旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2020年9月7日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

今年は特別なクリスマス。大切な人と味わう、ホテルのケーキはいかが?

左/『京王プラザホテル』の新作ケーキ。右/『帝国ホテル』の館内を彩るドーム型装花をイメージした『ノエル・ルージュ』。zoom
左/『京王プラザホテル』の新作ケーキ。右/『帝国ホテル』の館内を彩るドーム型装花をイメージした『ノエル・ルージュ』。
「いつになったら、自由にどこへでも旅できる日が戻ってくるのかしら…」と、やきもきしている人は少なくないはず。でも、そんな先行きが見えない状況でも、あと3カ月もすれば今年もクリスマスがやってきます。大勢が集まる賑やかなパーティーは難しいかもしれないけれど、そのぶん大切な人と過ごすクリスマスがよりいっそう楽しみです。

クリスマスのテーブルを華やかにしてくれるクリスマスケーキ。今年、とくにおすすめなのが各ホテルのオリジナルケーキ。試作期間と外出自粛期間が重なったこともあり、シェフやパティシエたちはじっくりとレシピを練る時間が取れたと言います。そんな今年ならではの、趣向を凝らしたケーキの数々をご紹介しましょう。数量限定のものが少なくないので、お目当ての一品は早めの予約をおすすめします。

テーマは“Hotel Taste at Home”。5台限定の至高の一品は予約を急いで!!

9月5日から早くも予約受付を開始したのが、『京王プラザホテル』。シェフパティシエとショコラティエ、そしてブーランジェが一丸となり完成させたケーキは、どれも細部まで丁寧に作り込んだものばかりです。
上/『ルミエール・ド・レーヴ~夢の灯火~』(74,000円)は5台限定。下左/『プルミエ・ダムール』(4,800円と3,700円の2種類)。下右/『フレジェ』(6,300円と4,200円の2種類)には、低糖質タイプ(5,100円と3,300円)もご用意。zoom
上/『ルミエール・ド・レーヴ~夢の灯火~』(74,000円)は5台限定。下左/『プルミエ・ダムール』(4,800円と3,700円の2種類)。下右/『フレジェ』(6,300円と4,200円の2種類)には、低糖質タイプ(5,100円と3,300円)もご用意。
シェフパティシエ・穐山敏信氏を中心としたパティシエとショコラティエによるチームが総力を挙げて完成させたのが、フラッグシップケーキの『ルミエール・ド・レーヴ~夢の灯火~』。重量感あふれる暖炉の部分は3種類のチョコレートを、薪はピスタチオとオレンジのクリームを包んだナッツ入りブラウニーチョコレート、その下のケーキは青リンゴが爽やかに香るムースをはじめ、自家製アーモンドスポンジ、カリッとした食感がアクセントのビスキュイなどを7層に積み上げるという凝りよう。赤々と燃える炎はチョコレートでできていて、もちろんすべて食べられます。
ケーキ部分は当日か翌日までが賞味期限ですが、チョコレートは涼しい場所に置けば2週間くらいは大丈夫とのこと。寒い夜に、ホットチョコレートやチョコレートフォンデュにリメークして味わうのも楽しみです。

「ケーキはやっぱり、ショートケーキでなくっちゃ!」という人は、上質の素材にこだわったプレミアムショートケーキ『プルミエ・ダムール』を。国産小麦と名古屋コーチンの卵でふんわり焼き上げたスポンジと、オリジナルブレンドの生クリーム、高糖度のみを選りすぐった国産イチゴが醸す絶妙なハーモニーは、クリスマス時期にしか食べることができません。一方、ホテル伝統の苺ケーキ『フレジェ』には低糖質タイプもあり、ダイエット中や糖質制限のある人も食べられるとあって、毎年楽しみにしている人が多いのだそうです。
左/繊細なバラのトッピングが美しい『ラーヤ』(上)と、開いた本の形にクリスマスの思い出を語りたくなる『タリーナ』(各4,800円)。右/美しいデコレーションの中身も、一切手抜きなし。中をスライスするとこんな感じに何層にも重ねられています。zoom
左/繊細なバラのトッピングが美しい『ラーヤ』(上)と、開いた本の形にクリスマスの思い出を語りたくなる『タリーナ』(各4,800円)。右/美しいデコレーションの中身も、一切手抜きなし。中をスライスするとこんな感じに何層にも重ねられています。
細工の繊細さが目を引くのが、シェフパティシエ・茂木平太氏による新作ケーキの『ラーヤ』と『タリーナ』。艶やかな赤を纏った『ラーヤ』は、フィンランド語で「贈り物」という意味。“クリスマスの日に大切な人から贈られる特別なプレゼント”をイメージしたものだといいます。深紅のチョコレートでコーティングされたケーキの部分には、ジャスミン、メープル、イチゴ、ヌガーなどの7層の香りと食感が詰まっていて、甘酸っぱいグリオットチェリーがアクセントに。スイートチョコレートの花びらを1枚1枚削って作ったバラの花の芸術的な美しさにもうっとり。甘さ控えめの大人向けの味で、個人的にはこのケーキが一番気に入りました。

“一年に一度だけ綴るクリスマスの物語”をコンセプトにしたのが、見開いた本をイメージした『タリーナ』。左右のページには、それぞれ、果実が香るピスタチオ&マスカルポーネ、ほんのりビターなキャラメル&ショコラの2つの味がしのばせてあり、こちらも甘さ控えめです。茂木シェフいわく、
「試作を重ねているうちに、スポンジ部分の組み合わせもデザインもどんどん凝ってしまって…。今年ほど手をかけられたクリスマスケーキはないですね」とのこと。価格以上の価値と味わいを堪能できることは、間違いありません。
チョコレート好きの人には、シェフパティシエ・穐山氏によるプレミアムケーキ『ブッシュ・ド・ノエル』を。ブーランジエ・石渡隆治氏によるクリスマスの伝統菓子『シュトーレン』も楽しみです。

