旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2018年11月2日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

知られざるロシアの魅力〜オーロラの町ムルマンスクで1/1~

オーロラに魅せられてzoom
オーロラに魅せられて

北極海に面して東西に1万キロ、国土面積1700万平方キロ。世界最大の面積を誇る国ロシア。ソ連からロシアになった現在も、連邦内には21の共和国があり、民族も歴史も自然環境もバラエティに富んでいます。2018年夏のサッカーワールドカップの応援に行った若者たちから、「ロシアって意外に面白いじゃない!人も親切だった」と言う声をたくさん聞きました。彼らのほとんどは、日本代表の試合開催地であるサランスク、エカテリンブルク、ヴォルゴグラード、そして、キャンプ地のタタールスタン共和国の首都カザンを訪れたはず。モスクワとサンクトペテルブルクを訪れただけでは、まだロシアの楽しさ、面白さを十分に知ったとは言えないようです。
いまだ未知の国、ロシアの素敵な町をご紹介しましょう。

ホテル前の電気の花zoom
ホテル前の電気の花

オーロラを見た時の感動は何と表現してよいのでしょう。空に踊る自然の驚異に魅せられて、これまでスウェーデン、ノルウェイ、フィンランドに行きました。飛行機の中からラッキーにもオーロラを見たこともあります。姿も色も毎回異なっていて、本当に寒さを忘れる神秘的な美しさです。
オーロラはオーロラ帯と呼ばれる北極、南極を取りまく「地磁気緯度」65~70度の地域によく現れます。ならば、この広大な国土を持つロシアにも、オーロラスポットはあるではず。そう、それがモスクワから北へ約2000km、コラ半島の北岸、ムルマンスクなのです。北極圏最大の都市で、漁業と海運業を主産業としています。ノルウェーやフィンランドとの国境にもほど近い町です。

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最果ての町にはなぜか明るい不思議さがある

ロシアと聞いただけで、「寒そう!」というイメージを持っているならば、北極圏のムルマンスクはどれだけ寒いのか、と思うでしょう。ところが、この町は緯度の割にはあまり寒くありません。年間で最も寒い1月でも、平均気温が氷点下13度といいますから、ヒートテックとホカロンでしのげる程度だと思います。
ただオーロラハンティングは夜の観光です。オーロラは夜空にだけ出るものでもないらしいですが、夜のほうが活発に動くそうです。なので、さらなる防寒は必須ですが、見学用に完璧すぎるほどのレンタル防寒グッズがありますので心配なし。もちろん、ロシア土産も兼ねて毛皮の帽子を買っても良いかもしれません。

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氷の滑り台で元気に遊ぶこどもたち

さて、ムルマンスクでは町中でもオーロラを見ることができるという噂がありました。そんな日もあるのでしょうが、冬の町は24時間、電飾で華やかに明るく彩られています。北の果ての港湾都市ですが、明るい町と感じるのはキラキラの灯りのせいでしょうか。不思議な町です。
私が泊まったホテルの前の広場は、遊園地さながら氷の滑り台まであって、子供達も遅くまで駆け回っていました。

ドームから眺めるオーロラもロマンチックzoom
ドームから眺めるオーロラもロマンチック

オーロラハンティングの出発は夜9時。バスでに暗い夜道をオーロラを追って、あっちに行き、こっちに行きです。
最終目的地は、町から約50キロ離れたポーラービレッジ。小ぶりなガラス張りのドームが間隔をあけて並んでいます。ドームは宿泊して一晩中、天体ショーを楽しむことも出来ます。さぞロマンチックな夜でしょう。リビングルームもついたドームで、我々は暖を取り、ウオッカや紅茶で身体を温めました。
防寒着はとても暖かくて快適でしたが、あおったウオッカが喉から胃に向けて、ツーッと降りていくのが感じられるということは、やはりそれなりに身体は冷えているのかもしれません。

いつまでも見飽きないオーロラに夜が更けるzoom
いつまでも見飽きないオーロラに夜が更ける

さぁ、ドームから出て、いざオーロラ!天空のショーに寒さはどこかに飛んでいきました。
ボンヤリ空が揺らめいてくると、皆、無言になります。オーロラハンティングに行くなら、カメラと三脚を持って行き、写真を撮るのも旅の醍醐味。カメラのレンズを覗くと、雲は白いままなのに、オーロラは緑がかって動きもあるので、「あ、オーロラだ‼︎」と、すぐにわかって、うれしくなります。
その日のオーロラは、カーテンが揺れているようでもあり、消えてはまた形を変えて現れました。
ホテルに戻ると、もう12時を回っていました。バスの運転手さんもガイドさんも、「あっちにもっと強く出ているようです」などと言いながら、時間など気にしていない様子。なんとか美しいオーロラを見せてあげたいという気持ちが伝わります。心暖まるオーロラハンティングでした!

フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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