旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2024年1月22日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

ミロのヴィーナス降臨! 午後のひとときをアートとともに楽しむ「メズム東京」のアフタヌーン・エキシビション

愛と美の女神「ミロのヴィーナス」がモチーフ、「メズム東京」のアフタヌーン・エキシビション。zoom
愛と美の女神「ミロのヴィーナス」がモチーフ、「メズム東京」のアフタヌーン・エキシビション。
東京のウォーターフロントを一望するロケーションに立つホテル「メズム東京、オートグラフ コレクション」。このホテルのアフタヌーンティー“アフタヌーン・エキシビション”は、アート鑑賞を楽しむ気分でアフタヌーンティーを味わえると人気です。1月から登場している新作メニューをご紹介しましょう。

記念すべき第10作は、初めて彫刻作品をモチーフにしたプログラム
これまで数々の名画をテーマに展開してきたアフタヌーンティー・エキシビション。ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、モネの「日傘をさす女性」など、名画の世界観を忠実に再現し、作品が描かれた時代とその土地の食を取り入れながら、遊び心あるメニューで目も舌も楽しませてくれてきました。
これまでは名画がテーマでしたが、10作目は初めて彫刻作品をモチーフにしたもの。zoom
これまでは名画がテーマでしたが、10作目は初めて彫刻作品をモチーフにしたもの。
新作の“アフタヌーン・エキシビション チャプター10”は、古代ギリシャの彫刻「ミロのビーナス」をモチーフにした『アフロディーテ(APHRODITE)』。10作目にして初めて彫刻作品がモチーフになっています。
「ミロのヴィーナス」といえば、パリのルーヴル美術館を代表する彫刻作品。古代ギリシャ神話に登場する愛と美をつかさどる女神アフロディーテの像と考えられ、紀元前2世紀頃の古代ギリシャで制作されたといわれています。発見されたのは1820年、オスマン帝国統治下のミロス島から出土し、のちにフランスがトルコ政府から買い上げてルーヴルで保管・管理されるようになりました。
さて、美術のお勉強はここまで。肝心のアフタヌーン・エキシビションのメニューをご紹介しましょう。

古代ギリシャにちなんだ8種類のセイボリー&スイーツ
長さ50cm近くもある専用プレートで提供されるのが、8種類のセイボリーとスイーツ。ミロのヴィーナスが発見されたギリシャや、地中海地方の伝統食を取り入れた内容で、しっかりと時代考証もされています。

「古代ギリシャといえば、食材も調理法もそこまで発達していなかった時代です。残されている資料を参考に、いったんは本場のレシピで作ってみたのですが、必ずしも現代の日本人の舌に合うものではありませんでした。そのため、食感や甘味の調整に苦労したものもあります」と話してくれたのは、メニュー開発を担当したキュリナリーアーティストでパティシエの養父(やぶ)直人さん。
地中海地方の伝統的なスイーツを中心に、古代から伝わる料理などギリシャ神話の一端を楽しめる内容。zoom
地中海地方の伝統的なスイーツを中心に、古代から伝わる料理などギリシャ神話の一端を楽しめる内容。
何度も試作を繰り返し完成したのは、ギリシャの定番スイーツのアーモンドクッキー「クラビエデス」、パンケーキの起源になった生地をクレープ風に薄く焼き蒸し鶏を巻いた「テガナイト」。「バクラヴァ」はトルコの伝統菓子として知られていますが、そのままでは甘すぎるため、砂糖の分量を減らしプルーンのペーストを加えて甘さを調整し、風味を増してあります。
私のお気に入りは、「ハルヴァ」。セモリナ粉とアーモンド、レーズンを使った中東発祥のお菓子で、アマレットの香りとむっちりした食感があとを引きます。挽き肉とナスのチーズグラタン「ムサカ」は、ギリシャの伝統的なパン「クルーリ」と一緒に食べると、美味しさが増します。「クルーリ」のリング状の形は永遠を意味し、ギリシャでは縁起のいい食べ物とされているのだとか。新春の運気アップも期待できるかも?
“チーズケーキの原型”とされ、古代のアスリートも食べたといわれるのが「トリヨン」。古代オリンピックで勝者に贈られた月桂樹の王冠をイメージし、ローリエの香りを効かせてあるのがポイント。古代ギリシャ時代には祭事にも用いられたゴマに、当時は生命のシンボルとされていたハチミツと、クルミを使ったのが「パステリ」。これも食べるとパワーがアップしてきそう。
ひと口サイズのセイボリー&スイーツをリーフレットの解説と見比べながら食べていくと、ミロのヴィーナスが誕生した古代ギリシャ時代を旅して、当時の人々の食生活を体験しているような感覚を味わえますよ。