●予約・問い合わせ
京王プラザホテル
東京都新宿区西新宿2-2-1
フードブティック『ポピンズ』(2F)
TEL 03-3344-0111(代) 受付時間:11:00~18:00
https://www.keioplaza.co.jp

あの、名門ホテル伝統の味をおうちで。定番と新作が勢ぞろいする『帝国ホテル』

“帝国ホテルの味をご家庭で”をコンセプトに、伝統の味をテイクアウトできるのがホテルショップの『ガルガンチュワ』。この袋を手に日比谷や銀座界隈を歩くとき、ちょっと誇らしげな気持ちになるのは、私だけでしょうか。普段はホテルメイドのお惣菜やパンが人気のこの店にも、クリスマス限定のケーキを始めとした商品が登場します。
毎年、定番と新作どちらも楽しみなクリスマスケーキは、6種類をご用意。冒頭の写真で紹介した深紅のケーキは、新作の『ノエル・ルージュ』。クリスマスシーズンが近づくと館内を彩るドーム型のバラの装花をイメージしたものなのだとか。ルビーチョコレートのムースに包まれ、バラの香りが口いっぱいに広がる、ルックスも味わいもロマンチックなケーキです。

パティスリーシェフ・倉持登氏による新作ケーキは、『ポルテ ボヌール』。フランス語で「幸せ(=ボヌール)を運ぶ(=ポルテ)」を意味し、「クリスマスに帝国ホテルより幸せなひとときをお届けしたい」との思いを込めて作られたものだそうです。
100個以上のイチゴをトッピングした『ポルテ ボヌール』(45,000円)。特別な夜の主役にぴったりのゴージャスなケーキです。zoom
100個以上のイチゴをトッピングした『ポルテ ボヌール』(45,000円)。特別な夜の主役にぴったりのゴージャスなケーキです。
24cm角、約20名分の大きさがあるケーキにちりばめられたイチゴの数、なんと100個以上! これをつまみ上げて食べる瞬間を想像しただけで、「果物のなかではイチゴが一番好き!」な私を、これ以上贅沢で幸せな気持ちにさせてくれるケーキはありません。帝国ホテルで受け継がれる口どけのよい生クリームとの相性もばっちり。スポンジ生地からは、サクランボのリキュールがほのかに香ります。6種類のクリスマスケーキのなかで、唯一このケーキにだけ、アルコールが使われています。
上/不動の人気を誇る『クリスマスショートケーキ』と『ブッシュ・ド・ノエル』(4,500~6,900円)。下左/生地とトッピングにトリュフを惜しげもなく使った『トリュフ「S」2020』(13,000円)。下右/それぞれのケーキを試食させていただきました。zoom
上/不動の人気を誇る『クリスマスショートケーキ』と『ブッシュ・ド・ノエル』(4,500~6,900円)。下左/生地とトッピングにトリュフを惜しげもなく使った『トリュフ「S」2020』(13,000円)。下右/それぞれのケーキを試食させていただきました。
子どもがいる家庭におすすめなのが、生クリームとチョコレートクリームから選べる『クリスマスショートケーキ』と、ふんわりとしたスポンジ生地のロールケーキをコーヒー風味のバタークリームにキャラメルを加えたクリームで包んだ『ブッシュ・ド・ノエル』です。

そして今年一番の注目は、料理長・杉本雄氏が手掛ける新作『トリュフ「S」2020』。フランス産黒トリュフをたっぷり使った華やかなブッシュ・ド・ノエルで、中身のロールケーキには栗の粒感を残したマロンクリームと、黒トリュフが香るマスカルポーネクリームを使用。これをヘーゼルナッツクリームで包み、チョコレートで覆っています。トリュフの味と香りを最大限に引き出すため、甘さは極力控え、わずかに塩味を効かせてあるのも特徴。スライスした黒トリュフがちりばめられた、なんとも贅沢なケーキは、よりリアルに見せるため本物の切り株から型を取って作っているそうです。
今年のケーキの特徴は、環境への配慮からデコレーションは可能な限り食べられるものを、またパッケージに極力プラスチック素材を使っていないこと。そのぶん、パティシエたちがデコレーション部分を作るために手間ひまかけていることはいうまでもありません。
『帝国ホテル』の東京料理長・杉本雄氏(右)と、パティスリーシェフ・倉持登氏(左)。zoom
『帝国ホテル』の東京料理長・杉本雄氏(右)と、パティスリーシェフ・倉持登氏(左)。
ほかにも、ローストチキン、ローストターキー、オードブルの盛り合わせやキッシュなど、クリスマス限定メニューが盛りだくさん。シュトレンとパネトーネはプレゼント用にもおすすめです。

●予約・問い合わせ
帝国ホテル
東京都千代田区内幸町1-1-1
ホテルショップ『ガルガンチュワ』(本館1F)
TEL 03-3539-8086 受付時間:11:00~18:30
※予約:10/20(火)~12/14(月)15:00まで、お渡し:12/19(土)~12/25(金)
https://www.imperialhotel.co.jp/

なかなか収まらない残暑ですが、季節の足音とともにクリスマスは確実に近づいてきています。今年は各ホテルのシェフやパティシエが匠の技を結集したホテルのケーキ&メニューで楽しむクリスマスはいかがですか? 大切な人と過ごす心温まる時間が、大変なことも少なくなかった2020年の、楽しい思い出となって残るに違いありません。
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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