旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年5月11日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

レトロホテルで港町・小樽の魅力を再発見 ~OMOホッピングの旅  #02「OMO5(おもふぁいぶ)小樽」~

1933(昭和8)年に建てられた歴史的建造物をリノベーションした「OMO5小樽 by 星野リゾート」の南館。zoom
1933(昭和8)年に建てられた歴史的建造物をリノベーションした「OMO5小樽 by 星野リゾート」の南館。
星野リゾートのホテルブランド「OMO(おも)」のコンセプトは、「眠るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市ホテル」。これまで機能性とデザインを追求した建物が中心でしたが今年1月7日、小樽にオープンした「OMO5小樽 by 星野リゾート」は、歴史的建造物をリノベーション。レトロな建物に泊まり街の歴史や文化、食の新たな一面を再発見できる旅を提案してくれます。

「北のウォール街」に立つ小樽市指定歴史的建造物
江戸時代から明治時代にかけてニシン漁で栄え、道内で採掘された石炭の積出港としても大いに賑わった小樽。ホテルがある界隈はかつて「北のウォール街」と呼ばれ、最盛期には25もの金融機関が支店を構える、北日本随一の金融街でした。現在でも「日本銀行旧小樽支店(金融資料館)」をはじめとした歴史的建造物が軒を連ねています。
レトロなデザインの南館の階段と客室。北館の「OMOベース」に飾られたオルゴールは、客室で音色を楽しむことができる。zoom
レトロなデザインの南館の階段と客室。北館の「OMOベース」に飾られたオルゴールは、客室で音色を楽しむことができる。
「OMO5小樽」は、市指定歴史的建造物の「旧小樽商工会議所」をリノベーションした南館と、レセプションがある北館の2館で構成されています。コンセプトを「ソーラン、目覚めの港町」としたのは、「ソーラン」という掛け声の力強さと、この街の魅力を再発見できるような旅を提案したいという想いからなのだとか。早朝から活気あふれる港町・小樽にぴったりだと思いませんか。

レトロな建物が多く残る街の魅力を満喫するなら、旧小樽商工会議所で使われていた階段がそのまま残る南館に滞在を。当時の棚や鏡台などの家具を配置した廊下や石造りの階段を歩くと、かつてこのあたりが金融街として栄えた時代にタイムスリップした気分を味わえます。北館にあるパブリックスペース「OMOベース」にも当時の調度品を装飾として取り入れているので、館内のいたるところでレトロな雰囲気に浸れます。
蔵の扉をイメージし、商工会議所時代に使われていた消火栓や分電盤などが壁に飾られた「ご近所マップ」。zoom
蔵の扉をイメージし、商工会議所時代に使われていた消火栓や分電盤などが壁に飾られた「ご近所マップ」。
ホテルから小樽運河へは徒歩数分。夕食前には運河沿いをのんびり散策するのがおすすめです。街歩きに出掛ける前にチェックしたいのが、OMOベースにある「ご近所マップ」。小樽硝子のショップや海鮮料理の店、ワインや洋食を楽しめるレストラン、スイーツの人気店など、「ご近所OMOレンジャー(以下、OMOレンジャー)」が自らの足で集めてきたリアルな情報が満載。しかもこのホテルには、地元・小樽出身のスタッフがいるので、頼りになりますね。

小樽とスペインが融合したレストラン「OMOカフェ&ダイニング」でスペイン旅行気分を味わう
このホテルに滞在したら味わってみたいのが、地元食材をスペイン料理にアレンジした宿泊者限定のディナーです。南館3階にある「OMOカフェ&ダイニング」は商工会議所時代、大会議室として使われていたスペース。高い天井と柱のアーチが、金融で栄えた華やかかりしころを彷彿させます。

メニューを紹介すると、生ハムのアミューズ、ガスパチョ(スープ)に、10種類以上のタパスから好みの6種類を選べる前菜、メイン料理に、スイーツなどを組み合わせたコース仕立て。メインにはニシンのミックスパエリアをぜひ食べてみてください。旨みと食感を残しつつこんがりと焼き上げ骨まで食べられるように調理したもので、ニシン独特の香りと味わいがスペイン料理ととても相性が良いことを発見しました。チャコリ(バスク地方の微発泡性ワイン)、ワインをはじめとしたドリンク飲み放題に、ビュッフェスタイルのスイーツも食べ放題。これで6,600円はお得です。

