トラベルコラム

  • 【連載コラム】イッツ・ア・スモール・ワールド/行ってみたいなヨソの国
  • 2017年4月18日更新
夢想の旅人=マックロマンスが想い募らず、知らない国、まだ見ぬ土地。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス

クラブ100番地

友達がロンドンに旅行中で、彼の行動をインスタグラムで追いかけることができます。中に見覚えのあるお店のエントランス部分の写真を発見。わお、100Clubじゃないか。

確かオックスフォードストリートの100番地にあってその名前だったんじゃないかな。キャパシティも100、とは言わないまでも300人も入ったら窒息しそうになるくらいの小さなクラブです。ちなみにクラブと言っても業態は日本におけるライブハウスとほぼ同じ。イギリスには「ライブハウス」という呼び名は存在していなかったと記憶しています。和製英語なのかな。

100Clubはイギリスのロック系ミュージシャンの多くがそのステージを踏んでいる老舗。特にパンクバンドにとっては登竜門的な存在で、70年代後半のロンドンパンクムーブメントを語るに絶対に欠かせないリアル聖地です。ここを通過せずに世に出たパンクロッカーはいないと断言してもよい。
現在の100clubのバーカウンター(30年前からあまり変わってない)photo by Kitszoom
現在の100clubのバーカウンター(30年前からあまり変わってない)photo by Kits
僕がロンドンに住んでいたのは80年代で、もうパンクのムーブメントは過ぎ去っていたけれど、当時好きだった(あまり売れてない)ロックバンドが頻繁にライブをやっていたのを追いかけて本当によく足を運びました。

通ってるうちに毎回同じ顔に会ったり、バンドの方もこっちを覚えてくれるようになったり、みんなで、こう、一緒になってバンドを育ててくみたいなね。コアな一体感が生まれるのは小さいハコならではです。(そのバンドは結局さほど育たなかったですけど。)

残念ながら僕(当時現地でミュージシャンでした)は、 100clubのステージに上がったことがありません。僕が加入したバンドはその時すでにまあまあ名前が売れてしまっていたので、ロンドンではもう少し大きなハコで演奏していました。

ロンドンにはもうひとつ、忘れてはならない老舗クラブ=Marqueeがあるのですけど、こちらでは日本でも人気だったジョニーサンダースがしょっちゅう登場していて、ここにもよく通いました。規模も100clubと同じくらいで、東京で言えば屋根裏とロフトみたいな関係なのかな。しかしその後、移転して立派な施設に生まれ変わってしまい、名前はそのまま残ったものの、とても「伝説のハコ」という感じではなくなってしまいました。(現在は閉店しているとの未確認情報あり)その意味でもその後30年以上も淡々と営業を続けている100clubは本当に貴重&偉大な存在だと思います。友達のインスタを見るまで当時のことすっかり忘れていましたが、健在であることを知ってとても嬉しい気持ちになりました。

ちなみに僕のラストライブが移転してリオープンしたばかりのMarqueeでした。音響システムが素晴らしく整っていて、お客も満杯でよいライブだったと記憶しています。その夜ちょっとしたロマンスも発生したんだけど、その話はまた別の機会に。
壁に掛けられたミュージシャンたちの写真 photo by Kitszoom
壁に掛けられたミュージシャンたちの写真 photo by Kits
当時、ローリングストーンズのミックジャガーとキースリチャーズが不仲とされていて、実際に活動も休止してるみたいな状況だったのですけど、ある夜、何の前触れもなく100clubでローリングストーンズのシークレットライブが開催されたもんだから業界は騒然。お客の全てが招待だったわけではないらしいので、中には何も知らずにたまたまクラブを訪れた一般客がいたことになります。強運すぎる。で、音楽新聞によると「演奏の終わったあとミックとキースはオックスフォードストリートを二人で一緒に同じ方向に歩き夜の街に消えていった。」とありました。以降、現在にいたるまでローリングストーンズは録音もライブも意欲的に活動を続けていますから、その100clubの夜が彼らにとってある新しい出発地点となったのではないかと、ファンの僕は思っています。



おやおやマックロマンス、今回は昔話かい。いつもの妄想はどうした?

えーとね。妄想というかまあ、夢としてですな。DJでロンドンに行きたいというのはあります。パンクロッカーとして叶わなかった夢を果たしにね。いざ100clubに。待ってろよ、ロンドン。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス
マックロマンス:プースカフェ自由が丘(東京目黒区)オーナー。1965年東京生まれ。19歳で単身ロンドンに渡りプロミュージシャンとして活動。帰国後バーテンダーに転身し「酒と酒場と音楽」を軸に幅広いフィールドで多様なワークに携わる。現在はバービジネスの一線から退き、DJとして活動するほか、東京近郊で農園作りに着手するなど変幻自在に生活を謳歌している。近況はマックロマンスオフィシャルサイトで。
マックロマンスオフィシャルサイト http://macromance.com
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