旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2013年7月24日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

ハワイ島の旅(2) アメリカ合衆国最南端と秘境ビーチを目指して【前篇】

アメリカ合衆国最南端、サウス・ポイント(カ・ラエ岬)。木製のやぐらは、魚を釣りあげたり、船の上げ下ろしに使われます。zoom
アメリカ合衆国最南端、サウス・ポイント(カ・ラエ岬)。木製のやぐらは、魚を釣りあげたり、船の上げ下ろしに使われます。

ハワイ諸島でいちばん大きな島、ハワイ島には、広さ以外でも「ハワイでいちばん」というスポットがいくつかあります。
その「ハワイでいちばん」を訪ね歩くのも、ハワイ島の楽しみ方のひとつ。

島の最南端にあるサウス・ポイント(カ・ラエ岬)は、ハワイはもとより、アメリカ合衆国の最南端でもあります。西海岸のカイルア・コナ、東海岸のヒロのどちらからも1時間半から2時間のドライブ・コース。ひたすら南下してくると、海に向かって最南端へ続くサウス・ポイント・ロードが続いています。

サウス・ポイント・ロードの両側は、見渡す限りの牧草地帯。草をはむ牛たちの群れが絵のごとく風景に同化し、目の前に突如現れる風力発電所の巨大風車の隊列を過ぎれば、目指すポイントまであとわずか。やがて、ここが最南端であることを示す石盤が見えてきます。

荒涼とした景色の中にぽつんとあるのが、アメリカ合衆国最南端であることを証明する石盤。zoom
荒涼とした景色の中にぽつんとあるのが、アメリカ合衆国最南端であることを証明する石盤。

ただただ赤土の大地が広がり、とらえようのない景色のここが「アメリカ合衆国最南端」といわれてもピンときませんが、ぐるりと見渡すと水平線が丸くカーブを描いているのがわかります。

印象的なのは、ぽつりぽつりと見える低木がみな、地面をはうように一定方向へ枝を伸ばしていること。長い間、同じ方向から吹く風にさらされてしまったからでしょうか。その姿は、自然にあらがうことをあきらめたかにも見え、快晴の青空のもとにいながら、寂寥感すら覚えます。

ここから海岸線までは目と鼻の先です。岩場に立つ滑車がついた木製のやぐらは、カジキなどの大物を釣り上げる時に使うものだそう。近くで数人の釣り人が糸を垂れ、ようやく見つけた人の気配に、なんだかほっとしてしまいました。

今も残るヘイアウ(神殿跡)。一帯は、アメリカ国定歴史建造物地区に制定されています。zoom
今も残るヘイアウ(神殿跡)。一帯は、アメリカ国定歴史建造物地区に制定されています。

彼らの足元をのぞけば、10m以上はあろうかと思われる断崖の下に恐ろしいほど澄み渡った海。岩に砕ける白波を見つめていると足がすくんでくるのですが、ダイブを楽しむ輩もいるのですから、さすが陽気なハワイのロコ・ピープル! よく見ると、海から上がってくるための縄梯子もかかっていました。

岩に刻まれた穴は、タヒチからハワイへ渡ってきた人たちがカヌーをつないだ跡といわれるカヌー・ホール。1000年以上も前の先住民族の痕跡が、今もそのまま残っています。zoom
岩に刻まれた穴は、タヒチからハワイへ渡ってきた人たちがカヌーをつないだ跡といわれるカヌー・ホール。1000年以上も前の先住民族の痕跡が、今もそのまま残っています。

岬の名前でもある「カ・ラエ(Ka Lae)」とは、ハワイ語で「先端」という意味。1000年以上も前、タヒチのほうからやってきた先住民族は、ここからハワイに上陸したといわれ、岩場には今でも彼らがカヌーをつないだ痕跡や、ヘイアウと呼ばれる神殿跡が残ります。

アメリカ合衆国最南端の地は、時間が止まったような場所。ここまで来ると、風のうなりしか聞こえません。その音に耳を傾けていたら、さきほどからダイブを楽しんでいたハワイアンが岩場から上がってきた姿に、一瞬、先住民族がひょっこりと顔を出したような錯覚を覚えたのでした。


写真/宮澤 拓

Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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