旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2023年3月4日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

陽気に誘われて出かけたい、名画のなかのさまざまな“愛”に酔う「ルーヴル美術館展 愛を描く」

春らしい“愛”がテーマの展覧会は、国立新美術館にて6月12日まで開催中。zoom
春らしい“愛”がテーマの展覧会は、国立新美術館にて6月12日まで開催中。
「パリを旅するなら、どこへ行きたい?」と聞かれたら、多くの人が
「ルーヴル美術館!」と答えるに違いありません。
世界の美術館のなかでも高い人気を誇るルーヴル美術館。その膨大なコレクションから、“愛”をテーマに厳選された73点の名画を公開する「ルーヴル美術館展 愛を描く」が、3月1日から国立新美術館で始まっています。

4年ぶりのルーヴル展に珠玉の“愛”の絵画が集結!
国立新美術館では4年ぶりとなる「ルーヴル美術館展」。今回のテーマである“愛”は人間の根源的な感情であり、古来より西洋美術の根幹をなすもののひとつとされてきました。ルーヴルの膨大なコレクションでも、ギリシア・ローマ神話を題材とするものから、宗教画、現実の人間の日常的な愛の姿を描く風俗画まで、その形はさまざまです。本展では、西洋社会における愛の概念が絵画芸術にどのように描かれてきたのか、16世紀から19世紀半ばまで、西洋各国の主要画家の名画によってその表現の形をひもとくという内容です。
ルーヴル美術館の膨大なコレクションから年代別・テーマ別に選りすぐり愛の表現の形をひもとくという、かつてない趣向の展覧会。zoom
ルーヴル美術館の膨大なコレクションから年代別・テーマ別に選りすぐり愛の表現の形をひもとくという、かつてない趣向の展覧会。
「愛の発明」と題したプロローグのセクションで迎えてくれるのは、愛の神様「アモル」がたくさん描かれた作品。羽が生えた子どもたち「アモル」の別名は、そう!キューピッドです。ヨーロッパの神話では、アモルが放った矢が心臓に当たると、誰かを愛する気持ちが生まれるとされてきました。でも、ハートを射抜くことができる矢は1本だけ。下のほうでは不要になった矢を燃やす、ちょっと意地悪そうにも見える(?)アモルの姿が描かれています。燃やされているのはハートを射抜くことができなかった矢なのか、それともすでに冷めてしまった愛を表しているのか……。フランソワ・ブーシェ≪アモルの標的≫は愛が生まれる瞬間を描いたとされていますが、鑑賞する人によっていろいろな解釈ができそうです。
セクションごとにそれぞれのテーマの世界観に合わせて展示室の壁面の色が変えられているのも特徴。zoom
セクションごとにそれぞれのテーマの世界観に合わせて展示室の壁面の色が変えられているのも特徴。
展示室はさらに古代神話における欲望を描いた第1章から、キリスト教の宗教画を集めた第2章、日常生活の情景やエロティシズムといった風俗画中心の第3章、19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義を描いた第4章へと続きます。美しく崇高な愛の世界もあれば、苦悩を感じさせるものや残酷で悲しい結末、ときにエロティックで人間臭さを感じさせるものも。愛って、きれいなだけじゃないんですよね。そんな当然のことに改めて気付かされるとともに、昔のほうが愛の解釈や表現方法はずっと自由で、ジェンダーレスだったようにも思えてきました。
会期中は混雑が予想されるため、事前予約制の「日時指定券」を購入してから訪れるのが確実。zoom
会期中は混雑が予想されるため、事前予約制の「日時指定券」を購入してから訪れるのが確実。
満島ひかりさんの案内とともに楽しみたい
音声ガイドを担当している「案内人」は、女優の満島ひかりさん。美術展の音声ガイドは今回が初挑戦とのことで、その心境を、
「愛にまつわるお話だからというのもありますが、口に出したことがないような言語だとか、ちょっと恥ずかしくなるような言葉とか、怒りを抑えてお芝居にして話してみたり、恥じらいもセリフにして話してみたりしました」
と語っていました。
少しハスキーな満島さんの声は、官能的なシーンでも甘くなり過ぎず、心地よく耳に響きます。音声ガイドのなかに、作品のイメージ合わせたクラシック音楽や共演の声優・森川智之さんとのトークも盛り込まれていて、視覚だけで鑑賞するより数倍楽しめますよ。
音声ガイドを担当する「案内人」の満島ひかりさん。三浦大知さんとのユニットで、展覧会テーマソング「eden」を唄っています。(©NTV)zoom
音声ガイドを担当する「案内人」の満島ひかりさん。三浦大知さんとのユニットで、展覧会テーマソング「eden」を唄っています。(©NTV)
本展のために作られた限定グッズが多彩に揃うミュージアムショップも素通りできません。図録とともにおすすめはトートバッグとサーモボトル。最近、人気再燃中の鎌倉紅谷の「クルミッ子」は、「ルーヴルッ子」の名で登場していて、お土産にすると喜ばれそう。
そろそろ桜の開花情報も届く季節。暖かな春の日差しに誘われて、“愛の世界”に浸るひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
展覧会図録をはじめ、限定グッズが並ぶミュージアムショップ。「東京ミッドタウン」内のレストランやショップ にも、本展と連動したメニューや雑貨が登場しています。zoom
展覧会図録をはじめ、限定グッズが並ぶミュージアムショップ。「東京ミッドタウン」内のレストランやショップ にも、本展と連動したメニューや雑貨が登場しています。
●ルーヴル美術館展 愛を描く
会  期 : 2023年3月1日〜6月12日
会  場 : 国立新美術館 東京都港区六本木7-22-2
       TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間 : 10:00〜18:00(金・土曜~20:00) ※入場は閉館の30分前まで 
休 館 日 : 火曜(ただし3月21日・5月2日は開館)、3月22日
料  金 : 一般2,100円、大学生1,400円、高校生1,000円
https://ntv.co.jp/love_louvre/
※6月27日~9月24日は、京都市京セラ美術館にて「京都展」を開催。
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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