2024年元日に発生した石川県・能登半島を震源とする最大震度7の地震の被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。被災地の皆様におかれましては、くれぐれも余震、土砂災害や二次災害に警戒なさってください。皆様が1日も早く日常生活に戻れるようにお祈りしております。(筆者・大塚圭一郎)
カナダが誇る世界遺産の一つが、東部オンタリオ州の首都オタワと五大湖を構成するオンタリオ湖畔のキングストンの全長202キロに達するリドー運河だ。今も娯楽・観光用に活用されており、宿泊できる部屋を備えたモーター付き船舶「ハウスボート」ならば船舶免許がなくても操縦できるという。興味津々で起点のオタワへ向かうと、水位が異なる区間を船舶で航行できるようにするためのゲート「閘門(こうもん)」が8つも並んでいた。
【世界遺産】人類が共有すべき顕著な普遍的価値を持つ文化財や景観、自然などを対象に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が定めている遺産。1972年に採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」に基づいて登録しており、2023年時点で168カ国に計1199件がある。うち文化遺産が933件、自然遺産が227件、複合遺産が39件それぞれ登録されている。国別で最多なのはイタリアの59件(文化遺産53件、自然遺産6件)、日本は25件(文化遺産20件、自然遺産5件)で11位、カナダは22件(文化遺産が10件、自然遺産11件、複合遺産が1件)で14位となっている。
▽米国との戦闘に備えて建設
2007年に世界遺産(文化遺産)に登録されたリドー運河は1832年に完成した。オタワ観光局などによると、現在のオンタリオ州の一部を植民地化していたイギリス(英国)軍がアメリカ(米国)との戦闘が起きた場合に備えて軍事物資を輸送するために建設した。
工事はジョン・バイ大佐が指揮を執り、1826年から約6年で完成させた。
▽6年で完成した理由
大規模な運河が約6年で完成したのは驚異的だが、それには2つの大きな理由がある。1つは1812~14年の米英戦争を踏まえて米国が侵攻してくるとの危機感があり、勃発に備えて毎年最大で5千人もの作業員を投入したためだ。
ただ、米英戦争後に米国との武力衝突が起きることはなかった。
もう1つは意外な理由で、全長202キロのうち手作業で人工的に掘って運河を敷設したのは1割の約19キロだけだったからだ。他は既にあった川や湖を活用して運河の一部とした。
▽起点に8つも集中
カナダ国立公園局(パークス・カナダ)によると、リドー運河の閘門は45(テイ運河の入り口を含めると計47)あるが、うちオタワ川に面した起点には8つもの閘門が集中している。オタワの代表的な名門ホテル「フェアモント・シャトー・ロリエ」の脇にあり、それらを開閉しながら船舶が24・1メートルの高低差を行き来する様子を眺めていると人工的に掘削した区間が全体のうち約19キロだったものの難工事だったのは一目瞭然だ。
実際、オタワ観光局は「水路の建設中の事故やマラリアの流行で約1千人もの作業員が死亡した」と説明している。実際、運河沿いが「心霊スポットになっている」とその日の夜に教えられることになった…。
(シリーズ「「カナダの世界遺産でクルーズ体験」【2】」に続く)
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)