旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2017年1月4日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

イギリス唯一の天然温泉付き五つ星ホテル『ザ・ゲインズボロー・バース・スパ』で過ごすスパタイム

『Bath(お風呂)』の語源にもなった歴史的都市に2015年開業したスパホテル。zoom
『Bath(お風呂)』の語源にもなった歴史的都市に2015年開業したスパホテル。
温泉保養地として2000年以上の歴史をもつイギリス南西部の町、Bath(バース)。
前回、クリスマスマーケットでもご紹介したこの町の温泉は古代ローマ人に愛され、18世紀には王族や貴族が集う高級リゾートとして社交場のような役割を果たしていました。現在ではイギリス国内を中心に、世界中からツーリストが訪れる観光都市となっていますが、意外なことに天然温泉を引いたホテルが初めて登場したのは2015年9月、わずか1年半前のこと。温泉地にはあたりまえのように温泉付きのホテルがある日本とは、かなり事情が異なるようです。

バース初、さらにはイギリスでも唯一となる天然温泉付きホテルが『The Gainsborough Bath Spa(ザ・ゲインズボロー・バース・スパ)』。ホテル名の『ゲインズボロー』は、優れた肖像画家として18世紀に活躍したトーマス・ゲインズボローに敬意を表してつけられました。彼は1759年から1774年までバースで暮らし、町の社交界の中心的存在だったのだそう。その影響もあり、バースには画家や音楽家、デザイナーといったアーティストが多く訪れるようになり、現在では美術館巡りができる町としても知られるようになりました。
ラグジュアリーホテルでありながら、こじんまりとしてアットホームな雰囲気が魅力。バスルームに温泉を引いたスイートルームも用意されています。zoom
ラグジュアリーホテルでありながら、こじんまりとしてアットホームな雰囲気が魅力。バスルームに温泉を引いたスイートルームも用意されています。
町の中心に3カ所ある源泉のひとつThe Cross Bath(クロス・バス)のお隣りにホテルはあります。建物は1824年、バースの温泉水に病を治す力があると聞いてやってくる貧しい人たちのための病院として建てられたもの。1932年、病院が移転してからは2005年までバース大学の一部になっていました。ホテルとして改装するにあたりジョージアン・スタイルのファーザードを残し、歴史的な趣を感じさせています。

いっぽう、館内の内装を担当したのは、ニューヨークやロンドンのホテル設計で数々の受賞歴を誇る設計事務所。クラシカルななかに華やかさがあり、99ある客室には部屋ごとに異なるデザインの家具が置かれています。客室のバスルームに温泉が引かれたスイートルームもあり、もちろんお部屋で温泉を楽しめるのは、イギリス中のホテルでもここだけです。

今回、滞在したのはクラシック・ダブルルーム。Wi-Fi、大型モニターのテレビ、iPodのドッキングステーションやエスプレッソマシーンなど最新の設備を備えています。都市部のシティホテルであれば当たり前の設備ですが、うれしかったのはバスルームが床暖房付きだったこと。冬の寒さが厳しいイギリスで、大理石のバスルームは正直いってけっこう冷えます。でもこれなら寒い外から部屋に帰ってきてバスルームに飛び込んでも足元はぽかぽか。さらに、バスタオルをかける金属製のバーまで温められていたのには感動しました。シャワーの後、清潔で温かいタオルに包まれる幸福感は格別ですよね。このバーはスパで着用した水着を干しておくのにも重宝しました。(ただし、かなり高温になるので、熱に弱い素材の場合は注意が必要です。)
ホテルの目の前がサーメ・バース・スパのルーフトップ・プール。古代風呂からモダンなプール、レストラン、トリートメントルームも備えた日帰りのスパ施設です。zoom
ホテルの目の前がサーメ・バース・スパのルーフトップ・プール。古代風呂からモダンなプール、レストラン、トリートメントルームも備えた日帰りのスパ施設です。
カーテンを開けると、部屋の窓から飛び込んできたのは、こんな景色。バースを代表するスパ施設『Thermae Bath Spa(サーメ・バース・スパ)』です。日本風にいうならいろんなお風呂を楽しめる日帰り温泉といったところでしょうか。バース・ストーンと呼ばれるハチミツ色の石を使ったクラシカルな外観と、ガラス張りのモダンな壁面が不思議な調和を見せています。ルーフトップ・プール(つまり、屋上露天風呂)と、そのこうに見える修道院の建物の組み合わせも、ヨーロッパの歴史ある都市ならではの眺めといえますね。
源泉からお湯を引いた地階のスパ・ヴィレッジ・バース。カウンセリングを受けてお待ちかねのスパタイム!zoom
源泉からお湯を引いた地階のスパ・ヴィレッジ・バース。カウンセリングを受けてお待ちかねのスパタイム!
そしていよいよ、お待ちかねのスパタイムです。
地階にある『Spa Village Bath(スパ・ヴィレッジ・バース)』で、まずカウンセリングを受けます。疲れが気になる身体の部分、期待する効果、好みの香りなどをセラピストに伝えると、アロマオイルを3~4種類ブレンドして垂らしたアロマソルト入りの匂い袋を作ってくれます。香りは数日楽しめ、滞在中は持ち歩きサウナのなかで香りをかいだり、お部屋のバスルームに置いたり、下着を入れるポーチやスーツケースに入れておき、最後はバスソルトとして楽しむこともできます。私は、心身のリラックスとホルモンバランスを整えるアロマを選びました。

