旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2018年4月4日更新
共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査委員:大塚圭一郎

「乗り鉄」を誘う栃木DCが開幕!【下】 山あげ、ロシアンルーレット、そして「今日は何の日」?

△JR東日本烏山線で昨年3月まで走っていた気動車「キハ40」(昨年3月、栃木県那須烏山市で筆者撮影)zoom
△JR東日本烏山線で昨年3月まで走っていた気動車「キハ40」(昨年3月、栃木県那須烏山市で筆者撮影)
(「「乗り鉄」を誘う栃木DCが開幕!【上】」からの続きです)
▽またしても初日の客に
 「栃木デスティネーションキャンペーン」(栃木DC)の開幕初日の4月1日に栃木県を訪れ、スタンプラリーのために立ち寄ったのがJR東日本烏山線の終点、那須烏山駅(那須烏山市)だ。
 宇都宮駅へ降り返す蓄電池車両「アキュム」の発車まで約1時間あるため、私は「子鉄」の小学6年生の息子を連れて駅前の道標にあった山あげ会館へ向かった。山あげ会館は、450年ほど前に疫病が流行し、厄災を避ける厄除け開運、天下泰平、五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈願したのが始まりとされる八雲神社(那須烏山市)の例大祭の奉納行事「山あげ祭(やまあげまつり)」を紹介する施設だ。
 白亜の壁の建物には入り口に「開館中」の看板が置かれており、入ると大人の入館料が通常より50円安い200円(小中学生は通常通りで100円)となっており、特製のしおりまで配布する大サービス。
 後から知ったのだが、山あげ会館は改修のために休館しており、この日すなわち4月1日に再開した「リニューアルオープン初日」だった。栃木DCに続いて、山あげ会館の再開でも「初日の客」となることができた。
△栃木県那須烏山町の「山あげ会館」(筆者撮影)zoom
△栃木県那須烏山町の「山あげ会館」(筆者撮影)
▽からくりの出来に感心
 ということは、もしも訪れたのが1日前だったのならば、看板には「休館中」の文字が躍っていたことになる。DCの開催期間、それも初日に訪れると様々な特典があるだけではなく、安心して観光を楽しめる効果があることを再認識した。
 館内には山あげ祭に使われる屋台が3台飾られており、女性係員に「こちらの舞台をご覧ください」と言われると、おじいさんに似せたロボットが地元訛りの語り口で山あげ祭の講釈を始めた。舞台上には実物の5分の1の大きさに作ったミニチュア屋台が登場し、8分間にわたって山あげ祭りの様子を再現する。観客が出てきたり、日が沈んだりといった舞台上のからくりが実に精巧にできていて感心した。
 そんな舞台と、当日の様子をまとめた映像を視聴して学んだのは、山あげ祭は毎年7月に第4週の金曜と土曜、日曜の3日間にわたって催される。2016年に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録が決まった「山・鉾(ほこ)・屋台行事」に含まれ、国の重要無形民俗文化財にも指定されており、地元住民は「絢爛豪華な日本一の野外劇だ」と胸を張る。
 竹を組んだ網代に地元特産の和紙を貼った幅7メートル、高さ10メートル以上、奥行き100メートルの「山」と舞台装置が市街地を移動し、数カ所に仮設の舞台を作って歌舞伎や神楽を上演する。
 映像が終わると、宇都宮行きの列車の発車時刻10分前になっていた。早足で山あげ会館を後にし、蓄電池に電気を十分ため込んだであろうアキュムが待ち構える烏山駅へ向かった。
△「山あげ祭」について紹介する山あげ会館のからくり(筆者撮影)zoom
△「山あげ祭」について紹介する山あげ会館のからくり(筆者撮影)
▽蔵が残る街並みへ
 アキュムで宇都宮に到着し、8分後の午後3時5分に出発する東北線に乗り換えて小山駅へ。ここでスタンプラリーの最終目的地となる両毛線〈小山―新前橋(前橋市)間〉に乗って栃木駅(栃木市)を目指すが、午後4時2分の発車まで30分ほどある。
 駅構内のコーヒー店「ベックスコーヒーショップ」に入り、「当店限定」とうたった栃木県特産のイチゴ「とちおとめ」味を楽しめる「とちおとめソフトクリーム」を360円で購入。ジェラート風の味わいで、みずみずしい果実感を楽しめた。
 両毛線のプラットホームに降り立つと、国鉄時代に登場したステンレス製電車「211系」が人待ち顔の様子で停車していた。両毛線といえば旧国鉄時代の1963年に登場し、寒冷地の急勾配区間で走れるのが特色の電車「115系」が長く活躍していたが、群馬県全域と栃木、埼玉両県の一部を管轄するJR東日本高崎支社(群馬県高崎市)が今年3月21日に最終運行して関東地方から全て引退。現在は211系に統一されている。
 電車は出発してわすか2駅、10分で栃木に着いた。隣接する東武日光線を特急「日光」で朝に通ったので、「ただいま」と言うべきであろうか。
 最後のスタンプを押印したが、せっかくなので蔵が残る昔ながらの街並みを眺めたくなった。
JR東日本高崎支社が今年3月21日に最終運行し、関東地方から全て消えた「115系」(群馬県高崎市)zoom
