旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2021年6月19日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

沖縄・離島ホッピングの旅 #02 世界自然遺産の島・西表島でトレッキング!

階段状に流れ落ちる姿が特徴的な「ゲータの滝」を目指すトレッキングを体験。zoom
階段状に流れ落ちる姿が特徴的な「ゲータの滝」を目指すトレッキングを体験。
間もなく、世界自然遺産登録が決定する西表島。周囲約130kmの島の90%以上が亜熱帯の原生林に覆われたこの島は、希少な動植物の宝庫です。その独自の生物多様性が認められ、「やんばる」と呼ばれる沖縄本島北部、鹿児島県の奄美大島・徳之島とともに、世界自然遺産の登録勧告が出されたのは記憶に新しいところ。
注目度急上中の西表島で、自然の懐に飛び込むべくトレッキングを体験してきました。

大小1000以上の滝が待ち受ける、日本最後の秘境

離島でありながら水が豊かな西表島には、支流を合わせ川だけでも100以上、滝は大小1000以上もあるのだとか。その滝を目指すトレッキングコースを歩くのが、今回のお楽しみ。「星野リゾート 西表島ホテル」でアクティビティマネージャーを務める福士英人さんの案内で、「ゲータの滝」を目指しました。

ホテルから15分ほど車を走らせた場所に、トレッキングコースの入り口があります。道路脇には“イリオモテヤマネコ飛び出し注意!!”の標識。
「もしや、ここで会えるのでは?」
目にした途端、猫好きの心が躍ります。ガードレールを乗り越えると、そこはもう亜熱帯のジャングルです。
「林道から行きますか、それとも川のなかを歩きますか?」と、福士さん。
「せっかくなら、どっちも歩きたい!」ということで、行きは林道を、帰りは川のなかを歩くことに決定です。
左上/根が板状に発達した板根(バンコン)。左下/巨大なシダの葉が木陰を作る。右/ロープを頼りに登る岩場も数カ所に。zoom
左上/根が板状に発達した板根(バンコン)。左下/巨大なシダの葉が木陰を作る。右/ロープを頼りに登る岩場も数カ所に。
ジャングル探検気分を満喫できるトレッキングコース

まず、目に飛び込んできたのが、板状に根を伸ばしたサキシマスオウの板根(バンコン)。昔の人はこれを船の舵やまな板などに利用したといいます。複雑にねじれた幹や、大人の握りこぶしより大きなゼンマイ。水辺の岩肌にぺったりくっついているのは、ムツゴロウにも似たトビハゼの仲間。海水と淡水が混じり合う汽水域に生息する魚で、ジャングルのようなこの場所にまで海水が入り込んでいることが分かります。透明な体をもつ川エビは、イリオモテヤマネコの大好物なのだそうです。

木の根っこが地面を覆う林道の途中から、ロープ場や岩伝いに登る場所がいくつか現れますが、のんびり小1時間も歩くと水音が聞こえてきました。最後の岩場を登り切れば、目的の「ゲータの滝」に到着。階段状の岩肌を流れ落ちる水が、しぶきとともにひんやりした空気を運んできて、汗だくのカラダをどんどん冷やしていく、その心地よさにしばしうっとり……。
四角く切り出した岩を積み上げたようにも見えるけれど、間違いなく自然が創り出したもの。この滝を上っていく人もいるとか。zoom
四角く切り出した岩を積み上げたようにも見えるけれど、間違いなく自然が創り出したもの。この滝を上っていく人もいるとか。
下から見上げただけでは滝のてっぺんがどこにあるのか伺えませんが、「ゲータの滝」は数段に分かれていて、この上にさらにいくつかの滝があるのだとか。頂上を目指し、滝登りにチャレンジする人もいるそうです。

滝のマイナスイオンとヤエヤマブルーに癒される

滝から視線を移し振り向くと、想像もしていなかった景色が目に飛び込んできました。ジャングルの先に広がる見事なグラデーションの海。ここは滝も、川も、ジャングルも、そして海までも、すべてを一度に楽しめる絶景スポットなのです。
ジャングルの先に広がる海の色の美しさに感動! この日は大潮の干潮時間で、広大な干潟が出現。zoom
ジャングルの先に広がる海の色の美しさに感動! この日は大潮の干潮時間で、広大な干潟が出現。
復路は予定通り、川のなかをじゃぶじゃぶ歩きます。時々、水深を見誤って深みにはまってしまうのもまた楽しく、雨の日に長靴を履いて水たまりを探して歩いたり、川遊びをした子どものころを思い出しました。
川のなかを歩いて帰路へ。水のなかを歩けるフェルトブーツは、ホテルで用意してくれる。zoom
川のなかを歩いて帰路へ。水のなかを歩けるフェルトブーツは、ホテルで用意してくれる。
木陰や水辺で希少な昆虫に遭遇する

コース途中で見つけたのが、コナカハグロトンボやベニボシカミキリ。赤色が鮮やかなベニボシカミキリは、島中のトレッキングコースを歩いている福士さんでさえも、たまにしか見掛けない珍しい昆虫なのだとか。

今回、残念ながらイリオモテヤマネコには出会えませんでしたが、数えきれないほどのトレッキングコースが縦横無尽に走る西表島。たった一度、2時間ばかり歩いただけでは、入り口をのぞいただけにすぎません。そんな名残惜しさを感じながら、帰ってきました。
左上/看板を見るだけで、猫好きは萌えます! 右上/シダの茎に残る落葉痕。小判のような形から、金運のご利益があるといわれる。左下/緑色の羽が美しい、ヤエヤマカラスアゲハ。右下/鮮やかな赤色が目を引く、ベニボシカミキリ。zoom
左上/看板を見るだけで、猫好きは萌えます! 右上/シダの茎に残る落葉痕。小判のような形から、金運のご利益があるといわれる。左下/緑色の羽が美しい、ヤエヤマカラスアゲハ。右下/鮮やかな赤色が目を引く、ベニボシカミキリ。
「星野リゾート 西表島ホテル」では、トレッキングが初めての人や小さな子どもでも安心して参加できるショートコースから、カヤック、ジャングルクルーズを組み合わせたやや上級向きのコース、夜のジャングル探検まで、体力と所要時間に応じて選べるプログラムを用意しています。次回は、万全の装備でもっと長いコースを歩いてみたい。そして、イリオモテヤマネコにも出会えますように……。

●協力: 星野リゾート 西表島ホテル
沖縄県八重山郡竹富町上原2-2
TEL 0570-073-022(星野リゾート予約センター)/0980-85-7111(アクティビティデスク)
URL: https://iriomotehotel.com
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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