トラベルコラム

  • 【連載コラム】イッツ・ア・スモール・ワールド/行ってみたいなヨソの国
  • 2013年7月4日更新
夢想の旅人=マックロマンスが想い募らず、知らない国、まだ見ぬ土地。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス

アイスランド 詩人になるために

シュガーキューブスってバンドをご存知かしら?80年代にアンダーグランドなところからヒョイと出て来て、当時のセッターらに指示されてあっと言う間にグランドスラムにのしあがったグループです。解散後はボーカリストのビョークさんがそれこそあっちこっちで活躍しているので、「ビョークが昔いたバンド」と言った方がわかる人が多いかも知れません。映画「ダンサーインザダーク」の主人公、と言えばわかるかな。

僕が若い頃に属していたバンドのある曲がパンク、ニューウェイブ(死語ですね。すみません。)系のコンピレーションアルバムに抜擢されましてね。そのアルバムの中にまだ無名な頃のシュガーキューブスの曲が収録されていました。あっちはその後売れっ子になるわけなんだけど、まあそのアルバムの中では同等の扱い、それが今でも僕のささやかな自慢なわけです。音楽をやっていて、シュガーキューブスと同じ土俵で扱われるって、そうだなあ、例えば野球をやっていて、中学校の時に松坂投手のいるチームと対戦したことがある。あ、補欠でね。10対ゼロで負けたんですけど。っていうぐらいの感じですかね。うむ。自慢するほどの内容でもないですね。
で、シュガーキューブスの出身地がアイスランド。僕、思うんだけど、アイスランドほど不思議な国は他にはないんじゃないかしら。名前からして神秘的。「アイスランド」だって。まるで夢の中の国みたいな響きです。じゃなければファンタジー映画。例によってウィキで調べてみましたよ。ふむ。他の国には普通にありそうなものがないんだわ。まずは鉄道がない。それから軍隊がない。(戦争になったら警察が戦うそうです。)電力は水力がメインで原発はおろか火力発電所もない。クレジット決済が行き届いているから現金取引がない。で、おまけに名前に姓がない。どうです?このないものだらけの国。でもね、どうも現地の人たち、それなりにハッピーにやってるみたいだし、なきゃないでいいんじゃないかって。名前に姓があったからそれでどうなんだ?という気持ちにもなってきます。

そうそう、冬は昼がない。一日中夜。しょうがないから人々は家にこもって本ばっかり読んでいる。だもんだからアイスランド人は文学や詩を嗜む知的な国民性を持っているのだそうな。んで、詩人や作家、音楽家らが多く輩出されている。ビョークのような個性的なアーティストが出てくる背景には、そのようなストーリーがあるようです。何だかね。ここまでこうやって書いてて思うに、僕は生まれる所を間違えましたね。一日中夜だって、何てロマンティックなんでしょう。
えーと。アイスランドには長期滞在しますよ。シーズンはもちろん冬。海の見える丘に建つ赤い屋根の一軒家を借ります。どうせ夜しかないんだから赤だって青だってどうだってよいような気もしますけど。でも、選べるんだったらやっぱり赤がいいな。そしてもちろんたくさんの本を持ち込みます。普段は読まない難解な哲学書とか、詩集とかです。ひと冬の間、読書に没頭して、英知を養い、ガールフレンドとの愛を育むわけだ。あ、僕の旅にはいつも傍らに美女がいるんだ。という話は前にもしましたよね。運が良ければ僕たちに神様からオーロラのプレゼントがあるかも知れません。でもそれは目的じゃなくてオプション。冬の間引きこもることが重要なんだ。そして、春が来て昼が戻る頃には美しい詩が奏でられるようになっているかも知れません。

あ、クレジットカードをお忘れなく。あちらじゃ夕食の魚を買うのにもカードが必要らしいですから。なんてね。カード会社のタイアップ記事みたいなエンディングになってしまいました。詩人への道のりは遠いなあ。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス
マックロマンス:プースカフェ自由が丘(東京目黒区)オーナー。1965年東京生まれ。19歳で単身ロンドンに渡りプロミュージシャンとして活動。帰国後バーテンダーに転身し「酒と酒場と音楽」を軸に幅広いフィールドで多様なワークに携わる。現在はバービジネスの一線から退き、DJとして活動するほか、東京近郊で農園作りに着手するなど変幻自在に生活を謳歌している。近況はマックロマンスオフィシャルサイトで。
マックロマンスオフィシャルサイト http://macromance.com
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