翌朝の朝食ビュッフェにも、スペインスタイルの料理が並びます。目の前で仕上げるスペイン風オムレツや揚げたてのチュロスは、お代わりしたくなるおいしさ。和食では、彩りが美しいパフェチラシや、地元の市場直送の和惣菜もあり、ホテルに居ながらにして小樽とスペイン、両方の味をいっぺんに楽しめるというわけ。小樽といえばお鮨にもひかれますが、ランチでも食べられますよね。ホテル滞在中はここでしか食べられないオリジナル料理を味わってみてはいかがでしょうか。
スペイン料理をアレンジしたディナーメニュー(6,600円)。おすすめは、ニシンのミックスパエリア。zoom
スペイン料理をアレンジしたディナーメニュー(6,600円)。おすすめは、ニシンのミックスパエリア。
小樽を知り尽くしたOMOレンジャーと朝の小樽を歩く
「OMO」に滞在したら必ずチェックすることにしているのが、OMOレンジャーによるご近所ガイド。翌朝の朝食後は、「朝の境町通り散歩」に参加してみました。早朝、観光客がまだ少ない時間帯に、明治から大正時代の歴史的建造物が残るエリアを、OMOレンジャーが厳選したスポット中心に約1時間かけて案内してくれます。一番の見どころは、東京駅や「日本銀行本店本館」を手掛けたことで知られる辰野金吾の設計による「日本銀行旧小樽支店」。坂道に立つこの建物周辺では、ヨーロッパの街並みを歩くような雰囲気を味わえます。朝食後のお散歩にちょうどよく、ツアー終了後には気になったスポットを改めて訪ねてみるのもいいでしょう。
上左/のんびり散策するのが楽しい小樽運河周辺。上右・下左/「朝の境町通り散歩」では、かつて「北のウォール街」と呼ばれたエリアをOMOレンジャーの案内で歩く。下右/朝の散歩の後は、「目覚めのフロマージュパルフェ」(ドリンク付き1,870円)を。zoom
上左/のんびり散策するのが楽しい小樽運河周辺。上右・下左/「朝の境町通り散歩」では、かつて「北のウォール街」と呼ばれたエリアをOMOレンジャーの案内で歩く。下右/朝の散歩の後は、「目覚めのフロマージュパルフェ」(ドリンク付き1,870円)を。
スイーツの人気店が多くあることでも知られる小樽。その小樽を代表する洋菓子店「LeTAO(ルタオ)」とコラボレーションしたパフェがあると聞けば、食べずに帰るわけにはいきません。札幌が夜の「〆パフェ」なら、早朝から元気いっぱいに活動したい小樽では「朝パフェ」というわけです。

「目覚めのフロマージュパルフェ」は、ヨーグルトなどの発酵食材に、北海道産のスーパーフルーツ、ハスカップとアロニアのソルベ&ソースを使用したもの。LeTAOオリジナルのフロマージュクリームやマスカルポーネブリュレも使われています。朝散歩で歩いた境町通り商店街にある店舗2階の窓際に、専用席が用意されているのも魅力。趣ある歴史的建造物やショップを眺め、この後の予定を考えながら、のんびり過ごせます。

小樽といえば朝市。地元の人が集う市場に寄らずには帰れない!
小樽の生活文化の一つに、朝市があります。市内には9カ所の市場が点在し、そのなかでいちばん朝早くオープンするのが「鱗友(りんゆう)市場」。早朝、ここを訪れるツアーもあるのですが、OMOレンジャーから「地元の人から愛される、ローカルな雰囲気を楽しめる市場」とおすすめされた「南樽(なんたる)市場」を訪ねてみることにしました。JR小樽駅のお隣、南樽駅から徒歩数分の場所にある市場は、昭和の時代のレトロなスーパーのような雰囲気。鮮魚や総菜のほか、生活雑貨、衣料品を扱う店も並びます。

市場内をぐるっと一巡しお話しを伺ったのは、ホテルの朝食ビュッフェに並ぶ和惣菜を提供している「おかもと商店」の店長・岡本敦子さんと、ご主人で果実や野菜を扱う康裕さんご夫妻。大型スーパーがなかった時代、地元の人にとって市場がスーパー代わりだったのだとか。現在でも地元の人の生活に欠かせないお店が残り、この家庭的な雰囲気に惹かれ札幌方面からやってくるお客さんや、北海道を訪れるたびに立ち寄るリピーターの旅行者も多いのだと教えてくれました。
上/「南樽市場」のイートインスペース。下/「おかもと商店」の岡本さんご夫妻とお惣菜。どれも美味しそうで目移りしてしまう。zoom
上/「南樽市場」のイートインスペース。下/「おかもと商店」の岡本さんご夫妻とお惣菜。どれも美味しそうで目移りしてしまう。
歴史的建造物が残るレトロな町並み、どこからか漁師たちの勇ましい掛け声が聞こえてきそうな港町、地元の人が集う市場。ほかにも、「旧三井銀行小樽支店」「旧北海道拓殖銀行小樽支店」などの建物を利用した美術館が集まる「小樽芸術村」など、アートの見どころにも事欠きません。この街の魅力はまだまだ奥深く、1日や2日では楽しみ尽くせないことがわかりました。これまで札幌から日帰りで訪れたことは何度かあったのですが、宿泊しなければわからない魅力をまだまだ掘り起こせそうな気がしています。

「ご近所ツアー」では、7・8月限定で小樽運河をクルージングしながらビールを楽しむ「小樽運河ビアクルージング」が開催されます。運河から眺めるレトロタウン小樽の街並みは、また違った表情を見せてくれることでしょう。

●OMO5小樽 by 星野リゾート
北海道小樽市色内1-6-31
1泊1室16,000円~(税込み・食事別)
TEL 0570-073-099(OMO予約センター)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo5otaru/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
risvel facebook