JR東日本高崎支社が今年3月21日に最終運行し、関東地方から全て消えた「115系」(群馬県高崎市)
▽釣り銭を受け取れるかは運試し?
 駅前を発着する栃木市営コミュニティーバス「ふれあいバス」に乗ったが、驚いたのは次の停留所の放送が全く流れないこと。巴波川(うずまがわ)のほとりに蔵が並んでいる風景が視界に入ったので慌てて停車用ボタンを押したが、次の停留所は蔵が残る観光地から3分ほど歩いた場所とやや不便だ。
 運賃は大人100円、子供50円と安いのだが、「Suica(スイカ)」などのICカードに対応しておらず、両替機も備えていない。男性運転手さんが自分の財布をポケットから取り出して「じゃあ、お釣りの50円」と釣り銭の50円玉を渡してくれたが、運賃をちょうど支払えない場合に釣り銭をもらえるかは、おみくじのように運転手の財布の中身次第という運任せなのであろうか?まるでロシアンルーレットのようだ。
 利用者も地方都市のバスに乗る場合、運賃を事前に調べてちょうどの金額を支払う心構えが必要なのかもしれない。しかし、われわれのように駅前に停車しているバスを見かけて、飛び乗る場合もあろう。
 「ふれあいバス」は市内に10路線抱えていて本数も多いが、乗ったバスはわれわれを含めても4人しか乗っておらず、乗客が全くいない空気を運んでいるバスも見かけた。栃木市は観光都市だけに、市民だけでなく旅行者にも利用しやすくするように運営面の改善が求められよう。
△栃木県栃木市の巴波川の上を泳ぐ色とりどりの鯉のぼりと息子(筆者撮影)zoom
△栃木県栃木市の巴波川の上を泳ぐ色とりどりの鯉のぼりと息子(筆者撮影)
▽「今日は何の日」?
 「インスタ映え」を狙ったかのように、たどり着いた巴波川の上空には青やオレンジ、ピンクなど色とりどりの鯉のぼり(こいのぼり)が舞っている。毎年、こどもの日の前後の4月から5月に開かれている「うずまの鯉のぼり」という行事で、鯉のぼりの数は約千匹に達するという。
 川にはカモが泳いでおり、パンの耳を投げ入れている子供がいたので私も“餌づけ体験”をしてみた。最初はカモが投げ入れた餌を取り合ったが、次の瞬間に大きな黒い影が現れて餌が消えた。鯉なのだが、空を泳ぐ鯉のぼりをほうふつとさせる巨体だ。餌をやる人が多いので、大きく育ったようだ。
 帰路は栃木駅まで歩き、両毛線で小山駅に着くとふと気がついた。「今日は何の日」と。
 スタンプを4個そろえた用紙を片手に小山駅の景品引換所へ向かったが、「実はエイプリルフールでした」というオチはないのだろうか。そう言われたら、駅名に引っかけて「おやまあ」と驚くほかない。
 おそるおそる引換所に入ると、幸いにも私と息子で2枚となる景品のハンカチタオルをもらうことができた。タオルの柄は栃木県内の路線図とともに、途中下車した日光、烏山、宇都宮、栃木、小山を含めた駅名標が描かれている。
 顔を洗ってこのタオルを使うたびに、描かれた栃木県の駅名が目に入ることになるだろう。そうだ、顔を洗って出直してこよう、栃木県に!
△JR小山駅(栃木県小山市)の「栃木DC」をアピールした装飾と筆者zoom
△JR小山駅(栃木県小山市)の「栃木DC」をアピールした装飾と筆者
(「乗り鉄」を誘う栃木DCが開幕!完。連載コラム(「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)
共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査委員:大塚圭一郎
1973年4月東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社し、松山支局、大阪支社経済部、本社(東京)編集局経済部、ニューヨーク特派員を経て、2016年10月から現職。国際経済のデスクの傍ら、運輸・観光分野や海外関連を中心に取材と執筆、ラジオ出演などを手掛ける。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査委員、鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/culture/leisure/tetsudou)の執筆陣で、休日には「子鉄」の息子と鉄道旅行に出掛ける。SBC信越放送(長野県)の平日のラジオ番組「らじ☆カン」(午後2時5分~6時15分、http://sbc21.co.jp/blogwp/radikan/)の午後5時台のコーナー「きょうの注目」に他の共同通信社のデスク・記者とともに出演。

2004年5月から通信添削大手Z会(静岡県)の週刊メールマガジン「社会をよみとくキーワード」(http://www.zkaiblog.com/zkai04)を連載中。共著書に『伝える訴える「表現の自由」は今』(柘植書房新社)、『働く!「これで生きる」50人』(共同通信社)など。東京外大の校友会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)理事
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