旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2023年11月24日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

「麻布台ヒルズ」開業!緑あふれる都心の広場とアートを見に出かけよう

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桜麻通りから麻布台ヒルズを見上げる

東京・港区の「麻布台ヒルズ」が11月24日に開業。内覧会で、その全貌を見学してきました。
 森ビル株式会社等が、約300件の権利者の方々とおよそ35年かけて進めてきたというこの市街地再開発事業です。地下鉄の駅で言うと、南北線六本木一丁目と日比谷線神谷町の間に位置する約8.1haという広大な敷地。とにかく広い! 昔は東京のど真ん中にありながらも、意外に昭和っぽい住宅が立ち並ぶ庶民的な地域もあったと記憶していますが、新しく生まれ変わった近未来都市の様相を見て驚くばかりです。

「麻布台ヒルズ」の開発コンセプトは「Modern Urban Village」~「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」。そして、「Green & Wellness」~都心にありながら豊かな緑に囲まれ、自然と調和した環境の中で多様な人々が集い、より人間らしく生きられる新たなコミュニティの形成を目指します。
街はヒルズの中心に広場を据えて、高さ約330m、現時点で日本最高層の「森JPタワー」と2つのレジデンス棟、計3棟の超高層タワー、ガーデンプラザA~Dを配置。「あ、丹波栗のモンブランの『ヒサヤ キョウト』がある! マンハッタンの『鮨 麻布』も大阪のフレンチ『リエゾン』も出店している!」というような人気の商業施設がずらり。さらに文化施設、高級ホテル、オフィス、住宅、教育機関、医療機関など多様な都市機能が集まっています。

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中央広場が麻布台ヒルズの中心

緑地は中央広場を含めて約24,000m²。「圧倒的な緑を実現するためには建物の超高層化が必要」というのがヒルズ開発のキーワード。超高層タワーを建てることで、足元に緑豊かなオープンスペースを生み出し、「ヴァーティカル・ガーデン・シティ(立体緑園都市)」を実現し、その上で多様な機能を複合したコンパクトシティ。この「麻布台ヒルズ」はまさに、森ビルが長年にわたり手がけてきた「ヒルズ」の集大成です。

神谷町駅からヒルズに直結する通路はありますが、まずは外観を見たいと思い、駅を出て森JPタワーを目指しました。六本木ヒルズの欅坂を彷彿とさせるなだらかな坂道「桜麻通り」を上がっていくと、左手に「ガーデンプラザB」の低層部のユニークな建築が目を引きます。イギリスのトーマス・ヘザウィック氏のデザイン。ヘザウィック氏は、ロンドンオリンピックの聖火台をデザインした方だそうです。ウィンドウショッピングするしかなさそうなブランド店舗がズラリと並んでいますが、この季節、散歩するだけでも楽しそうです。

ほどなく都心とは思えない広さがある「中央広場」に到着します。周囲は落葉樹を中心に計画されており、季節の移り変わりを感じることができるように設計されています。人々が触れられる緑を目指した四季ごとに表情を変える約320種もの多様な植栽。また、地形の高低差を生かして敷地全体に流れる水は「中央広場」につながり、水生植物、草地、低木植栽が連続するエコトーンを形成し、生きものの住処となるような植栽だそうです。
この緑地は、なるべく手がかからないで丈夫に育つ「街路樹」とまったく異なる考え方。人も生態系の一部。手をかけて緑を育て、さまざまな動植物と共生していくお庭。成功したらすごいですね!
 6000m²もあるというこの「中央広場」は、緑豊かな憩いの空間だけでなく、街全体の賑わいを創出する場で、四季折々の多様なイベントが開催される予定。隣接して約550㎡の芝生広場が気持ちよく、カフェもありますし、天気の良い日にやってきて、のんびりしたい場所です。

オラファ―・エリアソン展より【瞬間の家】zoom
オラファ―・エリアソン展より【瞬間の家】

ところで、森ビルと言えば「文化」を都市づくりにおける重要な要素と位置付けています。「麻布台ヒルズ」では「街全体がミュージアム」がコンセプト。住宅やオフィス、ホテルのロビーや広場などあちこちにパブリックアートが設けられているのはもちろん、中核をなす「麻布台ヒルズギャラリー」では、2024年3月31日まで開館記念展として「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」が開催されています(ガーデンプラザA)。

チームラボ世界初公開の新作【Bubble Universe】©チームラボzoom
チームラボ世界初公開の新作【Bubble Universe】©チームラボ

来年2月には、もう一つの目玉、「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」(ガーデンプラザB)が加わります。台場からの移転ですが、新作品もあり、進化するチームラボという印象でした。オープンに先駆けて、内覧会で世界初公開されたのはインタラクティブな2作品。特に「Bubble Universe」と題されたおびただしい数の輝く球体に埋め尽くされた空間は写真を撮りたくなるし、その球体をずっと眺めていたくなる作品でした。チームラボ代表の猪子寿之さんもずっと空間のなかに座っていましたが、球体のなかで変化する光の現象に没入していく感覚は、これまで経験したことがなく、とても新鮮でした。
因みに作品は、「認知と存在、そして、人間が世界をどのように見ているのかを模索すると同時に、現象が環境との連続的な関係性の中に存在することを示唆しています」と説明されていました。

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BLEACH©2023 Tite Kubo/Shueisha Inc.

さらに注目は、ガーデンプラザAにオープンした「集英社漫画アートヘリテイジ」の常設ギャラリー。そのままだと劣化してしまうマンガ原画の保存や活用について考え、「マンガというアート」を継承するというプロジェクト。これまでウェブサイトに公開されて抽選販売などをおこなっていましたが、漫画ファン垂涎の展示です。展示されている作品のうち何点かは販売されるそうです。現在、金属板に活字を埋め込んだ版でプリントした尾田栄一郎「ONE PIECE/Regenesis」、千年先にマンガを伝えるにはどうすればよいか?を考え、手すきの美濃紙を用い、コロタイプ印刷を行なった久保帯人「BLEACH/Millennium」など、貴重、かつ見ごたえのある作品が展示されています。

<ヒサヤ キョウト>美味しいものがあちこちにありますzoom
<ヒサヤ キョウト>美味しいものがあちこちにあります

見どころ満載の「麻布台ヒルズ」。次のお休みに出かけてみてはいかが?

データシート
計画名称 虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業
所在地 東京都港区虎ノ門5丁目、麻布台1丁目および六本木3丁目の各地内
開発区域面積 約8.1ha
敷地面積 約63,900m²
麻布台ヒルズ森JPタワー 約24,100m²
麻布台ヒルズレジデンス A 約16,500m²
麻布台ヒルズレジデンス B 約9,600m²
ガーデンプラザ A,B,D 約12,000m²
建築面積 約37,100m²
延床面積 約861,700m²
麻布台ヒルズ森JPタワー 約461,800m²
麻布台ヒルズレジデンス A 約169,000m²
麻布台ヒルズレジデンス B 約185,300m²
ガーデンプラザ A,B,D 約43,800m²
オフィス面積 約214,500m²
緑化面積 約24,000m²
住宅戸数 約1400戸
店舗面積 約23,000m²
用途 事務所、住宅、店舗、ホテル、文化施設、インターナショナルスクール、診療所 他
階数
麻布台ヒルズ森JPタワー 64階
麻布台ヒルズレジデンス A 54階
麻布台ヒルズレジデンス B 64階
高さ
麻布台ヒルズ森JPタワー 約330m
麻布台ヒルズレジデンス A 約240m
麻布台ヒルズレジデンス B 約270m
ガーデンプラザ A,B,D 約41m
着工 2019年8月

フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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