7月上旬に暑い日本を飛び出し、冬のニュージーランドを訪れました。現地は冬とはいえ、北島の冬は10℃を下回らないくらいであり、薄手のコートが一枚あれば充分です。一日の中で晴れ、曇り、雨と目まぐるしく天候の変わることが多い時期のため、虹が多く見られるのも楽しみの一つです。成田からのニュージーランド航空便を降りて、朝のオークランド空港でレンタカーに乗り込みました。
ドライブを楽しみながらコロマンデルへ
運転は、日本と同じ左側通行ながら日本では普及していない信号のない交差点「ラウンドアバウト」が存在します。信号で待たされるよりもずっと快適。慣れないのは、街なか運転の100km/h速度制限です。それ以下の規制の場合に最高速度が表示されます。
車で向かうのは、オークランドの東に広がるハウラキ湾対岸の街、コロマンデル。1800年代中盤のゴールドラッシュで栄えた街で、多くが森林保護区の静かな場所になります。
ナビ代わりに使ったGoogle Mapでは所要時間は2時間半と表示されるのですが、どうもそれは速度規制いっぱいで走ってのこと。コロマンデルでは写真を撮りたくなるような風光明媚な場所も多く、その分時間が掛かりました。
カフェストップにしようと「Café Copu」で休憩します。肌寒かったので、温かいマッシュルームのミートパイを見つけ、コーヒーとともにまずはニュージーランドの味の第一弾を試しました。並びにはアウトドアグッズや衣料などのショップもあり、ニュージーランドに着いて早々の楽しいショッピングタイムになりました。
次の寄り道は、コロマンデル半島に入ってすぐに現れる「テムズ飛行場」。小型機の操縦訓練を行っているようでした。小さな飛行場で、飛んでくる飛行機はありませんでしたが、看板代わりになっている珍しいスピットファイアの実機を写真に収めることができました。
「タラルビーチ」で停車。緑濃い大木と空と海が額縁に入れたいような風景を作り出しています。
「テムズ・ケレタ」では緑の山肌の先に碧い海が見えてまたまた停車。静かな環境で思わず深呼吸したくなるような景色が広がっていました。
コロマンデルタウンへ
北上してコロマンデルタウンに近くなると、マナイアで「オハナ牧場」が出現。西部劇映画のワンシーンのようなシチュエーションが見えました。このあたりからは、海岸線を走るので、ドライブにピッタリの開放的な素晴らしい景色が楽しめますので、益々気分もあがります。
ハーバービュー・モーテルで湾岸泊
ドライブを楽しんでたどり着いた宿泊地は「ハーバービュー・モーテル」です。コロマンデルタウンからロングベイロードを進むと、山側の高台にひっそりと存在しています。部屋からは、マクレガー湾の入り江が迫るビーチビューが目の前に見えています。部屋にはウッドデッキがあり、椅子に座って心ゆくまで静かな入り江の景色を堪能できます。美しい夕焼けを眺めていると運転の疲れが徐々に取れていくようです。コーヒーを片手に陽が落ちるまでの本当に贅沢な時間をゆっくりと味わいました。
ペッパー ツリー レストラン アンド バー
コロマンデルタウンで人気の「ペッパー ツリー レストラン アンドバー」で夕食にしました。1928年建造の邸宅を使っており、カウリの木が使われたテラスのある落ち着いた雰囲気のレストランです。室内には暖炉があり、身体を温めてくれるだけでなく、気持ちも和やかになります。コロマンデル半島と言えばシーフード。中でもグリーンマッスル6個NZD18.5(約1,600円)を食べないわけにはいきません。名前の通り、殻のふちが緑色になっており、身は大きくふっくらとしていて日本で食べるムール貝とはまるで別物のように感じます。そして新鮮なオイスター6個NZD24.5(約2,100円)は、ビネガーと共にシンプルに味わい、大満足のディナーになりました。
ホテルの朝食を予約すると、前夜にフロントからコンチネンタルブレックファーストが部屋に届けられました。海を見ながらテラスで食べる朝食は格別です。
ミニ観光列車へ
ホテルから10分ほど走った場所にあるドライビング・クリーク・レイルウェイに向かいました。陶芸家のバリー ブリッケルが1973年に陶器を運ぶためにトロッコとして作った輸送器材が、レール幅38㎝しかない観光用のミニ鉄道になりました。小さなエンジンの機関車がシダの生い茂る山の上の終点アイフル・タワーまで途中5つのスイッチバックで進行方向を変えながらゆっくり登って行きます。
途中に3つのトンネルと10の橋を超えて走ります。真っ暗なトンネルの中、ガラスが無いので手を延ばせば草木に触れそうなくらい狭い線路を抜けていきます。森の中だけあり、木も葉も大きく、まるで本物のジャングルに来たかのような錯覚におちいります。列車はスイッチバックを繰り返し、その都度運転士が移動するのも微笑ましく思えます。陶芸家が作った鉄道だけに、線路わきには多くの作品がさりげなく置かれています。これらを探してみるのも楽しみのひとつ。およそ70分で3キロの距離の旅が楽しめます。 二人がやっと座れる幅の小さな車輌ですが、左右にも揺れて鉄橋もあり、その都度揺れ方が違うのも楽しめてなかなかの満足度です。途中下車ポイントや山頂での展望は飽きさせません。乗車運賃は大人一人NZD39(約3,400円)です。
