旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2015年8月7日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

ランキング躍進中のエアラインに乗ってみた

イスタンブール・アタチュルク国際空港を離陸するエアバスA330zoom
イスタンブール・アタチュルク国際空港を離陸するエアバスA330

旅の充実度は目的地での過ごし方だけではありません。国際線では長時間過ごすことになる機内での快適度は重要です。エアラインのサービス・ランキングで上位に入るエアラインには理由がありました。

世界のエアライン情勢を見ると、輸送力とサービスレベルにおいて中東勢3社の躍進が目覚しい事に異論は無いでしょう。エミレーツ航空、カタール航空、エティハド航空です。中東勢に加えてその波はターキッシュエアライン(以下TK)にも来ています。

イギリスのエアラインサービス調査会社SKYTRAXのデータを見ますと、最新の2015年調査では4位につけています。 日本で認知されたエアライン調査はエイビーロードですが、その結果でも、最新の2015年調査で7位と健闘しています。

現在、TKの日本路線は成田にダブルデイリー、関西へはデイリーで乗り入れています。成田は昼間、夜間便で機材が変わるという往復で両方搭乗可能なところが飛行機好きには嬉しいスケジュールです。そんなTKで成田発着の昼間便エアバスA330のエコノミークラスへ搭乗しました。

TKへのエアバスA330導入は、2005年から始まっています。
2009年以前の機体が15機と-200と-300型機合わせて38機のうちの4割と解ります。残る6割が2010年以降導入ですので、機齢の若い新しい機材が増えていることになります。

ウェブを通してチェックインは24時間前から可能です。これを済ませていれば、チェックインカウンターの行列に並ばなくても良く、バゲッジドロップの短い列で済むのは便利です。

TK51便は50分前から搭乗開始になりました。この時間が早く設定されているというのは余裕があっていいですね。
折り返しの空港滞在時間が長いということであり、エアラインにとっては機材稼働率が落ちますが、利用者側には今回のように早期搭乗開始などメリットが大きくなります。ボーディングブリッジで機内へ向かう途中にテーブルがあり、新聞各紙が置いてあります。日系一般紙4紙とスポーツ紙が3紙あるところが嬉しいです。機内エンターテインメント設備の設置が進む現在では、上級クラス以外ではこのサービスが廃止になるケースが多いので喜んで機内に持ち込みます。

カラフルな色使いも楽しいターキッシュ機内のシートzoom
カラフルな色使いも楽しいターキッシュ機内のシート

機内に進むと、各シートには枕、ブランケットとイヤホンが用意されていました。数量限定で早い者勝ちということではありません。

ターコイズブルーの鮮やかな色彩のシートカラーは珍しい。ヘッドレスト部分の色が6色あるのも面白い発見です。

座席に落ち着いてみると、リクライニングともう一つのボタンが肘掛にあります。使ってみると、腰にあたる部分がせり出して来る事が解りました。
前方の座席下には、簡易ですがフットレストが装備されているので、好みで降ろして使えます。

定刻に出発した機体は34R滑走路を離陸し、一路新潟方面の日本海を目指します。 今では見かけない布おしぼりが配られるのも昔の航空旅行を思い出して嬉しくなります。

スリッパとアメニティが配られるのも、エコノミークラスでは珍しいことです。更には、機内食メニューもあるのには、驚かされました。アメニティの往路はペンケースのようなバッグに入り、復路ではデザインの奇抜な缶に入っています。アイマスク・イヤープラグ・歯ブラシ・靴下・リップバームと充実しています。全員にペットボトルの水が配られるのもいいですね。

エコノミーでもボリュームのある美味しい機内食zoom
エコノミーでもボリュームのある美味しい機内食

どのエアラインも最初のサービスはドリンクからです。
加えて、TKではトルコのスイーツ「ロクム」がロゴの入った紙に包まれて出てくるのは、嬉しい配慮です。この控えめな甘さがこれから始まる機内食サービスへ食欲を誘うのではないでしょうか。

一回目の食事のランチは、チキンとフィッシュのチョイスでした。
チキンは大振りでおおきなトマトが添えられています。
サラダにサーモンとチーズの付け合せ、デザートがセットされています。
ドレッシングもエクストラバージンオイルにレモンが入ったものが別添えされています。フィッシュは、和食でさばのフライでした。小振りのものですが、しっかり味が出ています。がんもとニンジンに加えて幕の内弁当でお馴染みの俵ごはんが付きます。
ドリンクはアルコールではウィスキー・ジン・ウォッカ・ラキ(トルコの蒸留酒)とビール2種類はトルコのツボルグとエフェス・ピルゼンがあります。

ボリュームのある食事に舌鼓を打ちながら、ふと外を見やると、ロシアの大地が広がっています。
この雄大な景色を楽しみながらの食事は何と贅沢に感じられることでしょうか。

