旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2019年4月26日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

人生を楽しもう!~カナダ・ケベック州へ~モントリオール①AURA@ノートルダム聖堂

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ノートルダム大聖堂外観
4月15日パリのノートルダム大聖堂が火災に見舞われたニュースには目が釘付けになりました。私はカトリック教徒ではありませんが、とても大切なものを失くしたようなさみしさと悲しさを覚えます。1日も早く美しい姿に戻ることを願うばかりです。

ところで、「ノートルダム」という言葉は、イエス・キリストの母である聖母マリアを指すフランス語で、世界各国のキリスト教関連施設などにノートルダムの名前が使われています。

モントリオール旧市街には、北米最大の規模を誇るノートルダム聖堂(Basilique Notre-Dame de Montreal)があります。
パイプオルガンコンサートもしばしば開催されるzoom
パイプオルガンコンサートもしばしば開催される
歴史を振り返ると、1642年、フランス人入植者のマンスとメゾヌーヴが、現在のモントリオールである要塞都市ヴィル・マリーを造りました。毛皮の交易基地としてにぎわい、人口が増えていきましたが、移民の中に多くのキリスト教関係者がいたことが知られています。彼らはヌーベル・フランスにもキリスト教の信仰を根付かせたいと考え、布教のみならず、病人の看護から子供たちの教育まで大変な苦労をしたそうです。

カトリック教会の聖シュルピス会は1657年に到着し、1672年に最初の聖堂を建設しました。現在の聖堂は1829年に竣工したゴシック・リヴァイヴァル様式。アイルランド系アメリカ人のジェームス・オードネル設計によるものです。内部はさらに時間をかけて作られました。

1994年にはカナダの歌姫セリーヌ・ディオンの結婚式、2000年にはカナダ第15代首相ピエール・トルドーの国葬が行われるなど、大変由緒ある聖堂です。
ブルーの幻想的な聖堂内部zoom
ブルーの幻想的な聖堂内部
しかし、フレンチカナダは、フランス同様、伝統と革新を両立させる土地柄なのか、今回、ノートルダム聖堂に行った目的は、あの安室奈美恵ちゃんのステージの映像を手掛けたクリエイター集団のMOMENT FACTORY 制作の映像体験のため。今、モントリオールで最も注目されるデジタルアートがこのノートルダム大聖堂で毎晩行われているというので、それを見に訪れたのです。
教会内にはカナダの先住民族にキリスト教を教えた様子も紹介されているzoom
教会内にはカナダの先住民族にキリスト教を教えた様子も紹介されている
「本当にこんな歴史ある聖堂で毎晩やっているの?」と思いましたが、
「自由席ですけれど、後ろの方が全体を見渡せますから」と勧められて、木のベンチに腰を下ろすと、目に飛び込んできたのは、ブルーの光に浮かび上がる壮麗な黄金の祭壇でした。彫刻された聖人たちは今にも動き出しそうです。すでにデジタルアートで映し出されたものなのかと思うほど、すべてが美しく輝いていました。

AURAのホームページには、「AURAは宗教的なテーマではなく、光により聖堂の美しさと豊かさを見学者に発見させる没入型体験である」と説明されています。
とにかくドラマチックzoom
とにかくドラマチック
そして、いよいよ開演。
暗がりの中、AURAのために作られたオーケストラによる幻想的なサウンドトラックとともに、幾筋もの光が彫刻の本当に繊細部分まで辿っていきます。
すべての彫刻が生きているかのように感じられましたzoom
すべての彫刻が生きているかのように感じられました
元々宗教的な意味を意図していないということですし、天国に行った気分というのでもないのですが、今思い出してみても、特別な空間を旅した感覚が残っています。
デジタルアートは今世界中でとても注目されていますが、最新鋭の技術を使って、近未来を描くだけでなく、歴史ある遺産がどれほどの人々の想いと技術の上に作られ、これまで大切に守られてきたのかを知らせることもできるのだなぁと、デジタルアートの新たな可能性を見たような気もしました。
ノートルダム聖堂の美しさを再認識させられる光の芸術に、感動がいまだに続いています。

取材協力:Tourisme Montréal 
フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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