UMUカフェ
昼食は、同じくコロマンデルタウンにあるUMUカフェにしました。デイメニューにある絶品のクラムチャウダーがお勧め。NZD19.5(約1,700円)で大満足です。今までに食べたチャウダーで最高の味という利用者の口コミにも納得の美味しさでした。
コロマンデルを離れて向かうのはオークランド市街方向へ向かうワイタケレへ。
ワイタケレ・リゾートアンドスパへ
宿泊地「ワイタケレ・リゾートアンドスパ」を目指します。「原生林の中のブティックホテル」と言われるこのホテルを予約したのは訳があります。飛行機が好きな筆者を惹きつけたのはオーナーがエアラインの機長であり、世界中を旅して美しい景色を熟知する人物だったからです。その彼が経営する宿であれば、記憶に残る宿泊体験になると思いました。
1945年に誕生したニュージーランドナショナル航空会社(NAC)の機長だった故ネビル・ジャクソン氏の見た世界はどのようなものか想いを馳せてみます。1978年にニュージーランド航空と合併する前の時代。ここワイタケレはオークランド市街地から車で30分程度の距離ですが、森深き山々の景色の中の高台のリゾートホテルの様子にワクワクします。
森の中のリゾートホテルは、遠く東側にオークランド市街が望める自然の中で過ごすことが出来ます。雨があがった後の空に虹が出ていたのも風景にアクセントを加えてくれました。夕食時間を待つ間に、館外へ出て中庭を歩いてみました。圧倒的な樹々のなか、緑のオアシスを散歩するのはこれ以上の爽快感は無いほどと思えます。
レストランはキャンドルの灯るテーブルに就きます。窓からは遠くに市街地のきらめきが望めました。勧められたのはローストラムチョップ(NZD48、約4,200円)でローズというなんとミディアムレアの状態。新鮮なラム肉だからこその焼き加減です。塩味が沁みて、食べてみて納得の味でした。ガーリックシュリンプ(NZD29、約2,600円)も美味しく、舌を満足させてくれました。
部屋から見るダウンタウンの遠望は、都会のオアシスが遠くに浮かんでいるように見えます。ランギトト島のあるハウラキの海も姿を現し、蜃気楼のように見えてしまいます。雨も降るので、時折かすむ街の様子ですが、雨が上がれば虹が見えるといったような状況で、景色に華が添えられます。
バルコニーで景色を堪能し、ここに泊まって良かったと思える滞在でした
朝食は、前夜と同じレストランにコンチネンタルブレックファーストのブッフェが用意されていました。朝霧の煙る中、雲の合間からの一条の光でスカイ・タワーが光り、幻想的ですらある風景を作り出していました。
飛行機の離発着を眺めに
空港のビュースポットであるシーニック・ルックアウト・エアポート・ランウェイに向かいました。東側からの進入で滑走路23が見える場所です。トイレや飲食の販売はありませんが、展望デッキの無い空港の数少ない飛行機ビュースポットに滞在時間を忘れて機体を追いかけることになりました。
ビルの中の飛行機を見る
ターミナルビルからほど近いビルの中にボーイング737が見えました。壁面にはニュージーランド・スクールオブ・ツーリズム(NZST)と書かれています。学生が入っていくので、聞いてみると先生が中へ招き入れてくれました。
実機で非常時の脱出訓練を実践できるのは貴重な経験ですね。他にもエアバスA380とA330のType1、TypeAの非常脱出ドアの操作訓練装置が置いてありました。日本でも同様のモックアップのある学校を見たことはありますが、実機まるごと置いてある例は知りません。聞いてみると、1985年創立の客室乗務員などの養成専門学校で、ボーイング737は2006年にカナダのウェストジェットから購入した機体のようです。ニュージーランド国内に7つのキャンパスを持っており、実機があるのはオークランド空港校のみです。日本人留学生も在籍しているようで、留学生の多いニュージーランドならでは。
ターミナルに飛行機が
国際線ターミナルビルの保安検査に入る前のエリアに、パーシバルD-3ガルシックス(機体番号G-ADPR)が天井から吊るされて飛行しています。イギリスの女流飛行家のジャンバッテンがニュージーランドまで1936年に飛行した航空機で、世界で知られたニュージーランドの偉人と紹介されています。
南島に比べて冬でも北島は比較的温暖であり、天気の変化を楽しむつもりで出掛けてみてはいかがでしょう。円安の今でもシーズンオフのニュージーランドでは欧米ほどの極端な滞在費にならず、街の中は人であふれていないことからお勧めの旅先です。
取材協力:ニュージーランド航空 ⇒ https://www.airnewzealand.jp/
※過去のニュージーランド旅行記事
テカポ ⇒ https://www.risvel.com/column/542
クイーンズタウンとワナカ ⇒ https://www.risvel.com/column/542
マウントクックのトレッキング ⇒ https://www.risvel.com/column/544
テカポの空旅エア・サファリ ⇒ https://www.risvel.com/column/540