メニューにも記載があるのですが、食事間のスナックとしてサンドイッチとケーキに加えおにぎりが飲み物と共にいつでも用意されていると書かれています。お好きな時にギャレーへ取りに来てくださいねという配慮で、乗務員の負担も減るので一石二鳥です。

到着前で二回目の軽食は、焼肉がサーブされました。
ロングフライトでの二回目はボリュームの減る事が多いのですが、そうではなく、鉢の数がサラダとデザートになるだけで、一品少ないだけということが解りました。

機内食を提供する専属フライイング・シェフが搭乗していますzoom
機内食を提供する専属フライイング・シェフが搭乗しています

これらのメニューは、オーストリア航空で好評のグルメエンターテイメント会社のDO&COがプロデュースしています。
食事をエンターテイメントと捉えているのが素晴らしく、シェフが搭乗しており、ビジネスクラスでのサーブを行うというのもユニークです。
エコノミーでも、白いコックコートと帽子を身につけたコックが後方ギャレーに物を取りに行く場面に遭遇しますので、いつかはビジネスに搭乗したいと考える顧客へのアピールにもなります。

TKは機内エンターテイメントにも定評があるのですが、2013年導入機は、大きくて、座席の背面のほぼ一杯に画面が広がります。350の映画とTV番組に600の音楽があり、使い勝手は高いことが解ります。画面コントローラーとUSBが画面脇に全席装着されているのも安心です。

航路地図の解るフライトインフォメーション画面は良く見かけますが、カメラという選択もあり、前方と下方の選択で、外の景色を堪能できるのは、航空ファンでなくても嬉しいものです。

機内を散策してみますと、他の発見もあります。
お手洗いには、ナチュラルオリーブオイルを使ったハンドソープとレモンを配合したオーデコロンが花と共にさりげなく置かれていました。

笑顔の素敵なクルーたちzoom
笑顔の素敵なクルーたち

乗務員は実に良く動いています。TKのロゴが大きく入った赤いカートを何度も往復させる体力は敬服します。最初に座席にセットされる物以外は手で配る訳ですから大変です。笑顔も多く、気持ちのいい時間を過ごせました。日本人客室乗務員のいないことの賛否あるでしょうが、日本語を話すトルコ人乗務員が一生懸命アナウンスをしていました。

エアラインだけの努力では何ともし難い部分にも触れなくてはなりません。
トルコ国自体の問題です。TKだけではなく、LCCも含めた航空需要の急激な伸張に空港が対応できていない懸念があります。

定刻の30分前にはイスタンブール上空に来ていたのですが、滑走路の混雑で着陸が遅くなるという機長アナウンスがありました。モニターで航路が示されるので不安は無いのですが、上空待機は急ぐ人には辛いと思います。それでも、時刻表上の定刻より5分程度の遅れしか出ていないということは、もともと発着時刻設定は遅れを見越しているのかも知れません。

事実、空港は飽和状態で、5年以内に現在のイスタンブール・アタチュルク空港が閉鎖となり新空港へ移転するという情報を聞きました。

これが9,700㌔にも及ぶ12時間半のフライトの全貌です。飛行データは刻々変わるものの、高度12,000mを850㌔のスピード前後で飛行することが多かったです。ウラジオストック・ハルビン・モスクワ・キエフ上空付近を飛行するルートでした。

イスタンブール・アタチュルク国際空港で翼を休めるエアバスA330zoom
イスタンブール・アタチュルク国際空港で翼を休めるエアバスA330

総括的には、評判以上のサービスレベルの高いエアラインだという印象を受けました。
フルサービス・キャリアのあるべき姿を具現化している好例だと思います。

LCCとの差別化もあって、フルサービス・キャリアのサービスレベルは見事な程に向上していますが、それもビジネスクラス以上の上級クラスでの出来事だと思っていました。エコノミークラスでもレベルを上げている好例です。

長距離を飛ぶ機体の製造会社は世界大手二社のボーイングとエアバスに絞られていますし、機内艤装品の会社もさほど多くはありません。その中で、個性を出していくのは至難の技ですが、TKは食前にサーブされる「ロクム」の小さな一個でトルコの航空会社を表現しています。

搭乗時は明るく思えたシートのブルーも、旅行を堪能してきた復路で見れば納得の色彩です。トルコ石や、街の至る所で土産物として見られるナザールボンジュウの青であり、モスクのステンドグラスに散りばめられた色が、ヘッドレストの色合いかと思うと、旅の締めくくりに相応しい余韻が充実したものとなって迫って来ます。

帰路では、イスタンブールを離陸した機体がトルコ北部の黒海を東進して行きます。一時間半もの長い時間を1,100㌔のこの沿海部を見ながら隣国のグルジア領に入って行きました。

機内でサービスを受けながら、トルコという国も好きになりましたが、ターキッシュエアラインもお気に入りの一社になりました。

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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