てフリーの旅行ライターに。南仏中世と「三銃士」オタク。歴史とアートに軸を置きつつ、絵画、バレエ、音楽、物語、映画、漫画のロケ地・聖地巡り、海外旅行や小さなお散歩まで、様々な視点で旅を発信。「旅」は生活のなかにもあり。

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