【編集部推薦映画】キルギスの伝説と共に、未来へ希望を託す現代の寓話
期間:指定なし
[リスヴェル編集部]2018年03月 6日公開

エリア:ヨーロッパ  > キルギス / ジャンル:アート・カルチャー・歴史・ミュージック , 

カンヌ、ベルリン、ロカルノ、世界が絶賛する名匠アクタン・アリム・クバト監督最新作『馬を放つ』が3月17日(土)より、岩波ホールほか全国で順次公開される。

映画の舞台は、標高5,000mを越える天山山脈の麓に広がる山岳と草原の国キルギス。かつてシルクロードの要所として栄えた都市。監督・脚本、そして自ら主演でもあるアクタン・アリム・クバトの強いこだわりにより、自然光で撮影された映像は郷愁的で観る者の心を揺さぶる。

〈物語〉(アクタン・アリム・クバト監督の村で起きた実話を基にしている)
中央アジアの美しい国、キルギス。妻と幼い息子と3人で慎ましく暮らす男は、村人たちから“ケンタウロス”と呼ばれていた。そんな彼には誰にも打ち明けていない秘密があった。物静かで穏やかなケンタウロスはある理由から、キルギスに古くから伝わる伝説を信じ、夜な夜な馬を盗んでは野に放っていたのだった。次第に馬泥棒の存在が村で問題になり、犯人を捕まえる為に罠が仕掛けられるが・・・。

“馬は人間の翼である”というキルギスの諺がある。豊かな大地を馬で駆け、自然の恵みを受けてきたキルギスの民。遊牧民を祖先にもつ彼らの間には、馬と人間を結び付け、村人たちを団結させてきた伝説が息づいていた。しかし、時は流れ、暮らしは変わり、人々の記憶から伝説は消えようとしている。そんな伝説をある理由から強く信じている男が、人知れずある行動にでる。

牧歌的な美しいキルギスの風景、素朴で温かみのある生活、伝統的な民族衣装、そして先祖代々に受け継がれた心の魂は、すでに現代文明社会の恩恵を受けている日本人が手に入れ、そして失ってしまったものとは何なのかを問われている。『馬を放つ』は、純粋なひとりの男の姿を通して未来へ向けて普遍的メッセージを投げかけている。

遊牧文化を基礎とするキルギスでは無形の文化が発展してきた。特に有名なのが口承されてきた「マナス」という数十万行に及ぶ英雄叙事詩。世界最長の詩とも称され、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている。勇者マナスとその子孫たちの戦いを描いた叙事詩の中には、伝統文化が色濃く反映され、現在ではキルギスの民族統合のシンボルの役割も担っている。一方、首都のビシュケクの様子は日本の都市の光景と変わらない程に発展している。彼らは遊牧文化を完全に捨ててしまったわけではない。キルギスでは世界遊牧民競技大会が開催され、木場遊牧文化の伝統を今でも受け継いでいる。

『馬を放つ』(2017年) 89分
公開日:3月17日(土) 岩波ホールほか全国順次公開
    岩波ホール創立50周年記念作品第2弾
配 給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/uma_hanatsu/

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