旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2020年7月30日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

JALが進める空の感染症対策

目元から伝わる笑顔で迎えてくれるチーフキャビンアテンダントの井澤さんzoom
目元から伝わる笑顔で迎えてくれるチーフキャビンアテンダントの井澤さん

リニューアルされた羽田空港から出発
経済をゆるやかに回復させるため、新型コロナウイルスの感染対策を進めながら、人の移動が進みます。国内航空便でもある程度運航便数が戻ってきました。羽田から新千歳に向かう便で、コロナ禍の中の新しい空旅をご紹介したいと思います。

チェックインも非接触型に
羽田空港第1ターミナルビルは減便の為、北ウイングが2か月半閉鎖されていましたが、7月以降は以前の姿に戻っています。そして、生まれ変わったチェックインシステムが登場しました。もともとリニューアルされる予定であったものが、前倒しでお客様に提供できるようになりました。チェックイン機は同じですが、バゲッジドロップの機械が用意され、非接触での預入が可能になりました。ロビー中ほどにアイランド型のチェックイン機があり、元々のカウンターのあった位置にバゲッジドロップがあります。

これからのJALスタイルのチェックインカウンターzoom
これからのJALスタイルのチェックインカウンター

保安検査に並ぶ通路に消毒液があり、体温計測システムが作動し、係員も配置されています。保安検査場入口で通過ゲートが置かれ、検査に進む体制になりました。

ラウンジでも感染防止策が
ラウンジに向かうと、受付では飛沫感染防止のアクリル板が置かれ、ソーシャルディスタンスを取るための立ち位置マークが貼られていました。
食事は基本的に個包装になり、飲食の置かれるカウンター前に距離を開ける立ち位置マークが設置されています。壁際には電気噴霧器「エアミスティ」が設置されており、除菌と消臭効果で安心感をもって過ごすことができます。メーカーを見てみると、名古屋にある「フコク東海」と書かれていました。

搭乗口で
ゲートに向かうと、まず新型のゲート通過システムが設置されていることに気付きます。タッチパネルに傾斜が設けられていることで、以前よりも自然なスタイルで通過できます。最初にお子様連れなどの優先搭乗とマイレージのステータス優先に続き、客席後方からの案内で混乱が起きないように頻繁にアナウンスが流れ、混雑状況を見ながら10~20名ずつ搭乗しています。今まで以上に係員が出て、間隔が狭まると「前のお客様と間隔を開けてお進みください」の声掛けが入ります。搭乗率は半分強。スムーズに列は進んでいきました。

検温担当者のいる保安検査場入口(左上)、ラウンジ(右上)、PBBの除菌液(中左)、機内のアルコールシート(中右)、搭乗口(下)zoom
検温担当者のいる保安検査場入口(左上)、ラウンジ(右上)、PBBの除菌液(中左)、機内のアルコールシート(中右)、搭乗口(下)

機内に向かう
ボーディングブリッジの途中にも消毒液が置かれていました。機内では、白いジャケットを着るチーフキャビンアテンダントがマスク着用でもわかる笑顔の目線で迎えてくれます。

ギャレーには感染防止用の拭き取り用アルコールシートが置かれており、自分で座席回りを除菌できます。国内線において毎日のフライト後の夜間には機内全体の除菌が行われますが、自己防衛として座席回りのテーブルやドリンクホルダー、シートベルトバックル、リクライニングボタン、肘掛、読書灯ボタン、空気吹きだしノズルなど人が触れる場所を綺麗にすることで安心です。

機内アナウンスも内容が大きく変わっています。枕とブランケットの提供は停止、更には配られたアルコールシートで窓を拭かないようにと注意が入りました。客室乗務員に聞くと、整備部門からの依頼だそうで、アルコールの成分が窓の内側のアクリルに弱いからというのがその理由です。

機内では常に機外から新しい空気を取り入れ機内を循環させ、その後、機外へ排出することにより、おおむね2~3分ですべて入れ替わる仕組みになっており、ジェット機には高性能空気フィルターが装備され飛沫感染の防止ができると知られるようになりました。

客室乗務員の除菌対策
ドリンクサービスのカートがまわるときには客室乗務員はマスク、手袋とセーフィティグラスを着用しています。水とアップルジュースが紙コップで提供され、お茶は紙パックのまま手渡されます。この時に、容器を除菌してくれる心遣いがありました。

お茶のパックも除菌して渡してくれますzoom
お茶のパックも除菌して渡してくれます

機内販売は継続
機内販売も続いています。現在はお客様との接触を最小限にするため、現金の取り扱いは休止していますが、クレジットカード、JALクーポン、JAL旅行券、JALギフト券は使用でき、カード使用時は決済端末も消毒するなど気遣いがされていました。

トイレの清掃風景
接触感染では座席回りの他、トイレが一番気を付けなければいけないと海外渡航医療に詳しいドクターはアドバイスしています。頻繁に利用されるトイレですので、客室乗務員の掃除回数も増えています。今回、徹底した掃除の様子を確認することができました。キャビンアテンダントの芝さんは防護服を着用し、マスクに加えてセーフティグラスをした上で作業をすすめます。取手、蛇口、シンク、鏡や便座を除菌していきます。シンク横のスペースにも消毒液が置かれ、お客様へ安心して搭乗して貰いたいという気持ちが伝わりました。

防護服を着てトイレ掃除をする客室乗務員zoom
防護服を着てトイレ掃除をする客室乗務員

客室乗務員の対応を聞く
客室乗務員に話を聞くことができました。長谷川さんは、現在のお客様の数は「ファーストクラスやクラスJは比較的埋まっていますが、普通席はまだ空席が多くなっています」と言います。接客に関しては、「今までは能動的に話しかけるようにしていましたが、コロナ禍の中では、お客様の中にはお話をなさりたい方がいる一方、なるべく接触機会を減らしたいと思っていらっしゃるお客様がいらっしゃいます。それを見極め、お客様との距離感を大事にしています」とのことで、接客の中での緩急のつけ方が必要と話してくれました。

チーフキャビンアテンダントの井澤さんは、サービスの進め方を次のように話してくれました。「アイコンタクトは難しいのですが、今まで以上に意識しています。マスク越しですが、自分から笑顔でお客様に問いかければ必ず笑顔で返してくださる」と言います。また、サービスの改善では、お客様へのアンケートを集計して社内検討し、改善につなげているとのことで、コロナ禍の中で変わる価値観にもしっかり対応しています。

ファーストクラスの食事が変わった
最後に、岩永さんにファーストクラスサービスについて聞きました。「お客様からは市中のレストランは密になるので出かけにくく、機内の食事を楽しみにしているという方が多くいらっしゃいます」と話し“カジキマグロの枝豆ソース”を見せて貰いました。「主食では温めた後プラスティックカバーで覆い、全て空気に触れないよう工夫しています。パン類なども個包装のものに変わっています。お客様にはカバーを取って頂くご不便をおかけしますが、ご理解頂いています」と教えてくれました。

ファーストクラスの食事にはプラスティックカバーがかかりますzoom
ファーストクラスの食事にはプラスティックカバーがかかります

4か月ぶりに乗った航空機では、その様子が以前とはガラリと変わりました。感染対策を施した航空機での移動は、他の乗り物に比べより安心して利用できる輸送手段として認知されていくことでしょう。

取材協力:JAL ⇒ https://www.jal.co.jp/

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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