旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2017年10月5日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

オーガニック先進国カナダの「美味しい」の秘密は、ファーマーズマーケットにあり!

ファーマーズマーケットはオタワ市民の台所。レストランのシェフや美食家も訪れるといいます。zoom
ファーマーズマーケットはオタワ市民の台所。レストランのシェフや美食家も訪れるといいます。
海、山、森、湖……豊かな自然とともに広大な国土に恵まれたカナダ。食材も実に豊富で、食糧自給率は約250%。主要国ではオーストラリア、フランス、アメリカを大きく引き離して第1位を誇ります。ちなみに日本の場合、40%にも届きません。この数字だけ比較しても、カナダの豊かさがよくわかります。またオーガニックへの意識も高く、街中のごくごく普通のスーパーにも当たり前のようにオーガニックの食材が並び、うらやましい限りの食環境です。

そのカナダの豊かな食材を実際に見ることができるのが、ファーマーズマーケットです。なかでもカナダ最大規模を誇るオタワの公設市場ByWard Market(バイワード・マーケット)は市民の台所として賑わうとともに、レストランのシェフや美食家も旬の食材を求めて集まる場所。ツーリストにとっては、お土産探しの場にもなっています。

カナダ建国より古い歴史をもつファーマーズマーケット

ByWard Marketの歴史は古く、設立されたのはオタワがまだ「バイタウン」と呼ばれていた1826年のこと。オタワと命名されたのが1855年、カナダの独立が1867年ですから、建国の歴史よりずっと古いマーケットなのです。
カナダ最古にして最大のファーマーズマーケット。広場には、ライブや路上パフォーマンスも登場。zoom
カナダ最古にして最大のファーマーズマーケット。広場には、ライブや路上パフォーマンスも登場。
マーケットが開かれるようになったきっかけは、オタワのシンボルでもある運河の建設計画。当時、このエリアを統括していたイギリスにより進められ、その工事責任者として着任した英国人将校ジョン・バイ大佐が、工事に携わる労働者たちに食事や娯楽を提供する場所が必要と考え、開設を決定したそうです。当初、肉体労働者目当てに雑多な店が集まる下町のような場所でしたが次第に整備され、街の中心として発展。現在ではカナダ国内でも最大規模を誇るマーケットになりました。

まるごと巨大なマーケットのような街を歩く

地図を見ると数ブロック程度の広さ。でも実際に歩いてみると、そのエリアは大きすぎてどこからどこまでなのかよくわからないほど。メインの建物を中心に周りを旬の野菜や果物を扱う露店が取り囲み、さらに通りを挟んでカフェやレストラン、チーズ、ハムなどを扱う専門店、お土産物屋も。街全体がマーケットと化しています。
ニンニクの種類の多さにびっくり! 宇宙食に採用されたメープルシロップも。緑色の看板が100%オンタリオ州産を扱う店。zoom
ニンニクの種類の多さにびっくり! 宇宙食に採用されたメープルシロップも。緑色の看板が100%オンタリオ州産を扱う店。
屋外のテントで営業する露店は、春から秋の季節限定。私が訪れた8月末には、色とりどりのトマトやピーマン、旬のベリー類、桃、カボチャ、トウモロコシ、ニンジン、マッシュルームなどが山積みにされていました。なかでも種類が豊富だったのが、ニンニク。カーテンのようにぶら下げて販売する店が多く、野生種などいろいろな種類があるとのこと。カナダといえばおなじみのメープルシロップは、シロップ状のほかチューブ入り、キャンディ、シュガータイプもあり、チューブタイプは宇宙食にも採用されているそうです。
屋内はクリスマスと1月1日以外は通年営業。お土産物屋、飲食店も並びます。zoom
屋内はクリスマスと1月1日以外は通年営業。お土産物屋、飲食店も並びます。
出店数は250以上。あまりに多すぎ、どこで買い物をしたらいいのか迷ったとき、参考になるのがお店の看板の色。それぞれ緑・黄色・赤で色分けされ、緑は100%オンタリオ州で栽培または生産されたもの、黄色は60%以上の商品がオンタリオ州産、赤はそれ以下ということでした。野菜、果物などの生鮮品だけでなく加工品も当てはまるとのことなので、知っておくとお土産探しに便利です。

屋外の露店が春から秋のみの出店に対し、屋内のほうは12月25日のクリスマスと1月1日を除き年中無休。土産物屋、ベーカリーとデリ、屋台村のような通りもあり、混とんとした雰囲気を味わいながら食事もできます。また、オタワ生まれのスイーツ「ビーバーテイル」の1号店もマーケットの敷地内に店を構えています。
●ByWard Market(バイワード・マーケット)
http://www.byward-market.com


「100マイルダイエット」を支えるローカルマーケット

「100マイルダイエット」という言葉を聞いたことがありますか?
自分が住んでいる場所から半径100マイル(約160km)以内で収穫されたり、生産されたものを食べようという食運動のことをいいます。「地産地消」は新鮮なものを味わえるだけでなく、輸送にかかるコストを軽減でき、輸送時の二酸化炭素排出量を減らすこともできる、環境に優しい食生活。もとはバンクーバーから始まったこの運動は、現在ではカナダ全土に広がりを見せています。
100%オンタリオ州産のものだけを扱う、Ottawa Farmers Market。zoom
100%オンタリオ州産のものだけを扱う、Ottawa Farmers Market。
そのエコな食運動を支えているのが、地域のファーマーズマーケット。オタワでは毎週日曜日に開かれるOttawa Farmers Market(オタワ・ファーマーズマーケット)がその役割を担っています。
自家製のアップルサイダーやジャムもあり、アットホームな雰囲気。zoom
自家製のアップルサイダーやジャムもあり、アットホームな雰囲気。
映画館やショッピングセンターがある一角の広場に並ぶのは、100%オンタリオ州産。野菜や果物、ジャム、アップルサイダーのほか、パンやテイクアウトのプレートランチも。訪れている人を見ると家族連れや、散歩のついでにふらりと立ち寄った様子の人、ランニング帰りなのかスポーツウエア姿の人もいて、ローカル色満載。ご近所さん、常連さんが多いらしく、あちらこちらでお店の人とお客さんが親しそうに話し込む風景を見かけました。5月~11月第1週までの開催なので冬場は見ることができませんが、気候のいい時期にはぶらぶらと歩くだけでも楽しい場所です。
●Ottawa Farmers' Market
thhp://www.ottawafarmersmarket.ca

冬の寒さが厳しいオタワの場合、屋外のファーマーズマーケットは冬の間お休みになることが多く、訪れるなら春から秋がオススメ。なかでも9月~10月のハーベストシーズンが最も食材が豊富だといいます。レストランのシェフも足繁く通うというファーマーズマーケット、この時期のメニューが一段と豊かになることは想像に難くありません。

取材協力:
カナダ観光局 http://jp-keepexploring.canada.travel
カナダシアター https://www.canada.jp
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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