ハワイ諸島でいちばん大きな島、ハワイ島には、広さ以外でも「ハワイでいちばん」というスポットがいくつかあります。
その「ハワイでいちばん」を訪ね歩くのも、ハワイ島の楽しみ方のひとつ。
島の最南端にあるサウス・ポイント(カ・ラエ岬)は、ハワイはもとより、アメリカ合衆国の最南端でもあります。西海岸のカイルア・コナ、東海岸のヒロのどちらからも1時間半から2時間のドライブ・コース。ひたすら南下してくると、海に向かって最南端へ続くサウス・ポイント・ロードが続いています。
サウス・ポイント・ロードの両側は、見渡す限りの牧草地帯。草をはむ牛たちの群れが絵のごとく風景に同化し、目の前に突如現れる風力発電所の巨大風車の隊列を過ぎれば、目指すポイントまであとわずか。やがて、ここが最南端であることを示す石盤が見えてきます。
ただただ赤土の大地が広がり、とらえようのない景色のここが「アメリカ合衆国最南端」といわれてもピンときませんが、ぐるりと見渡すと水平線が丸くカーブを描いているのがわかります。
印象的なのは、ぽつりぽつりと見える低木がみな、地面をはうように一定方向へ枝を伸ばしていること。長い間、同じ方向から吹く風にさらされてしまったからでしょうか。その姿は、自然にあらがうことをあきらめたかにも見え、快晴の青空のもとにいながら、寂寥感すら覚えます。
ここから海岸線までは目と鼻の先です。岩場に立つ滑車がついた木製のやぐらは、カジキなどの大物を釣り上げる時に使うものだそう。近くで数人の釣り人が糸を垂れ、ようやく見つけた人の気配に、なんだかほっとしてしまいました。
彼らの足元をのぞけば、10m以上はあろうかと思われる断崖の下に恐ろしいほど澄み渡った海。岩に砕ける白波を見つめていると足がすくんでくるのですが、ダイブを楽しむ輩もいるのですから、さすが陽気なハワイのロコ・ピープル! よく見ると、海から上がってくるための縄梯子もかかっていました。
岬の名前でもある「カ・ラエ(Ka Lae)」とは、ハワイ語で「先端」という意味。1000年以上も前、タヒチのほうからやってきた先住民族は、ここからハワイに上陸したといわれ、岩場には今でも彼らがカヌーをつないだ痕跡や、ヘイアウと呼ばれる神殿跡が残ります。
アメリカ合衆国最南端の地は、時間が止まったような場所。ここまで来ると、風のうなりしか聞こえません。その音に耳を傾けていたら、さきほどからダイブを楽しんでいたハワイアンが岩場から上がってきた姿に、一瞬、先住民族がひょっこりと顔を出したような錯覚を覚えたのでした。
写真/宮澤 拓