スパエリアには古代ローマの浴場をイメージしたメインプールと、温度が異なる個室風プールが2つ、ドライ&スチームサウナ、サウナのあとの身体をクールダウンするスペースも用意されています。トリートメントを受ける前に30~40分、ここで体を温めリラックス。
セラピストのアダムさん。約1時間、彼の腕に抱かれお湯のなかをたゆたいました。zoom
セラピストのアダムさん。約1時間、彼の腕に抱かれお湯のなかをたゆたいました。
トリートメントでは、水中に浮かびながらセラピストに身体をゆだね、揺らしたりストレッチ、マッサージを行う『Watsu(ワッツ)』をリクエスト。以前から一度体験してみたいと思っていて、真水の温水プールより温泉のほうがずっと効果があるはず、と期待を込めて選びました。

初めての体験にわくわくしていたら、現れたセラピストは男性ではありませんか。ちょっぴり、緊張します。
シンクロナイズドスイミングの選手が付けるようなノーズクリップ(鼻栓)を装着し、プールサイドのステップに腰かけて言われるままに目を閉じて体の力を抜くと、いきなりの「お姫さま抱っこ」からスタート。プールの中央まで運ばれ、全身を伸ばした状態で浮かべられます。
前半は軽く体を揺らしたり、手足を伸ばしたり、背面をマッサージしたり。耳まで浸かった状態なのでコポコポという水音が心地よく、だんだんと水のなかに身体が溶けだしていく感覚になってきます。

途中、水分補給と休憩を挟み、後半はもっとアクティブに身体を動かします。手足を大の字に広げたり、両腕で抱きかかえられ肩や腰を大きくねじったり。お互い水着ですから、肌が密着する場面もあってドキッ!

クライマックスは、呼吸に合わせ仰向けのまま顔まで水のなかに沈められること数回。この時、自然と大きく息を吸いこんで吐き出すので、体の隅々まで酸素がいきわたるよう。ずっと水音を聞いていたせいか、プールから出たあとは頭がスッキリして、体の重さやだるさから解放されたようでした。
トリートメント後は、ハーブティーを飲みながら体を休めます。zoom
トリートメント後は、ハーブティーを飲みながら体を休めます。
プールに1時間近く浮かんでいたのですから、トリートメント終了後もしばらくは水中で揺れている感覚が残ります。その余韻に浸り、ハーブティーを飲みながらリラックスタイム。この日の夜は、時差ボケも一気に解消する深い眠りが訪れました。

今回はホテルのスパだけの利用でしたが、次にバースを訪れる機会があればお隣りのスパ施設にもぜひ足を運び、ルーフトップ・プールからバースの町を見渡してみたいものです。

●The Gainsborough Bath Spa(ザ・ゲインズボロー・バース・スパ)
Beau Street, Bath, UK
TEL +44(0)1225 358 888 
www.thegainsboroughbathspa.co.uk

【問い合わせ先】
ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド日本支社
TEL 0120-086-230
www.LHW.com
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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