旅の扉

  • 【連載コラム】こだわり×オタク心
  • 2016年4月23日更新
arT'vel -annex-
コラムニスト:Tomoko Nishio

旅のスタイルで選ぶ 世界遺産・カルカッソンヌのホテル4選

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フランス屈指の観光地のひとつ、南仏のカルカッソンヌ。町の南東の小高い丘に佇む、中世に築かれた二重城壁に囲まれたシテは世界遺産に登録されています。
三角錐の塔ドンジョンがそびえる見事な城壁の姿や、石畳の細い小道が迷路のように入り組むシテ内は古の時代の趣が満ち溢れており、とくに中世好き・歴史好きの方々は一層心が打ち震え、好奇心がめらめらと掻き立てられるに違いありません。
今でこそ城壁のナルボンヌ門から中心部のコンタル城、サン・ラザール教会へと向かう道はお土産屋さんやブティック、レストランやカフェが並び、観光地という風情もありますが、カルカッソンヌがそもそも要塞であることからもお分かりのように、この地はかつて「ラングドック(オックの国)」の要衝のひとつであり、ことに13世紀にラングドックの運命を決定づけたカタリ派戦争(アルビジョワ十字軍)の攻防の地のひとつでした。
のっけからきな臭い話になりましたが、それは昔の、歴史の話。
今のカルカッソンヌは、先の賑わいはもとより、「カルカッソンヌを見ずして死ぬなかれ」とまで言われる景観美とともに、静かに中世の時代を伝えます。
日中の遠景はもとより、夕刻にライトアップされた城壁の姿もまた見事。オード川にかかる橋、ポン・ヌフからカルカッソンヌを望む位置は絶好の撮影ポイントですので、ぜひ訪れてくださいね。

今回はこの史跡を内から、あるいは外から楽しめるホテルをご紹介します。

カルカッソンヌの世界遺産の城壁はSNCFの駅から徒歩20分程。荷物を持って移動するならもちろん駅近のホテルの方が便利なのですが、やはり一度は二重の城壁に囲まれたシテ内部に泊まってみたいと思いますよね。日暮れにライトアップされ、日中にいた大勢の観光客が引け、静けさを取り戻した中世の小路を静かに散歩できるのは、シテ内に泊まってこそのお楽しみです。
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そのシテ内部のホテルのひとつが5つ星の「オテル・ドゥ・ラ・シテ(Hotel de la Cité)」。

シテ内にあるサン・ナザール大聖堂のはす向かいに建つ19世紀の城館を利用したホテルで、部屋はスイートを含め全60室。クラシックな内装は貴族の館に停まっている、という趣十分。
ホテル併設の「バルバカン」はミシュランの1つ星を獲得している名店でもありますので、ぜひ味わってみてはいかがでしょう。
http://www.accorhotels.com/gb/hotel-8613-hotel-de-la-cite-carcassonne-mgallery-collection/index.shtml
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もう1軒、シテ内の4つ星ホテル「ベストウエスタン・オテル・ル・ドンジョン(BEST WESTERN Hotel le Donjon)」は、かつての領主の城、コンタル城のすぐそば。スイートを含め62室を有します。
こちらも100年ほど前の建物を利用したホテルですが、一番小さな部屋でも2人分のスーツケースを広げられる余裕があり、広さも十分。バスルームなどの水回りは整備され使い勝手はOK。館内にはアンティークが飾られ、シテ内のホテルとしての趣を盛り上げてくれます。このホテルが併設するブラッスリー「ドンジョン(Donjon)」は郷土料理も味わえる人気の店です。
ちなみにこのホテルは3つの棟からなりますが、その棟のひとつに12~13世紀にこの地を収めていたロジェ子爵の名が付けられています。郷土の英雄の一人ですので、この地方を旅する際には覚えておくといいかもしれません。
http://www.hotel-donjon.fr/
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シテの外側のホテルでご紹介したいのが、シテへ向かう橋、ポン・ヴューのたもとにある4つ星ホテル「レ・トロワ・クーロンヌ(Hotel Des Trois Couronnes)」。
全70室の部屋はシティホテル風で洗練されたスタイリッシュな内装。44室が窓から世界遺産の景観が望める、いわゆる「シテ・ビュー」になっています。
夜、室内でゆっくりくつろぎながらライトアップされ、宵闇に浮かび上がるシテがゆったりと望めるのは、この程よい距離だからこそ。
ホテルの向かい、橋のたもとにある名もない祠にはマリア像が祀られ、朝夕に守り人が訪れます。
祠は「再建」と聞きますから、つまりは古くからここにあったのでしょう。
祠、橋とともにシテの景観をしみじみ眺めていると、かつて騎士達が馬で駆け抜け、祠にお参りをしながら商人や町の人たち、旅人が行き交った中世の様相が浮かんでくるようです。
http://www.hotel-destroiscouronnes.com/
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最後にご紹介するのが5つ星のラグジュアリーホテル「ル・ドメーヌ・オーリヤック(Le Domaine d'Auriac)」。
ルレ・エ・シャトーに加盟しており、建物は17世紀の貴族の館。広大な庭と森に囲まれ、2棟のホテルのほか、2つのレストラン、テニスコート、プール、そしてゴルフコース(18ホール)を備えた、いわばリゾートホテルです。
部屋は全24室で、すべてバスタブ付きで、一番小さな部屋でも21平米の広さです。
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レストランの一つ「ベルナール・リゴーディ(Bernard Rigaudis)」は郷土料理をモダンにアレンジした料理が自慢。ラングドック名物のカスレや地中海のシーフード料理がとくに人気だそうです。
カルカッソンヌのシテまでは車で5分という距離で、訪れるには車が必要ですが、レンタカーでこの地方を巡る方は、ぜひ訪れてみてください。
http://www.domaine-d-auriac.com/

お好みスタイルの宿泊で、世界遺産のカルカッソンヌを満喫してくださいね。
コラムニスト:Tomoko Nishio
旅行業界・旅&芸術文化ライター、動物好き。旅行業界誌記者・編集者を経てフリーの旅行ライターに。南仏中世と「三銃士」オタク。歴史とアートに軸を置きつつ、絵画、バレエ、音楽、物語、映画、漫画のロケ地・聖地巡り、海外旅行や小さなお散歩まで、様々な視点で旅を発信。「旅」は生活のなかにもあり。

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