メインプレートのヴィーナスは、食べるのが惜しくなるほどの美しさ!
そしていよいよ、「ミロのヴィーナス」をモチーフにしたメインプレートの登場です。純白の石膏像を思わせるヴィーナス像は、濃厚な味わいのギリシャヨーグルトを使ったアイスクリームにピーチコンポートを詰め、ホワイトチョコを吹き付けたもの。かなりしっかりとしていて、簡単には倒れませんが、その美しい姿にどこからナイフを入れるか迷ってしまいます。
上/ギリシャヨーグルトのアイスクリームで象った「ミロのヴィーナス」。下/2種類のソースと、華やかなモクテルを添えて。zoom
上/ギリシャヨーグルトのアイスクリームで象った「ミロのヴィーナス」。下/2種類のソースと、華やかなモクテルを添えて。
「本物のヴィーナスの形を忠実に再現したオリジナルの抜き型で作っていますが、あまりにリアルだと食べにくいでしょう(笑)。目鼻立ちや髪の毛のラインをソフトに仕上げるなど工夫しているんですよ」と養父さん。
まずはそのまま味わって、お好みでアプリコットとラズベリーの色鮮やかなソースを掛けて、アート作品を完成させるように味の変化を楽しむのがおすすめです。
ペアリングのモクテル&ティーは、レモングラスとローズマリーが香る温かいハーブティーと、梅スパークリングにローズシロップを加えた華やかな「梅とバラのモクテル」。ちょっと贅沢に、シャンパンをアレンジすることもできます。
クリエイティブディレクターの小泉堅太郎さん(右)と、キュリナリーアーティストの養父直人さん。zoom
クリエイティブディレクターの小泉堅太郎さん(右)と、キュリナリーアーティストの養父直人さん。
新作メニューお披露目に合わせ、クリエイティブディレクターの小泉堅太郎さんと、養父さんとのトークセッションも行われました。
「これまで名画をモチーフにしたアフタヌーン・エキシビションをご提供してきましたが、彫刻をモチーフにした作品を作るのは初めての試みです。チームにとっては大きなチャレンジで苦労もありましたが、美しいプロポーションはもちろん、美味しさも自信をもってお届けできます。作品の世界観とともに、このメズム東京の世界観も楽しんでいただきたいですね」と小泉さん。

ウォーターフロントの眺望とともに楽しむアート感覚のアフタヌーンティー・エキシビション
ミロのヴィーナスをモチーフにしたアフタヌーン・エキシビション『アフロディーテ』を味わえるのは、「メズム東京」16階のバー&ラウンジ「ウィスク(Whisk)」。浜離宮庭園を中心としたウォーターフロントの眺望が色がる空間で午後のひととき、ティータイムとともにアート鑑賞を楽しむ気分で出掛けてみたいものです。
芸術家のアトリエをテーマにしたバー&ラウンジ「ウィスク」は、ウォターフロントを一望する心地の良いカフェ。zoom
芸術家のアトリエをテーマにしたバー&ラウンジ「ウィスク」は、ウォターフロントを一望する心地の良いカフェ。
余談ですが、ミロのヴィーナスがルーヴル美術館を出て海外に渡ったのは、たったの1回だけ。しかも、その地が日本であることは意外に知られていません。1964年に東京の国立西洋博物館と、京都の京都市美術館で特別展示されていますが、これ以外はルーヴルから出たことがない深窓のご令嬢というところでしょうか。そんなエピソードを知ると、ますます特別感が増してきませんか。美の女神をテーマにしたメニューは、バレンタインデーやホワイトデーに大切な人と過ごす時間にもぴったりです。

◆アフタヌーン・エキシビション チャプター10『アフロディーテ(APHRODITE)』
メズム東京、オートグラフ コレクション16階 バー&ラウンジ「ウィスク」
東京都港区海岸1-10-30
TEL 03-5777-1111
5月2日(木)まで、1日24食限定 
※1月末までは平日のみ、2月以降は週末もご提供。
14:00~/14:30~/15:00(1日前の21:00までに要予約)
料金:6,500円(消費税・15%のサービス料込)
予約はこちらから➔ https://bit.ly/3GnVOor
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
risvel facebook