カンタス航空の本社がある
シドニー空港隣接地にカンタス航空の本社があり、内部にロングリーチ・トレーニングセンターと呼ぶ客室乗務員訓練所やIOCというフライト・オペレーションを管理する施設があります。ロビーには創業期に飛んでいたアブロ504K、1947年にアブロランカストリアン機に装着されたロールスロイス マーリンエンジン、ジャンボジェットに装着された同RB211などとともに現在の主力機ボーイング787-9の大型モデルなどの展示物もあり、光り降り注ぐ明るい空間はとても居心地のいい場所です。
カンタス航空は、数年内に長距離路線を開設する予定で、プロジェクトサンライズが進んでいます。シドニーからロンドンとニューヨークに直行で飛ぶというものです。この準備のために、本社でもお客様への身体的影響を含めた「ウェルビーイング」をもたらす研究が進みます。シドニー大学との共同研究という形が取られており、人類が初めて20時間を機内で過ごすことへの影響を研究しています。
ホテルで飛行機を眺める
シドニー空港での宿泊は、空港隣接地にいくつものホテルがある中で、ターミナルに一番近いホテルの一つ「Ibis バジェット シドニーエアポート」を選びました。バジェットと言いながら、一泊2万円以上するのは、日本の円安の影響です。
シドニー空港の国際線ターミナルビルに到着しますので、国内線まで無料シャトルバスで移動できます。ターミナルビルを東側に出て、歩いて15分もすればホテルに到着します。空港への有償シャトルバスは用意されるものの、よほどの大荷物でない限り歩きで十分です。ホテル内にレストラン施設などはありませんが、隣接地にあるマクドナルド、ケンタッキーフライドチキンなどの店舗が利用できます。
ホテルの壁の各所には、飛行機がモチーフの絵が飾られているのが嬉しい限り。フロントで空港の駐機場に近い側の部屋をリクエストすれば、大きな窓から飛行機の離着陸を眺めることができます。目の前はビジネスジェットの駐機場があり、機体が見えるほか空港南側のほぼ全域が目に入ります。滑走路16Lへの着陸機や逆風時に34Lから離陸する航空機を見ることができます。アプリのフライトレーダー24を使えば、航空機の位置情報把握もでき、目が離せません。撮影だけでなく、もちろん仕事するにもいい環境です。
航空機ウォッチングなら
「Shep’sMound」は、空港中央部を横切るM1道路の脇にある航空機を眺めることのできる場所です。駐車場と屋根つきの小高い丘があり、国際線ターミナルビルに近い西側滑走路の中心部に位置し、離着陸機が見える他、東側滑走路へ移動する航空機が地上滑走する様子を眺めることができます。実際に運用される管制塔近くにあることから、航空機の眺望が良いのも頷けます。
HARSに向かう
今回のシドニー滞在では、南の郊外にあるアルビオン地区シェルハーバー空港のHARS(歴史的航空機修復協会)に向かいました。車では1時間強、鉄道で向かうにはシドニー空港国内線から2つ目のウォーライ・クリーク駅で乗り換えて、サウスコーストラインの2階建て列車でアルビオン・パーク駅を目指します。時に太平洋の大海原を眺めながら、およそ2時間ののどかな旅。HARSは下車後徒歩10分程度の場所にあります。
開館は09:30であることと、閉館の15:30を確認し、入場料30ドル(約3000円)を支払い入館します。ギフトSHOP、カフェもありますので、時間内に利用してみたいものです。
飛べる機体が揃う
軍用・民間両方の機体がある中で、貴重な機体はいくつもあります。飛行可能なものから言うと、愛称がコニーと名付けられた、カンタス航空ロッキードC121Cスーパーコンステレーションが最大です。1947年にカンタス航空のシドニー・ロンドン間をカンガルールートとして飛んだ、由緒ある機体です。ここの機体は、綺麗な機内ととともに同型機を再生したもの。世界に飛ぶことのできるこの機体はブライトリング所有機とこの機体のみと言います。
フォッカーFVIIBサザンクロスは、欧米で1920年代に使われた機体ながら、本機は南十字星を名乗るオーストラリアを背負った機体をレプリカしたもの。そして、STOL性能を持つ軍用輸送機デハビランドDHC-4カリブーも健在であり、エンジンを始動して見せてくれました。トランスオーストラリア航空(TAA)コンベア440、TAA DC-3なども飛行可能なビンテージ機です。飛ぶことのできる軍用機は、オーストラリア海軍など3機の軍用型C-47、ロッキードオライオン、同ネプチューンなどがあります。
地上保管機もある
飛ぶことはできないものの、美しく保管されるのは、1989年にロンドン・シドニー間を20時間を超えるノンストップで飛んだ世界記録を持つボーイング747-400です。圧倒的な存在感で屋外に威風堂々と展示されています。2015年にカンタス航空より寄贈されるにあたり、シドニー空港からHARSのあるシェルハーバー空港までの12分という最短飛行記録も生んで、展示されることになりました。この機体は、機内の案内に加えて元パイロットがコックピットを解説するものや、主翼の上を歩ける「ウィング・ウォーク」ができるツアーを申し込むことができます。
軍用機では、ジェネラルダイナミクスのF111Cの他に、イングリッシュ エレクトリック キャンベラなどゆっくり見ていると、一日の開館時間の6時間はすぐに過ぎてしまいます。
展示物も多い
多くの飛行機に囲まれて楽しく過ごしたあとは併設されたカフェ「コニー」で一息ついてみました。展示物で囲まれた場所での飲食は想い出に残ることでしょう。隣のギフトショップも忘れてはいけません。
カフェのそばはオーストラリアの空を飛んだ多くの航空歴史資料で埋まります。ここは、ヴァンパイアの一人乗りコックピット機首部分だけの展示やロールスロイス マーリン ピストン エアロ エンジン、模型やポスターなど、多くの貴重品であふれています。展示ケースの中には、カンタス航空の過去の機内サービス品や模型なども並んでおり、ボーイング747‐400展示機がシドニー空港から空輸されてきた日のパイロットのサインが入ったモデルや写真なども見ることができました。
多くの展示物が、飛ぶために作られた本来の目的で維持、修復され、青空に舞い上がる姿は、伝統工芸品の修復にも通ずる航空文化を後世に残しています。支えるボランティアスタッフの技術が伝承される仕組みがあるのも羨ましい環境です。
シドニーで一日あれば、HARSへの訪問で価値ある航空史に触れる時間を作ることをお勧めします。
取材協力 : カンタス航空 ⇒ https://www.qantas.com/jp/ja.html